執筆者:PEGL事務局清水
多くの日本人が“間接的な英語表現”に馴染みがありません。そのままダイレクトな英文または曖昧に返答してしまうことで、相手に悪い印象を与えてしまい失敗する――という例を多くみかけます。
表現がストレートすぎると相手の感情を害してしまうおそれがあることは日本語も英語も同じことです。相手に気を配りつつ、意思をしっかりと伝えるのが洗練された大人の表現です。日本語でも難しいですが、英語のニュアンスとなると、さらにハードルは高くなります。
前回のコラムでもご紹介した『洗練された大人の英語表現』(ナツメ社)では、「I am sorry」や「I am afraid」など「申し訳ないのだけれど」という恐縮している旨の一言を文頭に入れるするようにすることを勧めています。ワンクッションを設け、相手に対して真正面から衝突しないようにすることで、違う意見であることを前もって伝えることができます。相手も多少は心の準備ができるところがみそです。
それでは、これらの“ワンクッション”の表現の後に、本当に言いたい内容を続ける英語文章の具体例を見てみましょう。
→「I don’t think so」とは言わずに、「I am sorry but I can’t quite agree with you」と言います。
「同意できない一部分がある」ことを伝えることで“全面的に100%シャットアウトする”というニュアンスを消します。動詞agreeを修飾する副詞quite「全く。完全に」の前にnotを用いて部分否定します。「相手の言っていることも多少は認めている」ニュアンスになります。don’tを使うと自分の意思で「しない」ことになりますが、can’tにすることで「(自分はしたいのだけれど)できない」という含みを持たせることができます。
また、「I am afraid we seem to have different points of view」という表現も、相手の意見に真正面から反対するのではなく、相手とは違った見方であることを伝えることがでいます。seemを使うことで、断定を避けてやさしい言い方にしています。
→「You are wrong」とは言わずに、「I am sorry but I don’t think that is necessarily true」と言います。
相手の発言が“確かなものではない”と感じた時、直接的な表現で「あなたは間違っています」と否定するのではなく、「少し違うと思います(だから考え直してみてくれませんか)」とそれとなく相手に再考してもらうように導くことができる表現です。
→「I can’t do it at that time」とは言わずに、「I am afraid I am not available at that time」と言います。
上の“反対したい時”にはI can’t agreeとcan’t「できない」を使っていましたが、not available「都合がつかない」と言うことで、自分の都合だけができない原因ではなく、“自分の意思ではどうにもらなない外的要因がある”という事情をさりげなく伝えるようにします。
また、「I am very sorry but I have to decline the offer」という言い方にすると、仕事のオファーのような正式な誘いなどを断る際に使う少し硬い表現になります。直接的に「断る」という単語を使う分、頭には「very sorry」とへりくだったフレーズを付け加えます。
→「Don’t talk about that」とは言わずに、「I am sorry. I don’t think that is an appropriate topic here」と言います。
「Don’t talk about that」と言うと「それについては話さないように」というニュアンスで、相手に命令(禁止)する形になってしまいます。
→「I am sorry to have to say this but you need to~」。
自分は言いたくないけれども、言わざるを得ないほど重要なことを伝えたい時に、上のフレーズを使います。相手に必要なことを続けて言うシチュエーションなどに向いています。
→「This is not good」とは言わずに、「I am afraid I have a complaint about the service」と言います。
「I am sorry」ではなく「I am afraid」を使ったのはこちら側の落ち度がないため謝罪が不要だからです。ただし苦情を言うことにより結果として関係を悪化させるような事態を避けたい知人などに対しては「I am afraid」よりも「I am sorry」のほうが円滑剤として機能します。
→「I need to go」とは言わずに、「I am afraid I have to leave soon」と言います。
「I am sorry but I have another appointment」もほぼ意味は変わりません。leaveの代わりにanother appointmentという理由を述べて、席を立たなければならないことを間接的に伝えます。ただし顧客に対して使うと「あなたよりも重要な顧客がいる」ように受け止められてしまいかねないので注意が必要です。
→「Excuse me?」「What?」とは言わずに、「I am sorry I don’t understand」と受け流します。
失礼なことを言われた場合や嫌味を言われた場合、相手と同じ土俵にのって挑発をまともに受けて立つ必要はありません。英語を母国語としない外国人であるハンディキャップを逆手にとってその場をうまく切り抜けましょう。あえて“わからないふり”をして、とぼけて受け流せばいいのです。
いかがでしたでしょうか。
「英語圏の人は直接的な表現でモノを言う」という固定観念があるかもしれませんが、時と場合によります。「親しき仲にも礼儀あり」でそれなりに相手に対して敬意を示す表現、一定の丁寧な表現が求められるのは万国共通のルールなのだと『洗練された大人の英語表現』は教えてくれます。
【参考】洗練された大人の英語表現(最終アクセス:2019年9月5日)
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