今年初頭から7月までで"4割"も高騰した原油価格が個人消費を圧迫する
株式市場に、今ものすごく大きな影響を与えているのが原油です。
そこでまず、「原油がどういう動きをしているのか?」を見てみましょう。
原油価格の動きを見ると、今年の頭から7月の頭までで、なんと4割もの上昇を見せています。原油価格の4割上昇が何を意味するかというと...。
端的に言えば、原油を使用して製造する商品の価格も4割上げなければ採算が取れないことになります。すると私たち消費者の「財布が痛む」「個人消費が冷え込む」ということになるわけですね。
そうなると供給者もしくは物を作っている工場は「売れない」、ホテルなどのサービス業も「潤わない」ということになります。そして、国の経済が落ち込む、もしくは予想よりも下ブレてしまい、結果的に株式市場にマイナスの影響を及ぼすということになっていまします。
これが今よく言われている、インフレの大きな要因です。
しかしいま、原油価格の動きに大きな変動が出てきています。
7月までは確かに、右肩上がりで原油価格が上昇していましたが、(7月のピークから比べると)現在は2割も下落。半年かけて4割上がったものが、この1カ月強で「2割も下がる...」というように、かなり大きく乱高下しています。
こうした状況に対する、私の考えを少しお話します。
●7月をピークに原油価格は下降気味!? 今後上がるのか、下がるのか?
私が毎日発行しているメールマガジン『投資脳の作り方 7/8号』に掲載した記事「WTIは前週末3日の終値に比べ3.92ドル安い141.37ドル」において、「120ドルを越えた原油価格水準は明らかに割高であり、その原因は、投機性資金が流入していることにある。一方で逆回転を起こせば、場合によっては1バレル=100ドル割れ、3割下がってもおかしくはないのではないか」と書きました。
原油価格の上昇は、私たちの生活を圧迫します。
現実としては「確かにそうだ」という一方で、株式市場や投資は将来を予想し、その予想に対しての価値がリターンになってくるという仕組みになっていることに注目すると、原油価格が上がると見るのか、下がると見るのかによって、ずいぶん投資対象が変わってくることになります。
ポートフォリオを形成している投資家がいれば、構成する要素が変わってくるでしょう。
もしくは、「今は原油価格が上がっているからダメだ、しかし原油価格が下がっているという投資対象がむしろ投資チャンスに変わる」とも言えるかもしれません。
●世界最大の原油需要国・中国を見れば、原油価格動向の行方が見えてくる!?
原油価格について私は、「まだもう少し下げ落ちがあるだろう」と予想しています。
キーワードとなるのは「中国」であり、その理由は、中国が"世界最大の原油需要国"だからという単純なものです。
価格というものは、消費者と供給者の差です。
使いたい人がたくさんいるのに供給が少なければ価格は上がりますし、逆に使う人が少なく供給が多ければ価格は下がる。
ですから世界最大の原油需要国である中国の動きをウオッチすることにより、原油価格の動きが予測可能なのではないかと私は考えています。
そこで今年7月初頭に、実際に中国を訪問してみました。
ここで簡単に、私が実際にこの目で見た「中国の現状」をご紹介しましょう。
まだ北京オリンピック前でしたが、四川地震の影響もあり、「国家的な盛り上がりに欠けていた」というのが正直な感想です。
個人的な感想ではなく、具体的なデータでそれを検証してみましょう。使うのは、北京市にどれだけの観光客がやってきたかというデータです。
2005年5月には、日本から北京市を訪れた観光客(ビジネスパースン含む)は2万9958人だったのに対して、2008年5月には3万928人とほとんど変わりません。
実はこの2005年5月というのは、その前月の4月に反日デモがあった時期。気軽に観光に訪れるような雰囲気ではありませんでした。
北京オリンピックを目前に控え、経済発展が著しいのにも関わらず、大変だった2005年のレベルと同じというのは、実に大変な問題です。
それくらい中国というのは本当に苦しい、人が来ない。
その原因は、主に2つあるのではないでしょうか。
まず一つ目が、日本でも大騒動になった毒入り餃子事件に代表される「食の安全への懸念」。
そして、もう一つがチベット自治区の紛争をはじめとする「治安の不安定さ」。こういうことが中国を訪れようという気持ちを無くさせるのではないでしょうか。
データとして見てしまうと、いろいろな媒体でも書かれているとおり「中国は本当に大丈夫なのか?」という感を強くします。
北京オリンピックがこれから盛り上がっていく時期でもこんな状態なのに、「もしオリンピックが終了したらどうなってしまうのだろう」と思われても仕方がないのではないでしょうか。
そして北京とずいぶん違ったのが、経済の中心地・上海でした。
オフィス街は、ほとんど日本の丸の内と同じで、金融の中心企業をはじめ大手企業が集結。現地の人が、「上海は大阪、北京は東京のようなイメージ」と言うとおり、経済の勃興という意味では、中国では上海の経済復興のほうが大きいと思います。
そして現地でいろいろな方々とディスカッションを重ねる中で、原油価格、中国の状況、日本を含めた世界中の今後の投資の行方を知るうえで、非常に意義のある話を聞くことができました。
※来週の後半に続く
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