業界ウォッチ 2020年1月13日

教員のちょっと気になる「国内スポーツテック市場」



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 講師)

今週は「国内スポーツテック市場」を取り上げてご紹介いたします。

今年(2020年)夏には、いよいよ東京五輪が開催されます。数年前から、スポーツとテクノロジーを掛け合わせた「スポーツテック」が注目されていますが、さらに今年の春に次世代通信規格「5G」の商用サービが始まる予定となっています。5Gを活用したサービスの実証実験など各社が取り組んでいますが、その活用分野の一つとして「スポーツ」も注目されています。「高速・大容量」、「多接続」、「低遅延」といった5Gの特徴を生かしたスポーツ分野での導入の取組も始まっています。

こうした、各社の取組に関するニュースもよく見かけますが、実際にスポーツテック市場はどのくらいの規模なのでしょうか。動画配信や、IoTを活用したスポーツなど分野によってどのような市場トレンドの違いがあるのでしょうか。また5Gはどの位、スポーツテック市場に影響があるのでしょうか。実際に数字で確認してみたいと思います。

まず、国内スポーツテック市場全体の推移を見てみます。野村総合研究所の推計・予測によると、2017年は112億円でしたが、そこから増加トレンドで2022年には1000億円を超え、2025年には1547億円と、2017年の約14倍に拡大しています。

次に、「動画配信サービス」、「IoTを活用したスポーツ用品・サービス」分野別の市場規模推移を見てみます。「動画配信サービス」は、2017年に111億円でしたが、そこから増加トレンドで2025年には863億円となっています。ただし、増加ペースは2022年以降緩やかになっています。

「IoTを活用したスポーツ用品・サービス」は、2017年に1億円でしたが、そこから増加トレンドで2025年には685億円となっています。2020年以降に増加ペースが加速しています。2021年までは「動画配信サービス」が中心ですが、2022年以降「IoTを活用したスポーツ用品・サービス」のウェイトが高まっていることが分かります。野村総合研究所によると、50代以上の世代のスポーツや健康への関心の高まり、フィットネスクラブのサービス形態の拡充・多様化が影響しているためと分析しています。

また、5Gのスポーツテック市場への寄与度をみてみると、2021年に10億円でしたが、そこから増加し続け、2025年には164億円となっています。スポーツテック市場全体のおよそ1割が5Gの寄与によるものだということになります。

こうしてみると、スポーツテック市場は現在のところ「スポーツを見る・視聴する」ためのサービスが中心となっていますが、2022年頃から「スポーツをする・行う」ための用具・サービスへとシフトしていくことが分かります。

2020年東京五輪は大きなイベントではありますが、スポーツテック関連ビジネスとしては、一過性のもので終わらせるのではなく、継続的に事業拡大できるようにしっかりと市場を見据えることが必要になりそうですね。

執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)

ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。

<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)