業界ウォッチ 2020年8月17日

教員のちょっと気になる「国内ライブ・エンタテインメント・音楽フェス市場」



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 講師)

今週は「国内ライブ・エンタテインメント・音楽フェス市場」を取り上げてご紹介いたします。

先日、サイバーエージェント及び同関連会社が共同で、国内デジタルライブエンターテインメント市場に関する市場動向調査結果を公表しました。同調査結果によると、2020年の市場規模は140億円の見通しで、2021年には前年比の2.2倍と急拡大することが予測されています。ちなみに、同調査では「デジタルライブエンターテインメント」をアーティストが音楽ライブや演劇などを主にステージ上で演じ、ライブ配信で提供されるコンテンツと定義しています。

確かに、今年は新型コロナの影響で、音楽ライブ、音楽フェスの中止や、入場者数制限がかかるなど、大きな打撃を受けていますが、その一方で、各アーティストがオンラインでのライブ配信などの取組をする等の報道を見かけるようになりました。

それでは、国内ライブ・エンタテインメント、音楽フェスの市場規模はこれまでどのように推移し、今年はどの位の規模になると予想されているのでしょうか。その一方で、デジタルラブエンターテインメント市場はどの位の規模感で、どの位の伸びになると予想されているのでしょうか。実際に数字で確認したいと思います。

まず、従来型の国内ライブ・エンタテインメント市場を見てみます。音楽・ステージを合わせた合計の市場規模をみると、2010年は1600億円で、そこから増加トレンドで19年には6295億円と過去最高値となっています。20年は、大きくこち込み19年の3割程度の1836億円になることが予想されています。「ステージ」と「音楽(コンサート)」の内訳で見ると、「音楽」の割合が大きくなっていることが分かります。

次に、音楽フェス市場の動向を見てみます。市場規模は2010年が151億円で、そこから増加トレンドとなり、19年には過去最高の330億円となっています。20年は19年の約1割になると予想されています。動員数も市場規模とほぼ同じトレンドで、’10年が143万人、19年の295万人まで増加トレンドとなっており、20年は19年の1割程度とみられています。

一方、リアルのライブ・エンタテインメントや音楽フェスに対し、デジタルライブエンターテインメントは、20年以降急成長する見通しとなっています。20年が140億円で、翌21年は314億円と前年の約2.2倍、24年が984億円と20年の約7倍近くにまで拡大することが予想されています。

こうしてみると、デジタルライブエンターテインメント市場は、21年には314億円と、音楽フェスの過去最高が19年の330億円に迫る規模にまで拡大していることが分かります。リアルのライブ・エンタテインメント市場が今後どの位回復するのか見通すのが難しい中、デジタルライブエンターテインメント市場が大きな貢献を果たすことが見て取れます。

音楽業界は、CD収入が激減し、ダウンロード・ストリーミングにシフトしたことで、ライブ・フェスに活路を見出してきました。ようやくライブ・フェス市場が拡大したところに、新型コロナで大きな打撃を受けています。

それでも、なおデジタルライブエンターテインメント市場に、活路を見出していこうとする姿勢は、他のコロナ禍で打撃を受けた業界にとっても参考になるかもしれませんね。

執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)

ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。

<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)