ロシア市場の下落でみる未来の姿とは?|株式・資産形成講座メルマガ

  2008/8/27(水)  
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ロシア市場の下落でみる未来の姿とは?

ロシア株式市場が下落している本当の理由とは?

ロシアの株式相場がプーチン首相の発言を受け急落していると報じられています。プーチン首相が国内大手の石炭・鉄鋼メーカーの経営方針を激しく批判したことで政府による企業への圧力に対する懸念が強まったことが原因だと言います。

プーチン首相が批判の矛先を向けたのは、ニューヨーク市場にも上場するメチェル社。同社に対し、国内向けよりも安く製品を輸出していることを批判しています。

これまでにもプーチン首相は似たような発言をしたことがありますし、私に言わせれば、今回の件もプーチン首相がいつもやっていることの1つの事例で、これによってロシアの株式市場が大きく下落したとは考えづらいと思います。

実際、ロシアRTSの推移を見てみると、今年の5月から急激に株価が下落しているのがわかります。5月というタイミングは、メドベージェフ大統領が就任した時です。ですから、ロシアの株式市場の下落はプーチン首相による企業圧力への懸念が原因というよりも、むしろ、プーチン首相が大統領から退いたことが原因だったと考える方が自然だと思います。


もう1つ原因として考えられるとすれば、ロシアが英国のBP(ブリティッシュ・ペトロリアム)ともめていることで、ロシアに対して投資家が嫌気を差し始めてきたということだと思います。

英国のBPが50%を出資するロシア第3の石油企業「TNK-BP」をめぐり、ロシア側がBPの権益や資産を奪取する動きを見せています。税務や入管当局による圧力も加わり、BPが派遣したCEOや技術者らが帰国する事態になり、TNK-BP自体が企業解体の危機に追い込まれている状況になっています。

プーチン首相による企業批判というのは、今に始まったことではありません。今回のメチェル社への批判も大げさに受け止める必要はないと私は思います。ロシアの株式市場が下落している本質的な原因は別のところにあり、それを見誤ることがないようにしてもらいたいと思います。


●原油に連動してロシア株価が下落するのは当然だが、心配する必要はない

では、ロシアの株式市場が下落している現状をどのように受け止め、また今後どのような展望を持つべきでしょうか?

エリツィン政権の地方分権政策によって混乱をきたしていたロシアが、ここまで経済復興を成し遂げられたのは、プーチン政権の下で中央集権化を進めた結果、社会が安定し、また資源輸出を中心とした貿易黒字が伸びて財政状況が大幅に改善したためです。

端的に言えば、原油価格の上昇によって経済危機を乗り越えたと言えるロシア経済ですから、今のように原油価格が下落している局面では、同じ程度にロシアの株式市場も下落するのは当然のことだと私は思います。

それでも、かつて地獄を見てきたロシア経済から考えれば、今の状況は特別に問題視するべき状況ではないと言えるでしょう。

ロシアの原油生産施設や機械は古いものが多く、世界的に見ると原油生産価格(コスト)は高いと思います。もしかすると、1バレル当たり2ドル~3ドルでは収まらず、10ドル前後のコストになっているかも知れません。しかし、それでも売値が100ドルですから利益は1バレル当たり90ドルになり、十分に儲かっています。

確かに、今回のプーチン首相のメチェル社への批判は「余計なこと」だったと思います。ただ、プーチン首相は今までも同じように「余計なこと」を言いながらも、ロシアという国をここまで復興させてきたというのも事実です。

目先のニュースに惑わされず、ロシア経済が根ざしている基盤、これまでの経済復興の経緯などから考えれば、現在ロシアの株価は下落を続けていますが、これによってロシア経済が崩壊することはないと私は思っています。


講師紹介
大前研一
ビジネス・ブレークスルー大学院大学学長
大前研一

8月17日放送
「大前ライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。
大前研一学長語録
 ブレークスルー経済学
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。

第58回 『何故、「株式」は長期資産形成になり得るのか?』

「株式を保有する」ということは、保有時点から以降の当該企業の「(残余財産も含めた)利益の分配を受ける権利を得た」ということと同じです。つまり、株式を購入した時点で、それよりも以降の将来利益の全て(の一定割合)を得る権利があることになります。

