業界ウォッチ 2023年6月6日

【データから読み解く】世界・米国のファッション中古市場

今回は「世界・米国のファッション中古市場」を取り上げてご紹介いたします。

近年、ファッションの中古市場が活発になっています。日本でいえば、メルカリなどのC2C・フリマアプリなどで簡単に中古衣料の売買ができるようになったことや、世界的な環境問題・循環型社会への問題意識から、衣料品・ファッション業界でも中古市場への関心が高まっているようです。

確かに、フリマアプリに代表されるようなC2Cなどの流通や、リサイクルショップ・古着ショップなどの流通事業者の動きも活発化していますが、アパレルメーカー・ブランド事業者が、自らリセール(再販)に取組むような報道もよく見かけるようになりました。

それでは、世界的に見てアパレル・ファッションの中古品市場規模は、どの程度の規模感で、どのように成長しているのでしょうか。

また、米国のアパレル市場を販路別に見た時に、全販路のうち中古品流通が占める割合はどの位なのでしょうか。その割合は、どのように推移しているのでしょうか。

さらに、米国ではブランドの再販制度を取り入れている小売事業者が増えているようですが、どの位の規模感で、どのように伸びているのでしょうか。

実際に数字を見て確認したいと思います。
secondhand apparel market

まず、世界のアパレル中古品市場規模の推移を見てみます。

米国の古着オンライン販売プラットフォームの「ThredUp」の調査結果によると、2021年は、1380億ドルでしたが、そこから増加トレンドとなっています。2023年には2110億ドルと2000億ドルを超え、2027年には3510億ドルに達すると見込まれています。

次に、米国のアパレル販路別市場シェアの推移を見てみます。

中古品チャネルのシェアを見ると、中古品チャネルは2012年時点では3%となっています。以降、シェアは増加トレンドとなっており、2022年には9%、2032年は18%と大幅に伸びていることが分かります。

中古品チャネル以外で伸びている販路は、オフプライス店(TJ Maxx等)チャネルと、D2C:Direct to Consumer(Everlane等)チャネルとなっています。一方、縮小しているのは百貨店(Macy’s、Nordstrom等)、中価格帯ブランド(GAP等)チャネルとなっています。ディスカウント業態(ウォルマート、ターゲット等)やファストファッション(ZARA、Shein等)はほぼ横ばいとなっています。

ちなみに、2022年10月のBoston Consulting Groupの調査結果によると、ファッション(アパレル、靴、アクセサリー)中古品の購入者を対象に調査したところ、所有するファッションアイテム数のうち中古品チャネルで購入したアイテムのシェアが、2020年には21%でしたが、2023年には27%へと増加することが予想されています。一方既存小売店で購入したファッションアイテム数のシェアは、2020年に74%でしたが、2023年には67%に低下することが予想されています。

次に、ブランド再販制度を導入した小売業者数の推移を見てみます。2009年から2018年にかけて4社でしたが、2019年に5社となり、2020年に9社、2021年に36社と大幅に増えています。2022年には124社と約3.4倍に急増しています。

こうしてみると、ファッション業界の中で、中古品のウェイトが大きくなっており、成長市場となっていることが分かります。これ迄、ブランド品の新品を中心に販売していた小売事業者も、再販制度を取り入れる動きが急速に広まっていることが分かります。

また百貨店などの業態は以前から落ち込んでいることは分かっていましたが、中価格帯ブランドが落ち込んでいることも目立ちます。この動きは、消費者が、中古品として買うだけではなく、中古品として売る(リセール)価値があるものを選ぶようになった結果、新品としては、高級品化、低価格品を購入し、中価格帯の商品が売れなくなった現象だと考えられそうです。

ファッション業界は、これ迄新品を販売・売切ることで収益を得てきましたが、今後は環境問題ではなく、経済の観点から中古品・リセール・再販などを意識した取り組みが必要になってくると言えそうです。日本市場でも、メルカリの影響など、これと同様なことが生じているものと考えられそうです。

出典:
ThreadUP “Resale Report 2023”
https://cf-assets-tup.thredup.com/resale_report/2023/thredUP_2023_Resale_Report_FINAL.pdf

BCG, “What an Accelerating Secondhand Market Means for Fashion Brands and Retailers”