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物言わぬ国民が招いたアメリカと日本の金融資産の格差とは?
今回は皆様に、ぜひ見てもらいたい図があります。
これは、日米の家計金融資産額を表したものです。
日本の家計金融資産が1,500兆円あることは、いろいろなところで言われているので、よく知られていることだと思います。そこで現在のアメリカの家計金融資産額はというと、4,894兆円もあるのです。
アメリカは人口が多いので当然と思われる方もいるとは思いますが、注目していただきたいのはその伸び率です。
実は、今から10年ほど前の1995年前後では、家計金融資産が両者とも非常に近かった時代がありました。
この頃は、日本人の貯蓄性向の高さは素晴らしいものがあり、アメリカの人口は日本の人口の2倍以上ですが、この頃は2倍の差もつかず、完全に許容できるところにありました。
ちなみに、1989年の頃まで遡ると、アメリカが2,000兆円で日本が1,000兆円と丁度2倍なので、日本人とアメリカ人の個人金融資産は、人口を考慮すればほぼ同じだったということがわかります。
しかしその後、クリントン政権時代から運用益で差が出始め、2,000兆円を超えたあたりから、ドーンと急成長を遂げ、今では5,000兆円に届く勢いです。
気がついたら、悲しいかな、日本とアメリカの家計金融資産の差は、ここ10年の間に3倍以上の開きが出てしまいました。
アメリカ人は運用益でお金持ちなりましたが、日本人は貯蓄をしているだけで大した伸びもしませんでした。「日本の金融資産1,500兆」というけれど寂しいかぎりです。
そして次の図は非金融資産額です。
見事にわかりやすい比較図となりました。アメリカの不動産は、家計金融資産と同様に長い間右肩上がりになっています。ちなみに、この統計は富裕層なども全部含めた統計なので、サブプライムとは関係がありません。
「日本の場合は?」というと、不動産はかなり下がってしまっていて、バブル崩壊の恐ろしさと国の政策が奮わなかったことがみて取れると思います。
次のその両国の非金融資産額を足した図を見てみましょう。
見てわかる通り、実はこの90年代と言うのは、日本の不動産など個人の持つ非金融資産の方がアメリカよりも高かった時代がありました。
それが、どんどんと右肩下がりに落ちている間に、アメリカの不動産は逆に右肩上がりになり、今では3倍以上の差が開いたというわけです。
金融資産も3倍以上に開き、不動産も3倍以上に開いたということで、悲しいことに日米の差というのは、全体でみても3倍以上になってしまったということになります。
つまり、日本の金融資産は世界一というけれど、それは運用益の出ない貯蓄だけの話であり、アメリカ人は、貯蓄はあまり持っていないが、株や債券なども入れた金融資産を全部入れると、日本の3倍以上持っています。
個人の一人当たりすると1.5倍の金融資産を持っている計算になり、しかもこの差というのは、この10年でついたというわけです。
皆さんもゼロ金利というのを許してはいけないということがわかったのではないでしょうか。
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ビジネス・ブレークスルー大学院大学学長
大前研一
9月2日放送
「大前ライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。 |
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ブレークスルー経済学 |
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。 |
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第13回 『為替レートと貿易収支』
為替レートは、金利や物価予想などの経済指標に影響を受け、場合によっては大きく変動することもあります。ただ一方で、為替レート自体が他の経済指標に影響を与える場合もあります。
特に、為替レートによって影響を受ける経済指標としては、「貿易収支」が挙げられます。
この貿易収支とは「輸出から輸入を引いたもの」を指し、輸出が輸入に比べて多い場合(つまり、プラスの値の時)のことを「貿易黒字」といい、輸入が輸出に比べて多い場合(つまり、マイナスの値の時)のことを「貿易赤字」といいます。
ここで「輸出」が増えるということは、商品を別の国の人に買ってもらったわけであり、輸出をした企業の売上が増加するので、貿易黒字の場合、その国の所得(GDP)を押し上げることになります(逆に、「輸入」が増えると、他国から商品を買ったことになるので、その国の所得が海外に流れることになるので、貿易赤字の場合には、GDPを減少させることになります)。
このように、輸出は貿易企業の売上に当たることから「数量」と「価格」に分けて表すと以下のようになります。
貿易企業による売上=輸出量×貿易相手国通貨建て単価×為替レート
この関係において、為替レートが「自国通貨高(つまり、日本を中心にすれば「円高」)」になった場合、その他の条件が一定であれば、「輸出量×貿易相手国通貨建て単価×為替レート」のうち「為替レート」の部分の値が小さくなるので、貿易企業の売上、つまり、輸出が減少することになります。
売上が低下する場合、それを賄うため円高になった分だけ、例えば、米国内でのドル表示の単価を引き上げたとすれば、米国でのその企業の競争力は失われることになります。
以上より、マクロ経済的にいって円高になった場合には、いずれにしても「輸出が減少する」ことになるので、日本のGDPは減少することになります。
但し、これは為替レートの輸出への影響であり、輸入に対する影響は逆になることから、景気そのものに対する影響を予測する場合には、貿易収支全体を総合的に判断する必要があるので注意をしてください。 |
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前田拓生(Takuo Maeda)
ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
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グローバルマネー・ジャーナル第16号、いかがでしたでしょうか。
先週末、イギリス最大手の金融機関であるHSBCグループが、
来年早々にも日本での個人向け金融業務をはじめるとの
ニュースがありました。
展開のための中継地点としては、日本からも近距離にあり、
様々な金融商品を扱っていることで有名な香港上海銀行を
活用するそうです。
これまで法人や、数億円規模の資産を持つ個人しか相手にしなかった
海外大手金融機関ですが、最近は一千万円程度の資産を持つ個人投資家
(大衆富裕層)に対するこうした動きが非常に活発化してきています。
海外金融機関同士の新たなサービス競争に注目したいところです。
来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!
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