業界ウォッチ 2022年6月21日

【データから読み解く】東京オフィスビル空室率

今回は「東京オフィスビル空室率」を取り上げてご紹介いたします。

6月に入り、新型コロナウイルスの第6波と言われる感染拡大状況が落ち着きを見せ、訪日観光客の受け入れ再開や、プロ野球やJリーグなどの声出し観戦緩和など、各種の行動制限が緩和されています。こうした中、在宅勤務・リモートワークから出社日数を増やすなどの対応をする企業も出始めています。その一方で、NTTなど在宅勤務を継続する意向を表明する企業もあります。

2020年の新型コロナ感染拡大初期は、緊急事態宣言なども有り、在宅勤務が一気に広がり、オフィスを退去・縮小する企業も続出し、都心部から郊外・地方への移転などの動きも大きな話題となりました。このような企業の働き方の変化を受けて、オフィス空室率が急激に上昇しました。

それでは、最近の新型コロナの影響が薄まりつつある状況下において、空室率はどのように推移しているのでしょうか。空室率は上昇し続けているのでしょうか。それとも、空室は低下傾向にあるのでしょうか。また、東京と、その他の大都市では、空室率に何か違いがあるのでしょうか。都内の中でも、地区によって空室率の違いがあるのでしょうか。実際に数字を見て確認したいと思います。

東京オフィスビル空室率

まず東京、大阪、名古屋の三大都市のコロナ禍での空室率(ビジネス地区)の推移を見てみます。東京の空室率は、20年1月時点では1.53%でしたが、20年4月以降上昇トレンドとなり、同年6月以降急上昇トレンドとなっています。21年10月に6.47%とピークに達しましたが、以降は、ほぼ横ばいトレンドへと転じています。大阪の空室率を見ると、20年1月は1.96%でしたが、同年4月まで横這いでしたが、同年5月以降上昇トレンドへと転じています。22年3月に5.22%とピークに達した以降は低下トレンドに転じ、22年5月は4.99%となっています。名古屋は、20年1月時点は1.91%でしたが以降上昇トレンドに転じています。22年4月に6.06%とピークに達していますが、22年5月には5.93%へと低下しています。

次に、東京都内のビジネス地区5区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)それぞれの空室率の推移を見てみます。

千代田区は、20年1月に1.25%でしたが、同年6月以降急上昇トレンドとなり、21年10月(4.78%)から横ばい・低下に転じますが、22年1月以降再び上昇に転じ、22年4月に5.01%と最高値に達しています。中央区は、20年1月に1.24%でしたが、同年5月以降は急上昇トレンドに転じています。21年7月(5.6%)からペースは落ちるものの、概ね上昇トレンドで22年5月に6.47%とピークに達しています。港区は、20年1月の1.76%から同年4月以降、急上昇トレンドに転じます。21年9月(8.68%)にピークに達した以降は、低下トレンドに転じ、22年5月は8.21%となっています。新宿区は、20年1月の1.62%から同年4月以降、急上昇トレンドに転じます。21年10月(6.79%)にピークに達した以降は、低下トレンドに転じ、22年4月に5.55%、22年5月に5.9%となっています。渋谷区は、20年1月に2.09%でしたが一旦低下した後、同年4月以降急上昇トレンドに転じます。20年10月(5.14%)から一旦横ばい傾向になりますが、21年5月以降再び上昇トレンドに転じます。21年9月(6.75%)にピークに達した以降は、低下トレンドに転じ22年5月には4.92%となっています。

こうして見ると、東京の空室率は21年10月以降横這いに転じており、地区ごとに分けて見ると、千代田区、中央区は21年秋以降も上昇トレンドで推移していますが、港区、新宿区、渋谷区は低下トレンドに転じていることが分かります。

特に渋谷区の空室率の低下傾向が、顕著に見て取れます。

図にはありませんが、賃料のトレンドで見ると渋谷区の賃料の下落率(20年1月~22年5月)が最も大きくなっています。渋谷区は、賃料がある程度下がれば、そこにオフィス・拠点を構えたい企業が多いため、空室率の低下につながっているものと考えられます。

在宅勤務・リモートワークが定着しつつあるものの、新型コロナの影響が小さくなると、ビジネスの活発度、ビジネス交流の可能性のある地区は、それなりにオフィスニーズが出てくると言えそうです。今後も、働く場所、ビジネスで交流する場所などの使い分けが進んでいく方向で考えると、そこに何か事業機会を見出すことが出来そうですね。

出典:
三鬼商事 オフィスマーケット