執筆:佐藤祐樹(BBT大学院MBA本科修了、三丸化学株式会社 取締役)
対象科目:戦略的人材マネジメント(川上真史 教授)
人材政策には流行があります。
能力主義に人気があった時代がありました。
業務に一切使わない資格でも、たくさん取得すれば評価が上がる、というような不整合がありました。
成果主義という名の結果主義も流行りました。
偶発的な要素に大きく左右される結果に対して評価されるため、運の善し悪しに依存する刹那的な評価に陥ることが多くありました。
現代の主流は成果につながる行動を重視するようになってきました。
この能力を「コンピテンシー」と呼びます。
結果はともかく、それにつながる行動ができているかどうかを評価されます。
評価の方法が非常に難しい反面、とても納得がいく考え方です。
コンピテンシーとは、繰り返しですが、成果につながる行動のことです。
それでは、あなたのコンピテンシーレベルはどれくらいでしょうか?
ちょっとチェックしてみましょう。
◆Level.1:
誰かから指示されたことをその通り実行できる
◆Level.2:
ある状況下で、やるべき当然のことを自主的に実行している
…ここまでは、なんだか新入社員研修の当面の目標、のような内容です。
しかしながら、世の中の人間の90%はこのレベル止まりの人材だそうです。
あなたはそうじゃありませんよね?
◆Level.3:
状況を的確に判断することで、その状況の中ででき得るアプローチの中から最適な選択ができ、しかもそれを実行できる
…ぐっとレベルが上がりましたね!
やれと言われたことだけできるのではなく、自分の頭で考えることができています。
とても価値の高い人材のように感じますね。
しかしながら、このレベルではまだまだコンピテンシーが高いとは言えません。このLevel.1~3までは、あくまで状況に対して反応しているだけの、「状況従属行動」だからです。
それに対し、次から挙げるLevel.4~5は「状況変容行動」です。
力強く状況を変えられる力が、本当の意味でのコンピテンシーです。
◆Level.4:
閉塞状況、困難な状況でもあきらめず、打破する方法を独自の工夫で考え出し、実行している
◆Level.5:
全ての成果がそこに集まるような独自の新しい状況をパラダイム転換して創っている
…いかがですか?
従来のものの見方をガラッと変え、しかもそれによって成果が集中するような行動ができて、初めてコンピテンシーレベルが高い、と言えるのです。
これらの能力はいつの時代にも求められていたはずです。
しかし、なぜ今、とりわけ注目されているのでしょうか?
それは、以前と比べ、仕事の難易度が極度に高まっているのが原因です。
仕事の難易度は、「ノウハウや姿勢」と「成果」の距離の長さだと言えます。
高度成長期や人口増加期は、この2つの距離が現在と比べ非常に近いものでした。
ノウハウを得て、真面目にやれば成果につながる時代だったと言えます。
現代社会はこの距離が非常に遠くなってしまいました。世の中の複雑さが増してきたことで、ノウハウと真面目さだけでは成果にたどり着けません。
その距離の長さを埋めるための能力がコンピテンシーです。
ノウハウや真面目さがあるのは当然です。
その上で、成果にたどり着くために状況を力強く変容させる力量が必要なのです。
わたしたちは、コンピテンシーが求められる時代に生きている、と正確に認知することが必要です。
もしあなたが、過去のノウハウを会得することだけに真面目に取り組んでいたら危険です。
コンピテンシーLevel.5を目指し、明日からと言わず今から、努力のベクトルを変えてください。
佐藤祐樹
BBT大学院MBA本科 修了 三丸化学株式会社 取締役事業部長
1974年生、宮城県仙台市出身。
大学でデザイン(専門はシルクスクリーン)を学んだ後、写真業界、出版社勤務を経て現企業に転職。営業・マーケティング部門で活躍中、2011年3月に出張先で被災。
その後2年間、企業勤めの傍らボランティアセンターの運営に携わる。
2013年にBBT大学院に入学、2015年MBA取得、同年取締役事業部長に就任。事業活動の責任者としてマーケティングから人事まで幅広く担当している。
また、2015年10月に友人とコーヒーの焙煎販売を行う株式会社リュミヌー珈琲を設立。
その他、コピーライターや事業計画作成支援、大学の補助教員などのフリーランス業務も行う。
「世の中の幸福の総量を力強く増やす仕事人」を目指す愛犬家。愛犬を連れてよく遊びにも行く。
趣味は手作りスモークチーズなどの燻製を作ること。