2007年の混乱期から抜け出たシグナルとは?
株価の変動というのは3つの要素があると思っています。1つは資産や現金・不動産や有価証券で、2つ目はどれだけ儲かっているのかを表す収益です。
これに加えてもう1つは、株価には夢や希望、不安や恐怖というものが織り交ざってできているということです。
去年などは資産がいくらあっても、収益がどれだけよくても、あまりにもサブプライムに対する不安や恐怖ばかりで、良い会社なのに下がることがありました。
この3番目の要素を「騰落Ratio」というキーワードの中にみることができるのではないかと思っています。
それでは、このことを具体的に説明するために、次の図を見てください。
これは直近の騰落Ratioを表しているものですが、今回の2008年の騰落Ratioには4回ポイントがあるのではないかと思っています。
まず1月22日を見てみますと、騰落Ratioは52.8という数字になっていますが、これは今までで1番小さい数字で、過去最低になります。
これはどういうことかといいますと、騰落Ratioというのは「値上がりしたものを値下がりしたもので割る」ことで出すので、値下がりした分母が大きいということになります。
つまり「株がものすごく下がっている」ということです。
それが今までで1番低いとは「どういうこと」なのでしょうか?
例えば、97年に山一證券や拓銀が破綻したとか、2003年にりそな銀行が国有化になったとか、そういった本当に日本は「どうなってしまうのだろう」という時期がありましたが、その時よりも、現在の状況はそこまで悪くないはずなのに、投資家の心理が悪いせいで株価が下がったわけなのです。
でも「今、本当にそんなに悪いのか」というと、そんなに悪くないので「買いではないか」ということを私は主張していました。
では、「実際、2月27日はどうだったか」というと、翌日の28日の時点では、136だったので数字としてはよく、「私は売りのタイミングではないか」と思ったわけです。
次に、今度は逆に「136というのはどういう数字か」というと、これは1年2ヶ月ぶりに大きい数字です。
この数字は、2006年の12月にまで遡らないと出てこないのであり、それだけ投資家が楽観的になっているので「株価が上がっていった」ということなのです。したがって、「売りではないか」と考えたわけです。
ところが、残念なことに3月に77.8、終値としてその翌日の3月18日には1万1964円という数字が出ています。
この前の1月には過去最低の52という数字が出たので「買いじゃないか」、2月には1年2ヶ月ぶりで136という数字が出たので「売りじゃないか」と。非常にエポックメイキングなことが起きています。
ところが、3月17日の77.8というのをよくご覧いただくと、実は、結構似たような数字があります。
図の真ん中から左側が2007年になりますが、その中にも結構似た数字があるので、私としては「まだ下がるのではないか」と思ってしまったわけなのですが、結果は大外しでした。
しかも、4月22日にまた130になるのですが、前回1年2ヶ月ぶりに136を超えたものが、今度はたったの2ヶ月でまた130を超えてしまいました。
この間の上昇幅にはすごいものがあるのですが、とにかくこれは私の完全な見逃し三振であり、失敗でもあります。
では、「何故、失敗してしまったのか」ということを考えた時に、この騰落Ratioというものを見ていけば、「今年の相場を占えるのではないか」と思ったわけです。
つまり。これは「平常値にやっと戻ってきた」ということでもあるのですが、そのことについて、別の図で具体的に説明させていただきたいと思います。
私自身は2006年に出した書籍で、「騰落Ratioが75前後になったら買っていい」、そして、「130を超えたら売りましょう」ということを書いています。
それは何故かというと、私自身がファンドマネージャーをずっとやってきた経験からくる売買のタイミングや、騰落Ratioのバックテストを実際に10数年間やってみた結果、非常に居心地がいい水準が75だったからです。
もちろん、浮き沈みはありますから間違えることもありますが、でも少し長い目で見ていくと、きちんとプラスが出る可能性が「限りなく高い」と言えると思っています。
同じように130を超えると、それが「このままどんどん上がって行く」ということも考えにくく、下がってしまうという予想から「売り」なのです。
ところが、この75と130という数字を、2007年にあてはめてみると、75で買っても下がるし、130はついていなかったりするので、全く、これが当てはまらなかったわけです。
それでは「2007年に私たちは何を経験した」のでしょうか?
それは、サブプライムなどという訳の分からない言葉が、世界中で猛威をふるい、しかも、その震源地はアメリカなのに飛び火をして、よく見たら、世界中の投資家が売っていたなんてことがあったわけです。
つまり、「これは平常時ではなかった」ということで、やはり、特殊な1年だったといえるでしょう。
ところが、「2008年は」というと、確かに、1月はこの10数年間の中で最も厳しく、その後で1年2ヶ月ぶりに楽観になるというエポックメイキングなことがありましたが、3月・4月というのは極めてノーマルなので、今までのように「75前後になって買えばよかった」のです。
それは要するに、不安とかそういう余分なファクターが「削ぎ落とされてきている」ということになります。
ということは、先ほど冒頭に申し上げた株価の"3つ目の要素"の中の"夢や希望"ではなく"不安と恐怖"一色だった2007年、しかも、パニックにさえ近かったものが、今度からは"資産と収益"という、いわゆる「企業の価値」を調べることで勝てる相場になってきたということです。
そう考えた時に2008年というのは「本当は厳しい相場なのか」というと、決してそんなことはないのです。
騰落Ratioに基づけば、実際にはもう日経平均株価1回目でも1000円ぐらい、2回目でも2000円ぐらいで、合計で3000円分もリターンを取れているので、騰落Ratioが機能し始めたということが極めて大きな意味を持っていると考えることができます。
またご存じの通り、株取引の買いの主体と売りの主体の割合で70%が外国人投資家で、さらに、騰落Ratioの「75だ」「130だ」という数字を動かしている大多数も、また、外国人投資家です。
これが機能しているということは、世界中の投資家が今まで"不安や恐怖"に思っていたことがなくなり始めていると考えていいのではないかということでもあるのです。
去年までは心理の話をする時に"危ないよ"ということを言っていればよかったのですが、今年はそのことに併せて"上昇してしまう"リスクについても考慮しなければなりません。
これらを考える上で、騰落Ratioというものが機能し始めたことが極めて重要だということなのです。
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