執筆:佐藤祐樹(BBT大学院MBA本科修了、三丸化学株式会社 取締役)
対象科目:戦略的人材マネジメント(川上真史 教授)
人間にとって、人生の究極の目的は幸福になることです。
心理学はネガティブ側面への注目に偏って深化してきました。
何らかのネガティブなトラブルを解決する、というテーマがほとんどだからです。
ところが、ネガティブ側面を除去しても、それが幸福にはつながらないという現実に直面しました。
不幸ではない状態は、幸福とは限らず、単に退屈な状態なのです。
ネガティブ側面を除去する努力は重要です。
しかし、幸福になるための努力の方向性は全く異なります。
現在の心理学に求められているのは、不幸への対処だけではなく、積極的な幸福の追求という課題です。
幸福な人生はさまざまな好ましい結果をもたらします。
あなたの人生を豊かで充実したものだと感じさせてくれるだけではなく、仕事の成果を大きく向上させてくれます。
・生産性は平均で31%、売上は37%、創造性は3倍も高い
・顧客から高い評価を得られる可能性が非常に高い
・平方フィートあたりの店舗面積利益は、他店より21ドルも高い
これらは幸福な従業員が働く職場の研究結果です(出展は講義映像中に記載)。
自分が幸福であるかどうかは個人としての重要課題です。
組織として考えた場合も、構成員全員の幸福を追求するべきです。
幸福を追求するためには、幸福というものを正確に理解することが求められます。
そのためには、かなり誤解されている「満足」との違いを明確にする必要があります。
満足感とは、与えられたものに対する感情です。
幸福感とは、自分で創り上げたものに対する感情です。
不満足と不幸はほぼイコールですが、満足と幸福はまったく別のものです。
・運よく何かに恵まれている
・誰かからたくさんのものを与えられている
・一般的な成功モデルに当てはまっている
これらは、幸福かどうかは関係なく、満足感だけは得られている状態です。
一見、幸福感を得やすそうですが、満足感を得ていても不幸な人はたくさんいます。
・たくさんモノを持っているが正当な理由で得たわけではない
・知識を多く持っているがどこかで聞いたり教えてもらったりしたものである
・高い地位や尊敬されそうな職業なのに周囲からは認められていない
このような状態だと、満足感を得られていても幸福に生きることは難しくなります。
統計によると、満足度と幸福度は、満足度の低いところから30パーセンタイル値までは強い相関関係にあります。
しかし、そこから相関が弱まり、55パーセンタイル値からは一切関係なくなります。
乱暴な言い方をすれば、ほぼ平均以上の満足感を得ている人は、それ以上満足感を上げる努力をしても、幸福度を上げることはできません。
満足したブタにはなるな、不満足なソクラテスたれ、とはよく言ったものですね。
収入、配偶者の有無、子供の有無、資格や学歴、若さ、職歴や肩書、身体的な魅力、友人の多さ、健康…。
非常に誤解されやすいのですが、これらの要素も幸福感とは相関を持たないことが統計的にわかっています。
人間は誰にでも幸せになる権利があります。
逆に、イケメンで高収入、さらに友人が多そうな人、であっても幸福とは限らないというわけです。
それでは、幸福感を感じている人はどのような人なのでしょうか?
実は、幸福な人の特性は、6つのキーワードによってある程度特定されています。
1.勇気
2.正義
3.創造性
4.節制
5.関係性
6.人間性
次回は、このキーワードをもとに、ズバリ「幸せな人生にする方法論」をお伝えいたします。
佐藤祐樹
BBT大学院MBA本科 修了 三丸化学株式会社 取締役事業部長
1974年生、宮城県仙台市出身。
大学でデザイン(専門はシルクスクリーン)を学んだ後、写真業界、出版社勤務を経て現企業に転職。営業・マーケティング部門で活躍中、2011年3月に出張先で被災。
その後2年間、企業勤めの傍らボランティアセンターの運営に携わる。
2013年にBBT大学院に入学、2015年MBA取得、同年取締役事業部長に就任。事業活動の責任者としてマーケティングから人事まで幅広く担当している。
また、2015年10月に友人とコーヒーの焙煎販売を行う株式会社リュミヌー珈琲を設立。
その他、コピーライターや事業計画作成支援、大学の補助教員などのフリーランス業務も行う。
「世の中の幸福の総量を力強く増やす仕事人」を目指す愛犬家。愛犬を連れてよく遊びにも行く。
趣味は手作りスモークチーズなどの燻製を作ること。