但し、購入時点以降の「将来における利益」であり、確定しているものではありません。

当該企業が"将来"利益を出すか否かというのは、「利益が出た時」に始めてわかるものであり、その金額を事前に知る人は誰もいないのです(それを当該企業にとっての外部者が事前に知って株式を保有すれば、「インサイダー取引」として罰せられます)

そういう意味では「あやふやなもの」ということにはなりますが、株式会社は(理論的には)すべての企業が「利益の最大化」を目的に営業を行っている以上、景気等の変動があるとしても、通常の経営状態であれば「利益があること」を前提にして取引がなされることになります(但し、倒産するような企業の場合には、将来利益はありませんが、これは「通常」とは異なるため、ここでは割愛します)。

以上から、理論的に「株価」というものは、当該企業の「将来利益の現在価値」になっていると考えられています。

ここで「将来利益」ということになっていますが、理論的には、この「将来」とは「永遠」を意味します。しかし、「将来時点の事象」というのは、長くなればなるほど「不確実性」が高くなるため、その点を考慮して現在価値に引き戻せば、遠い将来の利益価値はほぼ「0(ゼロ)」ということになります。

つまり、株価とは「ある一定期間の将来利益を現在価値に割戻したもの」といえるので、例えば、この先5年くらいの利益を(それぞれ現在価値にして)積み上げたものが「現在の株価」ということになります。

ただ、この「将来の期間(例では5年ですが)」は確定したものではなく、予測する人(つまり、投資家)によってそれぞれ異なります。また、「利益」についてもその予測は違うため、株価の予測は、投資家によってそれぞれ全く違ったものになります。

ところが、このように投資家間で思惑が違うことによって市場で売り買いが生じるのであり、その結果として、株式市場における株価は「適正な価格になっている」と考えられています(アダム・スミスの「(神の)見えざる手」の原理)。

したがって、市場で取引されている「株価」とは、多くの投資家が「適正」と考えている「将来利益を体現しているもの」ということになります。

また、企業利益というものは、企業自身が物価情勢や景気動向などに打ち勝って得るものなので、その点を考慮すれば「株価」は、現時点で判断できる当該企業の将来利益の総額であり、これには将来の物価情勢や景気動向が含まれていることになります。

このように「株価」とは「将来時点で保有している」であろう資産価値に等しいと考えられるので、現時点では使わないものの将来時点で使用するような資金(つまり、「貯蓄」)を、株式購入に充てれば、将来時点で現時点と同じ価値をもった資産を保有することになるのです。

この場合、「将来」という期間は、市場が想定しているものであり、具体的な期間を指していないことには注意が必要です。つまり、安定している経済状態においては、かなり長い期間を予測することが可能ですが、一旦、変動が激しい状態になれば、将来についての予測が不可能になることから、予想できない期間の利益(の現在価値)は剥がれ落ちてしまうため、株価も大きく下落する可能性があります。

したがって、株価は「将来時点を体現化したもの」ではあるものの、将来に対する考え方・認識が日々刻々と変化するので、それに対して常に目を配り、メンテナンスをしていく必要があります。また、場合によっては保有割合を変更せざるを得ないこともあるので、経済状態や政治情勢などに対するニュース等を分析し、対処する能力が大切になります。

講師紹介
前田拓生
前田拓生(Takuo Maeda)

ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
著書:「銀行システムの仕組みと理論」大学教育出版
編集後記
 編集後記
事務局 一戸 グローバルマネー・ジャーナル第64号、いかがでしたでしょうか。

最近にわかに投資勉強会に出席する楽しみが出来、先週は2つの投資勉強会に参加してきました。

一つは毎月1回、色々な投資商品について特性や活用時の注意点などを、講師の体験や実例に即して皆で意見交換しながら学んでいくスタイルのもの。

もう一つは個人で投資実績をあげているアメリカ人の方が主催している、海外投資に関するセミナー(ほぼ全編英語。。)でした。

後者は投資初心者からが対象ということで、話の内容はそれほど難しいものでは無かったのですが、少人数かつ質疑応答形式だったので、いつ当てられてもそれらしい英語で返さなければならないプレッシャーと戦いながらの2時間は個人的に結構ハードでした。

一方で、日本にいながら国を越えて運用先進国の方と資産形成の話ができるのは新鮮で楽しく、とても勉強になりました。

来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!    

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