業界ウォッチ 2026年4月21日

【データから読み解く】世界のデータセンターの動向

今回は『世界のデータセンターの動向』を取り上げます。

生成AIの普及によって、IT投資の重心が大きく動いています。Gartnerは、2026年の世界IT支出が6.08兆ドルに達し、AIインフラとデバイス需要が引き続き市場を押し上げるとみています。そのなかでも、最も象徴的な受け皿がデータセンターです。米国では、用途別建設投資において2026年にデータセンターがオフィスを追い抜く公算が大きいとされ、もはや単なる「裏方の設備」ではなく、都市と産業を支える基盤インフラとして前面に出てきました。経営の視点で見れば、これはクラウド市場の話にとどまりません。電力調達、立地戦略、サプライチェーン、地政学、そして国家の産業政策までを巻き込む論点になりつつあります。

では、世界のデータセンター需要はどの程度のスピードで拡大しているのでしょうか。また、その拡大は「どの国で」「何によって」起きており、日本はその地図の中でどこに位置しているのでしょうか。さらに、データセンターの増加に伴って、電力需要はどのように変化すると予測されているのでしょうか。実際に数字を見ながら確認していきたいと思います。
Global data center

まず、世界全体のデータセンターシステムへのIT支出額の推移を確認してみます。GartnerおよびStatistaのデータによれば、2012年から2020年までの支出額は、おおむね1400億ドルから2100億ドルのレンジで推移してきました。2020年にはコロナ禍の影響で1790億ドルまで一時的に落ち込んだものの、2021年の1895.1億ドルから回復に転じています。

特筆すべきは、2024年以降の急激な伸びです。2023年に2361.8億ドルだった支出額は、2024年には3291.3億ドルへと大きく増加し、前年比で約39.4%という高い成長率を示しています。さらに予測によれば、2025年には4894.5億ドル、2026年には5824.5億ドルに達する見込みです。2012年当時の支出規模と比較すると、わずか14年で約4.2倍、金額にして約4400億ドルもの投資が上積みされる計算になります。これは、クラウド化の進展に加え、AIインフラへの投資が従来の投資サイクルを大きく塗り替えつつあることを示していると考えられます。

次に、物理的な拠点数である「データセンター設置数」を国別に見ると、世界のデジタルインフラの重心がより鮮明になります。2026年4月時点のデータによれば、米国が4213件と圧倒的な首位です。2位の英国(523件)、3位のドイツ(515件)と比べてもその差は大きく、AI開発を主導するハイパースケーラーの本拠地としての優位性が際立っています。日本は256件で世界第9位に位置しています。アジア圏では中国(369件)、インド(299件)に次ぐ規模ですが、注目すべきは投資の質と密度です。近年、マイクロソフト、オラクル、AWSといったビッグテックが日本でのデータセンター拡充に大規模な投資を表明しており、今後は設置数以上に大きな投資が日本市場に向かう可能性があります。日本は、安定した電力供給体制や制度面の整備、さらにアジアのハブとしての地理的優位性が評価されていると考えられます。

今回の分析で最も注視すべきは、電力需要の予測です。McKinseyの推計によると、データセンターの消費電力は2025年を境に構造的な変化を迎えます。2025年時点では、AIデータセンターが44GW、従来型データセンターが38GWで、両者の電力需要は拮抗しています。しかし、2026年以降はAI側の需要が急拡大し、2030年にはAIデータセンターの消費電力は156GWに達すると予測されています。一方で、従来型は64GWにとどまります。

2025年から2030年までの5年間で、AIデータセンターの電力需要は約3.5倍に膨らみます。1GWは一般家庭100万世帯分の消費電力に相当するとされており、メタ(旧フェイスブック)がインディアナ州に着工した100億ドル規模の施設も、まさにこの1GW級の需要を想定しています。AI以前は100MW(0.1GW)級が超大型とされていたことを踏まえれば、わずか数年でインフラの設計思想が10倍規模へと拡張されたことになります。

こうしてみると、世界のデータセンター市場は「クラウドの延長」から「AI時代の産業インフラ」へと性格を変えていることが分かります。重要なのは、競争の単位がサーバー台数やクラウドシェアだけではなく、電力、土地、冷却、国内保管、規制対応まで含んだ総合戦になっている点です。日本は件数では米国に大きく及ばないものの、世界の主要クラウド事業者が複数のリージョンを置き、追加投資も続く市場です。したがって、日本企業や政策当局にとっての論点は、「日本にデータセンターがあるか」ではなく、「日本をAI計算基盤の拠点としてどこまで厚くできるか」に移っていると考えられます。事業会社にとっては、クラウド選定が地域戦略、BCP、電力リスク管理と一体化しつつあります。不動産・電力・通信・建設各社にとっても、AI需要は新たな成長機会になる一方で、長期採算と地域受容性をどう両立するかが問われている、ということが読み取れます。

資料:
Gartner Forecasts Worldwide IT Spending to Grow 9.8% in 2026, Exceeding $6 Trillion For the First Time
Information technology (IT) spending on data center systems worldwide from 2012 to 2026
Data Center Map
Data center demands