世界一の原油需要国を訪れて見えた、これからの原油動向【後編】|株式・資産形成講座メルマガ

  2008/9/10(水)  
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世界一の原油需要国を訪れて見えた、これからの原油動向【後編】

中国政府によるガソリンおよび電気価格の値上げで「原油価格は下がる?」

ディスカッションを行った一人が、申銀萬国証券のストラテジスト、ジョージ・アン氏。 申銀萬国証券は、大手証券会社の一角を占め、特にアン氏が所属するリサーチチームは、「機関投資家ランキング」でも4年連続トップクラスの証券会社として知られています。 中国でもニーズが高く、非常に多くの投資家から意見を求められる立場にある人です。

そのアン氏といろいろ議論をした中で、原油動向に関して非常に大きいニュースがありましたのでご報告します。それが、「中国政府によるガソリン価格引き上げ」というニュースです。

昨今の情勢ではそんなの当たり前じゃないかと思われる方も、たぶん多いと思います。 日経新聞でも7面くらいに掲載のそれほど大きな記事ではなく、日本ではあまり注目されておりません。しかし、ジョージ・アン氏が「日本では騒がれていないのか!?」と驚いていたくらい、中国では大きなニュースとして捉えられています。 そして私は、このニュースが「原油価格を引き下げるのではないか?」と考えています。

ここでみなさんにご注目いただきたいのは、「ガソリン価格だけではなく、電気代も値上げしたのは今回初めてだ」ということです。

日本では、販売店や事業者ごとにガソリン価格が異なりますが、中国では「政府が電気料金やガソリン価格を政府が決めている」という明らかな違いがあります。  中国は経済発展を進めるために、世界中から優良な会社、人、金を引きつけたいと考えています。その方策の一つとして彼らは、ガソリン価格や電気代金を世界の市場よりも下げるという道を選びました。

 例えば、私が日本で工場を作ろうと考えている経営者だとしましょう。 仮に日本で1バレル=120ドルだとすると、その原油価格がコストに跳ね返る。しかし電気代金が安いということは、言うなれば原油価格が半分くらいで済むということです。  コストの高い日本に工場を建てるのか、安い中国に建てるのか。 答えはすぐに出ますよね? そういう形で世界の工場として発展を遂げる。そして工場がどんどん来るから道路を作ろう、建設労働者が住むためのマンションを作ろう、ショッピングセンターを作ろうなどとインフラ整備をどんどん行うことで盛り上がってきたのが、今までの中国経済でした。

本来なら原油価格と同じだけ、電気代金も掛かります。 例えば日本では、原油価格の高騰により、東京電力をはじめとする電力会社は大赤字になってしまいました。しかし中国では、実際には電力会社は赤字ですが、電気料金を引き下げるために中国政府が財政補助をしています。  だから原油価格が高騰しても、そこから派生してできる電気やガソリンの価格を低く抑えることが可能となっていたのです。

 しかし今回、その中国政府がガソリンや電気の価格を上げます。 その背景に何があるのでしょうか?


●原油価格が上がれば投資が増える、下がれば投機家の資金が逆回転を起こす?

 これからも財政補助をどんどんしてくれるだろうと考えれば、原油価格は上がるという予測が成り立ちます。  電力料金を安くしようとする時に原油価格が上がっても、中国政府が財政補助をする限りは、原油価格がどれだけ上がってもいい。そうすると投機家は、原油価格の上昇を予想して、原油価格にどんどん投資していくというわけですね。  

 しかし原油価格の上昇に伴い、電気料金も上がるとなれば財政補助が減るかもしれない。  そうすると...。今まで原油価格が高騰する理由の一つであった、中国という世界最大の原油需要国の原油使用量が減る可能性があります。そして財政補助が減ることにより、今まで投機家が使っていた資金が逆回転を起こすかもしれません。


 中国はいま、自分たちの政策によって原油価格を引き下げようとしています。 7月1日からスタートしたこの政策のおかげか、原油価格は7月をピークに下降気味です。  現時点ではそうなっていますが、もちろん予測ですから、今後どうなるかはまだ判りません。 しかし私は、中国の現状を見ていると「原油価格はまだまだ下がる」という考えを、現時点で変える必要は無いと思っています。

