業界ウォッチ 2025年5月27日

【データから読み解く】世界のCVC投資動向

今回は「世界のCVC投資動向」を取り上げてご紹介いたします。

前回は「国別VC投資・ユニコーン企業の動向」取り上げ、世界のVC投資の動向と、日本のVC投資の規模感や、世界ユニコーン企業と日本のユニコーン企業の数や規模感を比較してみました。

今回は、スタートアップ投資の中でも、事業会社が自社資金でファンドを組成し、主に未上場企業(ベンチャー企業)に出資や支援を行うCVC(Corporate Venture Capital)に注目して、その投資動向を見てみます。

それでは、世界のCVC投資はどのくらいの規模感で、どのように推移しているのでしょうか。VC投資全体の中でCVC投資はどのくらいの割合を占めているのでしょうか。CVCによる主な投資先の分野は何で、VC全体の投資先と比べるとどのような違いがあるのでしょうか。また、日本のCVCの動向はどのようになっているのでしょうか。日本のVC投資全体に占めるCVC投資の割合は、世界と比べてどのような違いがみられるのでしょうか。

実際に数字を見て確認したいと思います。
CVC invests trend

Silicon Valley Bank の“State of CVC 2024”で世界のCVCの投資動向がまとめられていますので、同資料から、世界のCVC投資の推移を見てみます。2014年は520億ドルでしたが、そこから概ね増加トレンドで推移し、2020年には1990億ドルとなっています。その翌年の2021年に急激に伸びて4010億ドルとなりますが、以降は減少トレンドとなり、2024年は1840億ドルとなっています。

世界のVC投資全体に占めるCVC投資の割合を見ると、2014年は21%でしたが、そこから上昇トレンドで2021年に31%と最高値となっています。2022年も31%と横ばいとなりますが、その翌年(2023年)以降はわずかながら下降トレンドとなり。2024年には28%となっています。

次にCVCの主な投資先を見てみます。前述の“State of CVC 2024”によると、CVCが最も関心の高い投資分野別はAIとなっています。

そこでCVCの全投資案件数に占めるAI投資の割合(CVC投資割合)を見ると、2014年は10%でしたが、そこから上昇トレンドで2020年に23%となっています。2021年には21%と一旦落ち込みますが、以降は再び上昇トレンドとなり2024年には29%となっています。VCの全投資案件数に占めるAI投資の割合を見ると、2014年は7%で以降上昇トレンドで2020年に18%となっています。2021年は横ばいの18%でしたが、以降再び上昇トレンドとなり、2024年は26%となっています。

2014年から、両者を比較すると、いずれの年もCVCによるAI分野への投資の割合が、VC全体によるAI投資の割合よりも高くなっていることが分かります。

次に日本のCVC投資額を見てみます。2014年は64億円でしたが、そこから増加トレンドで2020年に228億円となっています。その翌年の2021年に急激に伸びて352億円となりますが、以降は減少トレンドとなり、2024年は292億ドルとなっています。CVC投資割合の推移を見てみると、2014年は9.1%でしたが、以降は上昇・下降を繰り返しながら10%前後で推移しています。

こうして見ると、世界のCVCは、AIなどのテクロノジー分野への投資意欲が高いことが分かります。世界のVC全体でもAIスタートアップ等への投資割合が高く、その割合も上昇していることが分かりますが、CVCの方が更にAI分野への投資の割合が高いことが分かります。

また、世界的にCVC投資額は2021年と比べると大きく落ち込むなど変動が大きくなっていることが分かります。また、世界VCによるスタートアップ等への投資のうちCVCによる投資の割合(CVC投資割合)は、30%前後で推移していることが分かります。さらに、日本のCVC投資割合と比較すると、日本が10%前後で推移しているのに対し、世界のCVC投資割合が30%前後となっているため、日本のCVC投資割合が非常に小さいということが分かります。

世界的のCVC投資動向をみると、日本のスタートアップ投資は少ないですが、伸びしろがある分、これを事業機会・投資機会としても捉えることもできそうですね。

資料:
The State of Corporate Venture Capital 2024 Report
2024 国内スタートアップ資金調達動向