業界ウォッチ 2022年5月9日

【データから読み解く】スリープテック市場

今回は「スリープテック市場」を取り上げてご紹介いたします。

日本は世界有数の不眠大国との指摘があり、こうした不眠の課題をテクノロジーで解決する「スリープテック」が注目を集めているようです。

米国シンクタンク(ランド研究所)の試算(2016年)によると、睡眠不足がもたらす経済損失は、日本が対GDP比2.92%(約15兆円)になるそうです。同調査が対象とした米英独加日5カ国のうち、最も悪い値となっています。

こうした背景を受けて、ウェラブル端末を用いて睡眠状態を計測しアプリで管理するサービスなどが数多く誕生しています。スタートアップ企業もあれば、大手企業からの参入なども見られ、スリープテックは注目されている領域の一つだと言えそうです。

それでは、世界の睡眠時間どのくらいの水準で、日本はどのくらいの水準なのでしょうか。また、スリープテック市場は世界的にどのように推移することが予想されているのでしょうか。日本国内のスリープテック市場は、どの位の規模なのでしょうか。

実際に数字を見て確認したいと思います。

スリープテック市場

まず、主要国の平均睡眠時間を見てみます。OECDのデータで比較すると、最も平均睡眠時間が長いのは南アフリカの9時間13分となっています。次いで中国(9時間01分)、米国(8時間51分)、エストニア(8時間50分)、インド(8時間48分)と続きます。

一方、最も平均睡眠時間が短い国は日本の7時間22分となっています。次いで平均睡眠時間が短い国は韓国の7時間51分で、以降スウェーデン(8時間02分)、デンマーク(8時間08分)、アイルランド(8時間11分)と続きます。平均睡眠時間が7時間台となっているのは日本と韓国の2カ国のみとなっています。

次に、世界のスリープテック機器の市場規模を見てみます。調査会社Global Market Insightsによると、2020年の市場規模は125億ドルで、2027年には406億ドルとなることが予想されています。2021-2027年の年平均成長率は17.8%となっています。

更に、国内のスリープテック機器の市場規模を見てみます。シードプランニングの調査によると、2021年の国内スリープテック機器・サービスの市場規模は4600億円となっています。また、テクノロジー関連以外の寝具等を含む睡眠関連全体市場は1兆6200億円となっています。睡眠関連市場全体に占めるスリープテック機器サービス市場の割合は全睡眠関連市場の約28%となっています。

こうしてみると、世界的にスリープテック機器の市場が伸びている中で、世界的に平均睡眠時間が短い日本では、スリープテック市場の成長余地が大きいものと考えられます。

国内のスリープテックスタートアップとしては、「ニューロスペース」(企業向け睡眠改善プログラムで100社超の支援実績)、「ブレインスリープ」(独自指標の睡眠偏差値を事業化。睡眠の質を高める枕も販売)、「アクセルスターズ」(睡眠と覚醒を高精度で見分けるアルゴリズムを開発)などが上げられます。また国内大手企業でスリープテック領域に参入している事例としてはダイキン(心地よい起床の研究、京セラと目覚ましシステムを開発)、パナソニックHD(睡眠の質改善をうたうエアコン・エオリアスリープを発売)、ワコールHD(ナイトウェアブランドの睡眠科学を展開)などが上げられます。

睡眠に関連する事業としては、ウェアラブル端末などの計測器や、寝具領域に関する領域はもちろんのこと、空調、照明、サプリ・機能性食品や、音響・音楽、香りなどの五感に関連する領域、瞑想・リラクゼーションなど幅広い領域が想定されます。これらとテクノロジーを組合わせた事業を考えると、様々な事業機会を考えることができそうです。

出典:
Why sleep matters — the economic costs of insufficient sleep
Gender data portal – OECD
Global Market Insights Sleep Tech Devices Market
シードプランニングプレスリリース「スリープテック関連市場における事例・需要性調査」
日経電子版「不眠日本に商機 パナソニックなどスリープテック続々」