執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 専任講師)
ジェトロによると、2018年度にタイでの日本食レストランが前年度比8%増の3004店舗と、初めて3000店を突破したそうです。タイの首都バンコクでは競争が激しいため、店舗数が若干減少しているものの、地方都市への出店が増加しており、全体を押し上げています。ジャンル別でみると、最も店舗数が増えているのは寿司店です。特にバンコクなどの都市部では高級寿司店が人気のようです。
タイに限らず、日本食レストランは世界各地で順調に増えています。海外の日本食レストラン数は、2006年に約2.4万店だったものが、2017年に約11.8万店と、11年間で4.9倍となっています。特にアジアでは全体の58.7%(2017年)を占め、2015年から店舗数が約5割増加しています。(注:日系企業が経営している日本食レストランとは限らない)
ではなぜ、アジアでの日本食人気が高いのでしょうか。農林水産省は「政府や民間が世界各地で行っている日本食普及イベントなどを受け、世界的に日本食ブームが一層広がってきている」と分析しています。この他の要因として、日系企業のアジア進出の多さも考えられますが、訪日外国人旅行客の増加も要因の一つとして考えられるのではないでしょうか。
外国人が日本食に出会うのは、日本に旅行をした時が多いものと考えられます。そこで日本食を気にいった人が、帰国後にまた日本食を食べたくなることが考えられます。こうした訪日経験者の増加が、海外での日本食レストラン増加に寄与しているのではないでしょうか。中でも、訪日観光者数のうちアジア比率が圧倒的に高いことが、アジアの日本食レストラン増加の一因として考えられそうです。
一方、日本の外食産業にとって海外市場、とりわけ成長するアジア外食市場は大いに可能性があると考えられます。
このように考えると、日本でインバウンドビジネスをする際には、訪日滞在中にもてなすだけではなく、帰国後も現地で「日系企業が提供する日本食」を食べてもらえるように、広い視点での普及・啓蒙、マーケティングを検討するのも良いのではないでしょうか。
ラグビーW杯、東京オリンピック・パラリンピックで拡大するインバウンドを最大限生かす施策を今から準備したいですね。
出所:
農林水産省 ※最終アクセス 2019年3月19日
http://www.maff.go.jp/j/press/shokusan/service/attach/pdf/171107-1.pdf
ジェトロ調査 ※最終アクセス 2019年3月19日
https://www.jetro.go.jp/ext_images/thailand/pdf/japanese_restaurant_survey_2018_jp.pdf
執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)
ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。
<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)