韓国の経常収支からみる中国と日本の関係|株式・資産形成講座メルマガ

  2007/11/28(水)  
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韓国の経常収支からみる中国と日本の関係

韓国銀行が発表した9月の経常収支は、24億2000万ドルと月次ベースで今年最大の黒字となりました。半導体や自動車などの輸出が好調で、輸入の伸びを上回ったためですが、ウォン高が再び進行していることから、通年で前年実績を上回るかどうかは判断が分かれています。

韓国経済が「好調」というのは「ご同慶の至り」なのですが、いくつか手放しでは喜べないところがあります。

一つは、韓国の場合、実体経済の大部分が中国に行ってしまっているため、統計としては韓国のものでも、かなりの部分が韓国自身の成果とはいえないからです

ここ数年の韓国の経常収支の推移をみてみましょう。


このグラフでも、最近ではマイナスに振れることも多くなっていることがわかります。これは、ウォン高になってしまうと、韓国を経由せず、そのまま中国に持ち込まれて加工・生産され、世界に輸出されるからです。

このような流れは台湾でも同じで、日本から機械部品等を輸入して、中国が組み立てや輸出の拠点となっているのです。



つまり、韓国や台湾の機械部品主要輸入国である日本にとっては、このような流れで、益々中国が栄えることは大歓迎なわけです。

私が「チャイナインパクト(講談社/2002年)」で、"中国お客様論"というパラダイムを打ち出すまでは、世間一般の認識として"中国脅威論"が趨勢を占めていました

しかし、今では多くの中国企業、台湾企業、韓国企業が、日本から基幹部品や工作機械を輸入して中国で組み立て・加工・生産し、製品の一部を台湾・韓国を経由させて世界に輸出するという「パススルー経済化」を常態化させており、"中国お客様論"は確立されたものとなっています。

ですから日本としては、その流れを阻害しないようにさえしていれば、上記の隣国が支えてくれるわけですから、実に有り難い存在といえるでしょう。

このように、日本は柔道のようにうまく浴びせ倒しをやっているわけですが、この辺りの諸事情を"中国脅威論者"はわかっていないのです。

では、この先はどうなっていくのかというところが注目されますが、実際には、当面、日本は強いままでしょう。

台湾や韓国の企業は、組み立て機械や半導体の製造装置といった先端・精密加工分野には技術面で手を出しづらいので、日本の強さは安定的に保持されていくと思われます。

講師紹介
大前研一
ビジネス・ブレークスルー大学院大学学長
大前研一

11月11日放送
「大前ライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。
大前研一学長語録
 ブレークスルー経済学
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。

第22回 『「投資」って、何で決まる? 』

消費は、需要(支出)の中で最大の項目ではありますが、ラチェット効果などにみられるように、大きく変動することはほとんどの場合ありません。つまり、母数は大きいのですが、変動自体は小さいので、GDPの変動における攪乱要因にはならないのが普通です。

そういうことから、GDPの変動に大きく関係するのは、「投資」であると考えられています(また、実際にも多くの場合、「投資の変動」が「GDPの変動」を左右するように動いています)。

では、「投資」とは「何によって変動する」のでしょうか?

「投資」には「民間設備投資」、「民間住宅投資」、「公的設備投資」、「公的住宅投資」などの種類があります(本当は「固定資本形成」などという用語を使いますが、ここでは一般的な言葉として「設備投資」を使います)。したがって、実際にはそれぞれに特有の性質があり、変動における要因は「違う」と考えるべきなのですが、ここでは単純化のために、「民間設備投資(以下「設備投資」)」)のみ解説いたします。

「設備投資」とは、次期の生産のための「今期における支出」のことなので、この支出は「今期における生産には寄与しない」ことになります。つまり、「支出」だけは今期に発生しますが、その支出自体は「今期の生産に寄与しない」ので、「今期における付加価値」は発生しないことになります。

以上から設備投資によって生まれる付加価値は、「来期以降の付加価値」になってしまうため、事後的には「今期の消費」からのおカネではなく、「貯蓄されたおカネ(貯蓄=所得-消費)」により賄われていることになります。ここで「貯蓄されたおカネ」とは「今期の消費」として支出されないおカネなので、金融機関等を通じて、他の主体に貸し出されていることになり、金利がかかるおカネです。このおカネを資金として設備投資が行われるということになります。

ところで、世の中には多くの設備投資の機会があり、それぞれの設備投資によって将来もたらされる「期待収益率」は違います。しかし、「高い投資収益率を得ることができる機会」は比較的少なく、「低い投資収益率しか得ることのできない機会」は比較的多いと考えることができます(なぜなら、「高い投資収益を得られる機会」は、多くの企業が狙っているので、そのような機会があれば、競争原理に従って、どこかの主体に取得されてしまうため、ほとんどの場合、市場には存在しないからです)。

また、この投資収益率というのは設備投資による「収益(=付加価値)」率のことではありますが、現時点での収益をあらわしているのではなく、次期以降に発生するものであり、「期待」でしかありません。ところが、この期待がある程度「確からしい」と考えられるのであれば、当該設備投資を「実行しよう」と考えることになるでしょう。

しかしここで、当該設備投資を行うに際して、当該企業が借入によって行う場合、期待される収益率よりも高い利子率を課された時には、当該設備投資は実行されないことになります。

したがって、現在の市場利子率に比べて高い投資収益率を持つ設備投資機会だけが実行されることになるので、ある利子率が決まれば、設備投資等に対する支出の総額が決定されることになります。つまり、現在の利子率よりも低い投資収益率機会しか持たない設備投資は、その時点では実行されていないことになります。

ここで均衡状態(ある市場金利と設備投資総額が均衡している状態)から、金利が低下した場合、それまでは実行されなかった投資機会の収益率が市場金利を上回ることになり、新たに実行されることになります。

このように「設備投資」は、「市場金利」が下がれば下がるほど(上がれば上がるほど)、増加(減少)することになるので、設備投資の増加はGDPの増加をもたらすことになります。これが「金利が下がれば、景気(GDPの変動)が良くなる」根拠になっています。

なお、上記の「投資(設備投資&住宅投資)」は実物投資に関することであり、「金融商品の投資」とは異なるので、その点は注意してください。

講師紹介
前田拓生
前田拓生(Takuo Maeda)

ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
 
編集後記
 編集後記
事務局 一戸 グローバルマネー・ジャーナル第27号、いかがでしたでしょうか。

実は今、大学卒業以来ほったらかしだった英語を勉強し直しています。

理由は二つ。
一つは先日初めてのカナダ旅行でコーヒー一つ満足に買えなかったから。 もう一つは海外での分散投資をもっと積極的にやりたいからです。

海外には、日本には無い、面白い金融商品がたくさん存在します。 それらを、それぞれの国の通貨で運用することが、本当の意味で 国に頼らない国際分散投資だと考えています。

今は身近な単語を覚えることで一杯ですが、一日でも早くそうした 投資が始められるよう、頑張りたいと思います!

来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!    

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