騰落Ratioでわかる!投資家の心理動向|株式・資産形成講座メルマガ

  2008/5/28(水)  
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騰落Ratioでわかる!投資家の心理動向

2007年の混乱期から抜け出たシグナルとは?

株価の変動というのは3つの要素があると思っています。1つは資産や現金・不動産や有価証券で、2つ目はどれだけ儲かっているのかを表す収益です。

これに加えてもう1つは、株価には夢や希望、不安や恐怖というものが織り交ざってできているということです。

去年などは資産がいくらあっても、収益がどれだけよくても、あまりにもサブプライムに対する不安や恐怖ばかりで、良い会社なのに下がることがありました。

この3番目の要素を「騰落Ratio」というキーワードの中にみることができるのではないかと思っています。

それでは、このことを具体的に説明するために、次の図を見てください。


これは直近の騰落Ratioを表しているものですが、今回の2008年の騰落Ratioには4回ポイントがあるのではないかと思っています。

まず1月22日を見てみますと、騰落Ratioは52.8という数字になっていますが、これは今までで1番小さい数字で、過去最低になります。

これはどういうことかといいますと、騰落Ratioというのは「値上がりしたものを値下がりしたもので割る」ことで出すので、値下がりした分母が大きいということになります。

つまり「株がものすごく下がっている」ということです。

それが今までで1番低いとは「どういうこと」なのでしょうか?

例えば、97年に山一證券や拓銀が破綻したとか、2003年にりそな銀行が国有化になったとか、そういった本当に日本は「どうなってしまうのだろう」という時期がありましたが、その時よりも、現在の状況はそこまで悪くないはずなのに、投資家の心理が悪いせいで株価が下がったわけなのです。

でも「今、本当にそんなに悪いのか」というと、そんなに悪くないので「買いではないか」ということを私は主張していました。

では、「実際、2月27日はどうだったか」というと、翌日の28日の時点では、136だったので数字としてはよく、「私は売りのタイミングではないか」と思ったわけです。

次に、今度は逆に「136というのはどういう数字か」というと、これは1年2ヶ月ぶりに大きい数字です。

この数字は、2006年の12月にまで遡らないと出てこないのであり、それだけ投資家が楽観的になっているので「株価が上がっていった」ということなのです。したがって、「売りではないか」と考えたわけです。

ところが、残念なことに3月に77.8、終値としてその翌日の3月18日には1万1964円という数字が出ています。

この前の1月には過去最低の52という数字が出たので「買いじゃないか」、2月には1年2ヶ月ぶりで136という数字が出たので「売りじゃないか」と。非常にエポックメイキングなことが起きています。

ところが、3月17日の77.8というのをよくご覧いただくと、実は、結構似たような数字があります。

図の真ん中から左側が2007年になりますが、その中にも結構似た数字があるので、私としては「まだ下がるのではないか」と思ってしまったわけなのですが、結果は大外しでした。

しかも、4月22日にまた130になるのですが、前回1年2ヶ月ぶりに136を超えたものが、今度はたったの2ヶ月でまた130を超えてしまいました。

この間の上昇幅にはすごいものがあるのですが、とにかくこれは私の完全な見逃し三振であり、失敗でもあります。

では、「何故、失敗してしまったのか」ということを考えた時に、この騰落Ratioというものを見ていけば、「今年の相場を占えるのではないか」と思ったわけです。

つまり。これは「平常値にやっと戻ってきた」ということでもあるのですが、そのことについて、別の図で具体的に説明させていただきたいと思います。


私自身は2006年に出した書籍で、「騰落Ratioが75前後になったら買っていい」、そして、「130を超えたら売りましょう」ということを書いています。

それは何故かというと、私自身がファンドマネージャーをずっとやってきた経験からくる売買のタイミングや、騰落Ratioのバックテストを実際に10数年間やってみた結果、非常に居心地がいい水準が75だったからです。

もちろん、浮き沈みはありますから間違えることもありますが、でも少し長い目で見ていくと、きちんとプラスが出る可能性が「限りなく高い」と言えると思っています。

同じように130を超えると、それが「このままどんどん上がって行く」ということも考えにくく、下がってしまうという予想から「売り」なのです。

ところが、この75と130という数字を、2007年にあてはめてみると、75で買っても下がるし、130はついていなかったりするので、全く、これが当てはまらなかったわけです。

それでは「2007年に私たちは何を経験した」のでしょうか?

