業界ウォッチ 2022年9月20日

【データから読み解く】メディア接触時間と広告市場

今回は「メディア接触時間と広告市場」を取り上げてご紹介いたします。

近年スマートフォンが普及し、テレビを見なくなったという人の声を聞くことが増えてきました。自宅にテレビが無いという人も、増えているように思います。また、10代の若者(中高生など)に関しては、スマホでYouTube(TikTokなど含めた動画アプリ)ばかり見て、勉強(宿題)をしなくて困るといった、声も聴くようになっています。

確かに、実感値としてスマホなどのデジタルメディアを利用する時間が増え、テレビを見る時間が減っている感覚があります。

こうした傾向は、以前から指摘されていましたが、コロナ禍で巣ごもり・おうち時間が増えたことなども、こうした傾向を加速している側面があるように思えます。

それでは、実際にデジタルメディアの接触時間はどのように伸びているのでしょうか。テレビの接触時間はどのくらい減っているのでしょうか。年代によって、どのような違いがあるのでしょうか。またこうしたメディア接触時間の変化は、広告市場に同様な変化をもたらしているのでしょうか。

実際に数字を見て確認したいと思います。
メディア接触時間と広告市場

まずメディア接触時間の推移を、従来の「4マス媒体」とPC、タブレット、携帯・スマホを含めた「デジタル媒体」の接触時間の対比で見てみたいと思います。

「4マス媒体」の接触時間は、2006年は267.7分でしたがそこから減少トレンドで、2022年には190.8分となっています。「デジタル媒体」の接触時間は、2006年は67.6分でしたが、以降は増加トレンドで、2018年(199.6分)に初めて「4マス媒体」(196.4)を超え、2022年には254.7分となっています。

同様に「TV」と「携帯・スマホ」の対比で見ると、「TV」接触時間は2006年に171.8分で、以降緩やかな減少トレンドとなり、2022年には143.6分となっています。「携帯・スマホ」は、2006年で11分でしたが、以降増加トレンドで2022年には146.9分と、TV視聴時間を初めて超えました。

メディア接触時間を世代別に見ると、直近の2022年で見ると、男性では40代以下、女性では30代以下で「デジタル媒体」の接触時間が50%を上回っています。特に10-20代では「デジタル媒体」の接触時間が70%近くに達しています。10代では男女とも「携帯・スマホ」接触時間が50%前後となっています。

次に、媒体別の広告市場規模の推移を見てみます。4マス媒体の広告市場規模は2005年で3.8兆円でしたが、以降減少トレンドとなり2020年に2.3兆円と過去最低を記録しますが、2021年には少し盛り返し、2.5兆円となっています。TV広告市場規模の推移をみると、2005で2.1兆円でしたが、そこから緩やかが減少トレンドとなり2012年後個から1.9兆円~2兆円前後で横ばい傾向が続きます。2020年に1.7兆円に落ち込みますが、2021年に少し盛り返し1.8兆円となっています。

インターネット広告市場は、2005年は0.4兆円でしたが、以降は増加トレンドで、2019年に2.1兆円と、TV広告市場を超え、2022年には2.7兆円と「4マス媒体」を初めて超えました。

こうしてみると、実感値としてのデジタルメディアの接触時間の長さと、年代別の違いが数字で明らかになることが分かります。また、広告市場も、こうしたメディア接触時間の変化を受けて、大きく変化していることも確認できます。

こうした現象自体は、数年前からおおよそ明らかに見えていたことであり、目新しい発見ではないかもしれません。しかし、10年後のトレンドを想定した場合、年代別のメディア接触時間が、仮にそのまま10年ズレたとすると、トータルのメディア接触時間がどうなるのか、それに合わせたメディア別広告市場がどうなるのかも、ある程度予測がつきそうです。

4マス媒体、TVの接触時間が無くなることは無いと思いますが、今後のトレンドを想定すると、新たな収益源獲得が必須となることが分かります。同様に、デジタルメディア接触時間、インターネット広告には、さらなる拡大余地がありそうだとも言えそうですね。

出典:
博報堂DYメディアパートナーズ 「メディア定点調査2022」
電通「日本の広告費」