業界ウォッチ 2018年10月29日

教員のちょっと気になる「QRコード決済利用実態」



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 講師)

今回は、「 QRコード決済利用実態 」を取り上げてご紹介いたします。

今年に入り、キャッシュレス決済やQRコード決済に関する話題が多くなっています。中国のQRコード決済が世界的に先行しているといわれていますが、国内ではLINEや楽天などがQRコード決済事業を推進しています。

そんな中、デロイトトーマツグループが、QRコード決済・モバイル決済に関する利用実態調査結果を8月末に発表しています。同調査結果によると、回答者の60%がQRコード決済を「知らない・初めて聞いた」と回答したということでした。

それでは、QRコード決済を利用している人はどのくらいの割合なのでしょうか、QRコード決済を利用しない理由はどこにあるのでしょうか。実際に数字で確認してみたいと思います。

まず、「モバイル決済の利用経験」を見てみると、全体(各年代合計)で「利用したことがある」が20%、「知っているが利用したことはない」が57.7%、「知らない・初めて聞いた」が22.3%となっています。約77%の人がモバイル決済を知っているということになります。年代別で見ても、傾向に大きく違いはありません。

次に、「QRコード決済の利用経験」をみると、「利用したことがある」が9.1%、「知っているが利用したことはない」が30.9%、「知らない・初めて聞いた」が60%となっています。知っている人が約40%となっています。こちらも同様に、年代別で傾向に大きな違いは出ていません。

このように、QRコード決済の認知率はモバイル決済の半分程度であり、利用率も半分程度となっていることが分かります。

それでは、日本国内のユーザー側の意向、特にQRコード決済を利用しない理由を見てみたいと思います。「QRコード決済を利用していない理由」として、最も多かった回答が「仕組みをよく知らないから」の49.3%となっており、次いで「利用可能な店舗が少ないから」(22.1%)、「利便性を見出せない、必要性を感じないから」(15.2%)と続いています。

こうしてみると、国内の消費者は、QRコード決済について「知らない」し、聞いたことがあったとしても「仕組みがよく分からない」ため、利用者が少ない状況にあることが分かります。

確かに国内のお店では、Suicaやnanacoなどの電子マネーを使う人を見かけても、QRコード決済を使っている人を見かけることがほとんどありません。中国がキャッシュレス先進国なのに対して、日本で同様にQRコード決済が普及するには、まだまだハードルがあるのかもしれませんね。

執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)

ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。

<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)