それは、サブプライムなどという訳の分からない言葉が、世界中で猛威をふるい、しかも、その震源地はアメリカなのに飛び火をして、よく見たら、世界中の投資家が売っていたなんてことがあったわけです。

つまり、「これは平常時ではなかった」ということで、やはり、特殊な1年だったといえるでしょう。

ところが、「2008年は」というと、確かに、1月はこの10数年間の中で最も厳しく、その後で1年2ヶ月ぶりに楽観になるというエポックメイキングなことがありましたが、3月・4月というのは極めてノーマルなので、今までのように「75前後になって買えばよかった」のです。

それは要するに、不安とかそういう余分なファクターが「削ぎ落とされてきている」ということになります。

ということは、先ほど冒頭に申し上げた株価の"3つ目の要素"の中の"夢や希望"ではなく"不安と恐怖"一色だった2007年、しかも、パニックにさえ近かったものが、今度からは"資産と収益"という、いわゆる「企業の価値」を調べることで勝てる相場になってきたということです。

そう考えた時に2008年というのは「本当は厳しい相場なのか」というと、決してそんなことはないのです。

騰落Ratioに基づけば、実際にはもう日経平均株価1回目でも1000円ぐらい、2回目でも2000円ぐらいで、合計で3000円分もリターンを取れているので、騰落Ratioが機能し始めたということが極めて大きな意味を持っていると考えることができます。

またご存じの通り、株取引の買いの主体と売りの主体の割合で70%が外国人投資家で、さらに、騰落Ratioの「75だ」「130だ」という数字を動かしている大多数も、また、外国人投資家です。

これが機能しているということは、世界中の投資家が今まで"不安や恐怖"に思っていたことがなくなり始めていると考えていいのではないかということでもあるのです。

去年までは心理の話をする時に"危ないよ"ということを言っていればよかったのですが、今年はそのことに併せて"上昇してしまう"リスクについても考慮しなければなりません。

これらを考える上で、騰落Ratioというものが機能し始めたことが極めて重要だということなのです。

講師紹介
大前研一
株式会社きのしたてるのぶ事務所
代表取締役
木下 晃伸

5月15日放送
「金融リアルタイムライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。
大前研一学長語録
 ブレークスルー経済学
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。

第46回 『技術革新を重視するのは、何故?』

一般に長期の経済成長(供給サイドの潜在的なGDP成長率)は、人口の増加速度に一致することになります。しかし、技術革新が起これば、人口が増加しなくても、経済成長が可能であることが知られています。

この点を説明するために、以下では「ハロッド中立的な技術進歩(つまり、労働増大的な技術進歩)」を中心とした新古典派的な考え方のみについてお話をします。

まず、企業の期待する投資からの実質的な利潤率(=資本コスト)は一定と考えます(こうすると「実質金利」が一定になります)。これは「金利が変化しない」という意味ではなく、以下の式が成り立つということです。

r=i-π
ここで、r:実質金利、i:名目金利、π:期待物価上昇率。

このように考えると、モノ(資本財)からの収益率(つまり、モノ・サイドのみの経済成長率)は一定ということを仮定したことになるので、モノ・サイドと技術進歩は直接的な関係がなくなることになります。

以上から、技術進歩とは「労働生産性の向上」とみることになります。

これは、同量の労働人口であっても労働生産性が向上することにより、供給サイドの潜在的なGDPを増加させることができることになります。

つまり、技術進歩を考慮しない場合、経済成長(供給サイドの潜在的なGDP成長率)は、人口の増加速度に一致するのに対して、技術進歩(労働生産性の向上)を考慮した場合、経済成長率は、人口の増加速度に技術進歩率を加えたものになることを意味します。

したがって、労働生産性が高い場合には人口が減少する時でも(人口の減少速度<技術進歩率)、経済成長を向上させることができることになります。

以上から、日本に限らず先進国では特に「労働生産性」が重要であり、国際比較をする際にも大切な指標になっています。

このような(労働生産性についての)分析を加味することが、ファンダメンタル分析であり、国家間の長期的な経済情勢の比較をする時に使用されます。

例えば、労働生産性が高くなれば「モノ」の値段を下げることができるので、競争力が高まることになります。したがって、長期的な比較ということであれば、当該国の通貨価値は高まることになります。



講師紹介
前田拓生
前田拓生(Takuo Maeda)

ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
著書:「銀行システムの仕組みと理論」大学教育出版
編集後記
 編集後記
事務局 一戸 グローバルマネー・ジャーナル第52号、いかがでしたでしょうか。

購入した株を長期保有するのと、短期間で何度も売買するのと、一体どちらが儲かるのかという議論を時々耳にします。

「どちらが」と聞かれればどちらも儲かることもあれば損することもありますが、一般的に短期は個人にとても不利です。

その理由は、短期売買が情報スピードの勝負だから。

今はインターネット環境が進み、個人投資家と機関投資家の情報格差は縮まったと言われていますがそれでも、「『ここだけの話』として得た情報ですら、自分は100番目に聞いたと思ったほうがいい」と先日、元ファンドマネージャだった知り合いが話してくれました。

短期売買は余資の余資で行う程度にとどめ、例えば「この先の景気はインフレになるのかデフレになるのか」といったもっと大きな視点で市場の動きや企業を見ること、すなわち長期保有を前提にした考え方をする方が、実は短期よりも大きく堅実に個人が運用益を上げられる可能性が高いと言えます。

来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!    

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