業界ウォッチ
2022年5月24日
【データから読み解く】世界のスマートシティ市場
今回は「世界のスマートシティ市場」を取り上げてご紹介いたします。
スマートシティに関連するスタートアップへの投資が伸びているようです。スマートシティプロジェクトといえば、最近ではトヨタのウーブンシティプロジェクトが注目を集めました。一方、海外ではグーグル子会社が推進したカナダトロントでのスマートシティプロジェクトから撤退したことや、新型コロナで密集した都市から人口が流出するなどの観測からスマートシティへの関心が低下するのではないかと見られていました。
ところが、実体をみると都市DX、自治体DX といったDX化の潮流もあって、スマートシティへの取組や関心が高まっているようです。中でも、スマートシティに関連するテクノロジーやサービスを提供するスタートアップが市場成長のけん引役となり、投資も集まっているという背景があるようです。
それでは、スマートシティ関連のスタートアップにどのくらいの投資が集まり、どの位の伸びとなっているのでしょうか。また、スマートシティの市場規模はどのくらいの規模感でどのくらい伸びているのでしょうか。そのうち、スタートアップはどのくらいのウェイトを占めているのでしょうか。更に、スタートアップのうちどの産業分野・市場が大きく、どの位伸びると予想されているのでしょうか。実際に数字を見て確認したいと思います。
まず、スマートシティ関連スタートアップ（スマートシティテック）の投資動向を見てみます。CBインサイツによると、同投資額は2017年に約162億ドルで、翌18年は172億ドルへと増加しましたが、2019年に約92億ドルと大きく落ち込んでいます。以降、増加トレンドに転じ、2021年には約174億ドルと過去最高額となっています。
投資件数で見ると2017年は455件で2019年の588件まで増加傾向でしたが、そこから減少傾向となり、2021年は441件となっています。2021年で件数が落ち込んでいますが、投資金額が過去最高となっているため、1件当たりの投資額が大きくなっていることが分かります。
次に、世界スマートシティの市場規模を見てみます。Statistaによると、スマートシティプロジェクトで得た企業の収益規模は、2020年は1163億ドルでしたが、そこから増加トレンドで2025年には2410億ドルと2倍近くに拡大することが予想されています。このうち、スタートアップ企業の収益規模を見ると、2020年は323億ドルでしたが、そこから増加トレンドで2025年には1107億円と約3.4倍に拡大することが予想されています。2020年時点ではスマートシティ市場全体に占めるスタートアップが占める割合は約27％でしたが、2025年には約46％にまで高まっています。
更に、スマートシティ市場の内、スタートアップ企業の収益を産業別に見てみます。2020時点で最も大きいのは「スマートユーティリティ」で89億ドルとなっています。2025年には300億ドルにまで拡大することが予想されています。次いで大きいのが「モビリティ」で77億ドル（20年）から272億ドルに拡大する予想となっています。次いで「スマートビルディング」（64億ドル：20年→192億ドル：25年）、「環境ソリューション」（39億ドル：20年→166億ドル25年）、「公共安全・保安」（24億ドル：20年→74億ドル：25年）、「スマート政府」（11億ドル：20年→43億ドル：25年）と続きます。
こうして見ると、スマートシティ市場はスタートアップが大きな役割を果たしていることが分かります。その中でも、特にスマートユーティリティ（電力・ガス・水道など）分野、モビリティ分野、スマートビルディング分野、環境ソリューション分野におけるスタートアップの収益が大きいことが分かります。
スマートシティはインフラなど大企業が取り組む分野というイメージがあるかもしれませんが、技術領域、サービス領域を絞って見るとスタートアップにも十分参入余地が大きいと言えそうです。むしろ、スマートシティから考えるよりも、都市・地域の課題を解決するテクノロジーやサービスを、スマートシティというプロジェクトにつなげることが事業機会になると言えるかもしれませんね。
出典：
Why sleep matters — the economic costs of insufficient sleep
Smart city revenue worldwide 2020-2025
Smart city revenue worldwide generated by startups 2020-2025
