業界ウォッチ 2021年11月4日

【データから読み解く】世界のICT普及状況

今回は「世界のICT普及状況」を取り上げてご紹介いたします。

最近、中国以外にもインドや東南アジア、中南米など新興国のスタートアップやユニコーン企業の報道を多く見かけるようになりました。こうした新興国のユニコーン企業の多くは、フィンテックなどをはじめとして、スマホアプリなどを活用したサービスを展開しているケースが多く見られます。
ということは、新興国国内でスマホなどの通信デバイスが広まり定着していることが背景にあるものと考えられます。

それでは、新興国のICTの普及状況はどうなっているのでしょうか。携帯電話の普及状況では、どのように推移し、先進国とどのような違いがみられるのでしょうか。また、スマホをはじめとしたモバイルブロードバンドの普及状況はどうなっているのでしょうか。地域によって普及度合いの違いがあるのでしょうか。コンピューターの普及状況はどうなっていて、携帯・モバイル機器の普及状況と比較すると、どのような違いがあるのでしょうか。


実際に数字を見て確認したいと思います。

まず、携帯電話の普及状況(%、人口100人当りの契約者数)の推移を見てみます。先進国を見ると、2005年は82.1%でしたが、そこから上昇トレンドで、09年から11年ごろまで一旦横ばい(112~113%)となりますが、以降再び上昇トレンドとなり、20年には133.4%となっています。普及率が100%を超えているため、一人1台以上の携帯電話を持っていることになります。


新興国(開発途上国)を見ると、05年は22.9%でしたが、以降は急上昇トレンドとなり、2018~19年には100%を超えるほどにまで普及しています。新興国の中でもより貧しい国である後発開発途上国を見ると、05年時点では5%に過ぎませんでしたが、以降上昇トレンドとなり、2015年に一度上昇傾向が緩やかになりますが、20年時点で74%と高い水準に達しています。

次に、同じモバイルブロードバンドの普及状況を、地域別に、2010~2020年の普及状況の変化を見てみます。アフリカは、1.7%(’10年)から33.1%(’20年)へと普及率が上昇しています。アラブ諸国は7.8%(’10年)から60%(’20年)、アジア太平洋は7.3%(’10年)から76.6%(’20年)へと普及率が上昇しています。CIS、欧州、米州は’10年時点では普及率が25%程度でしたが、‘20年には100%に近い高い水準となっています。

更に地域別のコンピューターの普及率の変化を見ると、アフリカは5.7%(‘10年)から7.7%(’19年)とあまり変化が見られませんでした。この傾向は他の地域でも同様で、‘10年時点では、コンピューター普及率の方がモバイルブロードバンド普及率よりも高い状態でしたが。‘19年はモバイルブロードバンドの普及率に追越された状況となっています。

こうしてみると、新興国で携帯電話の普及率が高まり、ほとんどの(80%近くの)人が携帯電話を持てる状況にまで広まったことが分かります。更にモバイルブロードバンドの普及も、この10年で大きく進展したことが分かります。アフリカは、ブロードバンドに関しては普及率が30%台ですが、その他の地域は50%を超える普及率となっています。さらに、コンピューターよりも広まっていることが分かります。

つまり、新興国でも大半の人がインターネットを使える状況となっており、ブロードバンドへのアクセス手段は基本的に携帯(スマホ)となっていると言えます。
また、新興国で、テック系のスタートアップが台頭してきた背景には、モバイルブロードバンドの普及率が高まったため、各種のネット・アプリ等のデジタルツールを用いたサービスが利用できる環境になったことが大きいと考えられそうです。

人口の多い新興国で、モバイルブロードバンドの普及率が急速に高まったということは、デジタルビジネスの市場が急速に拡大しているとも言えそうです。市場が大きいだけに、今後も世界のICT普及状況と、新興国での事業機会を意識しておくと良さそうですね。

出典:ITU(International Telecommunication Union)
https://www.itu.int/en/ITU-D/Statistics/Pages/stat/default.aspx/