業界ウォッチ 2018年6月4日

教員のちょっと気になる「中食の市場規模」



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 講師)

今回は、「中食の市場規模」を取り上げてご紹介いたします。

5月下旬に、一般社団法人日本惣菜協会が、中食・総菜業界の国内市場をまとめた「2018年版惣菜白書」を発刊しました。同白書の調査結果によると、2017年度の中食・惣菜の情規模は10兆555億円と10兆円の大台を突破したとのことです。

日本経済新聞では、共働き世帯が増えているため、時短需要が増加していることが背景ではないかとして、同調査の結果と合わせて報道しています。また惣菜企業各社の業績も好調なようです。

それでは、中食市場がどのようなトレンドで伸びているのか、食市場の中で中食はどのくらいのウェイトを占めていて重要度が高まっているのか、どの店舗業態での購入が多いのかなど実際に数字で確認してみたいと思います。

まず中食の市場規模の推移を2005年から2017年の期間で見てみます。2005年に約7.6兆円でしたが、2008年(約8.2兆円)まで増加しましたが、2009年(約8.1兆円)に一度落ち込んでいます。以降は増加トレンドで、2017年に約10.1兆円と10兆円を初めて突破しました。

次に、食市場全体の中で、中食がどのくらいのウェイトを占めているのか、2007年と、2016年(データの制約で外食、内食の最新データが2016年のため)で比較してみ見ます。中食の構成比は、2007年に12.7%でしたが、2016年には13.8%と約1.1ポイント増加しています。ちなみに内食は2007年に約48.1%でしたが、2016年に50.6%と、約2.5ポイント増加しています。外食は、2007年に約39.2%でしたが、2016年は約35.6%と約3.6ポイント減少しています。

それでは、中食はどのような店舗業態で買われているのか、業態別の販売額の推移を見てみます。グラフを見ると、伸びている業態は、コンビニエンスストア(CVS)と、食品スーパーで、その他の業態はほぼ横ばいだとわかります。CVSは2015年に2.96兆円でしたが、2017年に約3.23兆円と増加しています。食料品スーパーは2015年に約2.45兆円でしたが、2017年には約2.62兆円へと伸びています。

こうしてみると、外食の需要を、内食・中食が取っているという構図が見えてきます。中食の購入先は、コンビニエンスストアと食料品スーパーの伸びが大きいということが分かります。

先に、共働き世帯の増加で中食が増加という報道を紹介しましたが、内食も増加しているので、外食の割合が減っている要因が他にもありそうです。

そういえば、コンビニエンスストアは、最近イートインを強化しています。新しい店舗など多くはイートインを設けていることが多いようです。すると、統計的には外食ではなく、中食にカウントされることになると思います。イートインでは、学生や社会人を見かけることも多いので、これまでファストフード店に入っていたのが、コンビニに向かっているのかもしれません。

そう考えると、共働き世帯の増加要因に加えて、今後更にイートインが増えていくので、中食市場が伸びていくのではないかと予想できそうですね。

執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)

ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。

<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)