業界ウォッチ 2024年3月12日

【データから読み解く】フィットネスクラブ市場

今回は「フィットネスクラブ市場」を取り上げてご紹介いたします。

先月2月19日に、経済産業省がまとめた「特定サービス産業動態統計」の2023年1月~12月分の確報値が発表されました。同調査によると、フィットネスクラブの売上高は、2819億4200万円と対前年比4.8%の増加となっています。2020年の新型コロナ感染症拡大の影響以降、3年連続での増加となっています。

フィットネスクラブは、新型コロナの影響で一時期、外出自粛、同じ空間での感染症を予防するという意味で、利用者が一気に落ち込みました。その後、コロナ禍の収束に伴い、フィットネスクラブの利用者が戻ってきているものと考えられます。

それでは、フィットネスクラブの売上高、利用者は、どのように推移していて、コロナ前と比べてどの位戻ってきているのでしょうか。フィットネスクラブ利用者と、スクール利用者とでどのような違いがあるのでしょうか。また、一人当たりの売上高は、どのように推移しているのでしょうか。施設の業態別別にみると、どのようなタイプの施設が多いのでしょうか。

実際に数字を見て確認したいと思います。
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まずフィットネスクラブ売上高の推移を見てみます。

2000年は1974億円でしたが、以降増加トレンドとなり、2008年から2013年まで2900億円台で横ばいで推移しています。以降再び増加トレンドとなり、新型コロナ直前の2019年は3348億円でした。2020年は、新型コロナの影響で2235億円と大幅に落ち込みますが、以降は再度増加トレンドとなり、2023年は2819億円となっています。

内訳をみると、スクール会費が着実伸びており、2000年は412億円でしたが、以降増加トレンドとなり、コロナ前のピークが2019年の715億円となっています。2020年のコロナで一度530億円二落ち込みますが、2023年は811億円と過去最高値となっています。

フィットネス会費は、2000年に1319億円でしたが以降増加トレンドで、2019年は2317億円となっていました。新型コロナで2020年は1498億円となりますが、以降回復して2023年は1769億円となっています。会費以外の収入(利用料、食堂売店売上)は、合わせて200~300億円台で推移しており、コロナ禍以降は一度落ち込みますが、以降は横ばい傾向となっています。

次に、フィットネスクラブ利用者数(年間の延べ利用者数)と利用者一人当たりの売上高を見てみます。利用者数は、2000年は1.15億人でしたが以降増加トレンドで、コロナ前の2019年は2.55億人となっています。新型コロナの影響で2020年は1.72億人に落ち込みますが、以降は回復し2023年は2.17億人となっています。

利用者一人当たりの売上高の推移を見てみると、2000年は1713円でしたが、以降減少トレンドとなり、コロナ禍の2021年に1236円と2000年以降最低値となっています。以降は回復し、2023年は1300円となっています。

次に、業態別の全国のフィットネス施設の種類、施設数の割合を見てみます。最も多い(その他を除く)のは「24時間型」(24時間営業かつセルフサービスの時間帯のある施設)が3141施設と、全体の29.6%を占めています。次いで多いのは「小規模型」(サーキットトレーニング主体の施設)の2114施設で19.9%となっています。「総合型」(プール、ジム、スタジオを兼ね備えた施設)は1147施設で10.8%、「ヨガ型」(ヨガ、ホットヨガ、ピラティス等へ特化した施設)は1143施設の10.8%となっています。

こうしてみると、これまでフィットネスクラブは、フィットネス会員を中心とした会費収入で収益を得ていたところ、新型コロナ以降大きな打撃を受けて、そこから徐々に回復して売り上げベースでコロナ前の8割程度にまで戻していることが分かります。特にスクール会費収入はコロナの影響が少なく、大きなウェイトを占めるようになったことも分かります。一人当たりの売上高でみると、単価が低下傾向となっていることが分かります。業態別でみると、24時間型や小規模型のウェイトが大きく、従来の総合型のフィットネスクラブ運営だと厳しくなっていると考えられます。

その一方で、小規模型・24時間型などで、カーブスやAnyTimeFittness、更には最近店舗数を拡大しているChocozapや、パーソナルトレーニングが伸びているという報道も見かけます。

フィットネスクラブは、コロナ過を経て多様化し、個別のニーズや、新しいニーズにどれだけ対応していけるかが生き残りのカギとなっていると言えそうです。

出典:
経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」
矢野経済研究所プレスリリース