もう待ったなしのアメリカ政府!サブプライムを解決へ|株式・資産形成講座メルマガ

  2008/7/2(水)  
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もう待ったなしのアメリカ政府!サブプライムを解決へ

15日、米保険最大手AIGは、マーティン・サリバン最高経営責任者(CEO)の辞任を発表しました。サブプライムローン関連の巨額損失を被った責任を明確化したものとみられています。また米証券大手ゴールドマン・サックスは、17日、米国の銀行はサブプライムローン問題に関連した損失を穴埋めするために、およそ650億ドル(7兆円)の追加資本増強を迫られる可能性を指摘しています。

サブプライム問題によって影響受けるノンバンクの代表例が、今回のAIGのような保 険会社です。しかし、ゴールドマン・サックスの試算によると、AIGのようなノンバ ンクを含まず、バンクだけでも7兆円の追加資本増強が必要ということですから相当 に大きな金額だと言えるでしょう。


これまでの欧米金融機関のサブプライム問題関連の損失、及び増資状況を見てみる と、アブダビ投資などの石油を背景とする資金やシンガポール(GIC、テマセク)、 中国(中国投資公司)の資金によって支えられてきていることがわかります。

しかし今後は、シンガポール・中国勢といった外国も無制限に資金を提供してくれるほどお人よしではないでしょうし、市場から7兆円もの資金を調達することは不可能に近いと私は思います。

私は半年ほど前から常々、サブプライム問題の解決に当たっては、政府が主導するスウェーデン方式しかないと主張してきました。スウェーデン方式とは、90年代商業用ビルが破綻して金融危機に陥ったスウェーデンで採用された方法で、国家の信用を抵当に銀行をエマージェンシー・ルームに収容して救済するという方法です。

これまでも米国政府が自ら動き出さなくては問題が解決されない局面が迫ってきているのを感じていました。今回のサブプライム問題の影響による、欧米銀行の時価総額の落ち込み度合いを見て、一層その確信が深くなっています。

2007年3月と2008年6月の時価総額を比べてみたとき、日本の銀行と比べて欧米の銀行の時価総額の落ち込み度合いはかなり大きくなっています。もともと日本の銀行は時価総額が大きくなかったという側面もありますが、それを差し引いても欧米の銀行の時価総額の落ち込み度合いは、「問題なし」と言えるレベルではないでしょう。


バークレー銀行の時価総額は10兆円強から半減していますし、シティバンクにいたっては時価総額が約30兆円から10兆円になっていますから、半減よりさらに悪い数値になっています。この状況に加えて、これから7兆円もの資本増強が必要だというのですから、政府はいち早く手を打つべく動き出すべきだと私は思います。


●日本の銀行に経営手腕があれば、一流銀行を手に入れるチャンスでもある

20日、三井住友銀行は、英銀大手バークレーズに対し、1000億円規模の出資をする方向で最終調整に入ったと報じていますが、先ほど見たように、苦況に立たされている欧米銀行に対して、日本勢が進出していく絶好のチャンスだと私は思います。

1兆円規模で時価総額が下がっている銀行に対して、わずか1000億円で何の効果があ るのかという見方もできます。しかし、日本の三菱UFJ銀行、みずほ銀行、そして三 井住友銀行などにとっては、欧米銀行の資本が痛んでいるところへ自らの資本を入れ られるという意味で、絶好のチャンスだと私は言いたいのです。

欲を言えば、欧米の銀行が今必要としている金額は、場合によっては兆単位ですから、そのくらいの金額を投資して欲しいという期待はあります。本当に日本の銀行に経営力があれば、兆単位の資金を使っても、欧米の一流銀行をテイクオーバーできるチャンスなのだから決して損な話ではないと思います。

実際には日本の銀行は臆病ですから、1000億円単位でお付き合い程度の資本を入れることで精一杯、というのが現状でしょう。それでも、今回三井住友銀行が出資したバークレー銀行は基本的に良い銀行ですから、これから回復した後、三井住友が出資した1000億円が大きな金額になって帰ってくる可能性はあると思います。

三井住友銀行は、住友銀行時代にゴールドマン・サックスに出資していて、ゴールドマン・サックスの上場後、持ち株を売却して莫大な利益を得たという過去の実績もあります。当時、住友銀行が窮地に陥っている中、この売却益は相当大きなリターンだったと思います。今回のバークレー銀行への出資も、同じような可能性があるかも知れません。

ただ、シティバンクほど中身が傷んでしまっていたら、さすがに手の施しようがなく、かつてのゴールドマン・サックスのような期待をするのは不可能でしょう。

日本の銀行にとってはビジネスチャンスにもなり得る状況ではありますが、欧米銀行の状況は日に日に悪化していると言えるでしょう。さらに状況が進み、本当にもう手の打ちようがない銀行が続出してしまったら、世界の経済に与える影響は計り知れません。特に米国政府は現状を正しく認識し、一早く手を打っていくべきだと強く感じています。

講師紹介
大前研一
ビジネス・ブレークスルー大学院大学学長
大前研一

6月22日放送
「大前ライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。
大前研一学長語録
 ブレークスルー経済学
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。

第51回 『グローバル・マーケットにおける「ローカル」の意味』

現在、先進国のみならず多くの国で資金移動におけるボーダー(国境)がなくなっています。そのため、金融市場はもっともグローバル化が進んだ市場になっています。

このような資金のグローバル化によって、「帰るべき場所が特定されていない(または、帰る必要がない)資金」、つまり、いわゆる「ホームレス・マネー」が生まれました。そして、このホームレス・マネーの資金移動の如何によって、逆に、本体である世界の実物経済が大きく変化してしまうという事態になっています。

今後、この動きが後退することは考えられず、むしろ、さらに進展することが予想されています。

そして、このような金融のグローバル化の進展が、さらに進化してくると、モノや情報といったもののグローバル化が促進されるとともに、「ローカル」という意味が消滅しまうように感じられます。

実際、ローカルなマーケット(証券取引所など)においては「取引ルール」や手数料などのソフトな面がグローバルな競争によって、事実上、「統一される」と思われます。そのような意味ではグローバル・マーケットとして「1つの市場(または寡占的な複数の市場)」になっていくのであれば、国内(ローカル)マーケット自体の存在意義はなくなる可能性があります。

しかし、資金にしてもモノにしても「流れる」ということは、そこに何らかの「差異(違い)」があるからです。

つまり、グローバルなカネやモノを自国(ローカル)に呼び込もうとする時には、ローカルとしての何らかの「(プラスの)差異」が必要なのです。

グローバル・スタンダードというのは、少なくも現時点では、単にアメリカナイズされたものであり、決して「世界の標準」ということではありません。ただ、「ドル」という事実上の世界通貨が、その取引の基準にしているので、「通貨」として「ドル」を認める国(ローカル)にとっては、アメリカナイズされているとはいえ、現状の事実上の「グローバル・スタンダード」を受け入れ、ソフト面での整備をすることが必要になってきます。

しかし「だから」といって、すべてにおいてアメリカナイズされてしまった「ローカル」は、それ自体に魅力はなく、衰退化することになるでしょう。

グローバルな流れがあるからこそ、「ローカル」としての魅力(つまり、これが国家的または民族的等のアイデンティティだったりします)を出していかなければ、今後、世界的な経済競争には勝てないことになります。

米国は「世界通貨」を武器に、事実上のグローバル・スタンダードを作り上げ、これを国家戦略としています。したがって、今後もこの路線を突き進むはずです。そのような中にあって、各国のアイデンティティは否応なくクローズアップされ、強調されることになるでしょう。

以上から、グローバル化が進展すればするほど、「ローカル」の重要性が高まるのであり、「ローカル」としての優位性が資金移動のもっとも大きな要因になってくるでしょう。そのため、「経済」という意味で「カネだけの動き」「収益性」だけを考えるのではなく、「ローカル(つまり、各国・各地域)」そのものを正面から考察することが必要になってきていると思います。



講師紹介
前田拓生
前田拓生(Takuo Maeda)

ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
著書:「銀行システムの仕組みと理論」大学教育出版
編集後記
 編集後記
事務局 一戸 グローバルマネー・ジャーナル第57号、いかがでしたでしょうか。

日本の借金総額をご存知ですか。

よく800兆円という額を耳にしますが、これは国の借金だけです。

国があれば地方があるように、地方にも合計で300兆円の借金があります。

外債を購入する場合、国の信用力は大きな目安となりますが、多くの先進国がAAAである中、日本はこの借金が理由でそれより4ランクも低いAA-。

信用力のある先進国の外債保有率は、その半分以上が海外の投資家や投資機関であるのに対し、日本国債の保有率は何と9割以上が日本人という悲しい結果です。

まさに、「国に頼るな!自衛せよ!!」ですね。

来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!    

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