 もしも、いま資源価格に投資をしているのであれば、それはいったん資金を引き上げる必要があるかもしれません。原油価格が上がっていく時に資源関連株が上がっていくのであれば、その逆に原油価格とともに資源関連株も下がっていくからです。 一方で原油価格が下がると予想するのであれば、今まで原油価格が上がっているためマイナスになっていた産業や国が投資対象として浮上してくると考えることもできるでしょう。


●明確な意思と政策のもと、国家総がかりで原油価格のコントロールを目指す中国政府

 ただし、こういう話をしても「本当か?」と思う方は多いでしょう。 そこで現地取材を通して得た、一つの事例をご紹介したいと思います。

 新聞報道を読むと、新興国、特に原油を輸入している国はインフレに悩まされて、価格がどんどん上がっているというイメージが強いと思います。しかし、よくよく見ると価格が下がっているものもあります。

 その一つが、豚肉。3カ月くらい前は約19元(1元=約15円)だったものが、今は16.72元まで下がっています。  逆に高騰しているのが、牛乳で13.90元。中国と日本のおおよその貨幣価値の差は5倍くらいありますから、私たちの貨幣価値からすると1000円で買っているようなイメージです。

 なぜ豚肉は下がって、牛乳は高騰しているのでしょうか。 そこには中国政府当局の動きがあります。 牛乳は、オーストラリアの乳価などの影響があって、なかなか中国政府ではコントロールできません。豚肉の加工食品は、パームオイルをマレーシアから輸入して使いますが、価格統制をするためにマレーシアからの輸入を少し減らしました。パームオイルを引き下げることで、さまざまな食品価格が下がりはじめたのです。

 豚肉では、需要を落とすことにより価格の下落に成功しました、 そして同じことを原油でもやろうとしているのではないか? それが現在の原油価格の動向から考えられることです。  今回の北京オリンピックでも数カ月も前から、開会式の8月8日の降水確率は40数%だと言われていました。会場の鳥の巣は、雨が降ったら使えません。そこで中国政府は、1100発にものぼるロケットを発射して雲を雨散霧消させました。

 天気ですらコントロールしようとするのが中国人の良い所であり、日本人からすると、そこまでやるのかというイメージを抱いてしまいます。  同じように、人口10億人超の国家の物事をコントロールしようという意思が、もしも原油価格動向に向かうならば、そこに重大な影響を及ぼすのではないか。 それが現時点における、私の仮説です。

講師紹介
大前研一
株式会社きのしたてるのぶ事務所
代表取締役
木下 晃伸

新刊著書:「儲かる会社はこうして作れ! 1000社徹底取材でわかった「企業を強くする4つの条件」」 講談社 (2008/9/2)

8月20日放送
「金融リアルタイムライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。
大前研一学長語録
 ブレークスルー経済学
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。

第60回 『「日本経済に大切なこと」って、何?』

福田首相辞任によって自民党の総裁選に注目が集まっています。将来的にどのようになるかは不明ですが、現在のところ、この総裁選で選ばれた人が次期首相になります。

この意味では、日本経済にとって「最も重要な事柄」といえます。

論点としては以下の通りです(代表的なものだけ・・・)。

・景気浮上のために財政拡大政策を行うべき
・財政を健全化させるために税制の包括的な改革が必要
・改革を止めてはいけない

論点のそれぞれは「その通り」なのですが、トータルにすると「うまく行きそうにない」という感じです。

「景気浮上」は重要ですが、そのために「国債を発行する」となると財政的な問題がクローズアップされ、国際的にも理解を得ることができないというだけではなく、「持続的な経済成長」という観点からも疑問と思われます。

といって「増税」となれば、そうでなくても景気が悪化しているところであり、ここで「税を上げる」となると日本経済に対して「とどめを刺す」に近い状態になる可能性があります。そう遠くない将来においては「消費税の引き上げ」も「止むなし」と思われるものの、その時期が「今」なのかが問われそうです。

また、「改革」は重要ですが、小さな政府にしたことで、今、いろいろなところに歪も出てきています。特に、社会保障関係および教育関係における改革は「弱い者いじめ」「削りやすいところを削減した」という感が強く、「ここから削減すべきだったのか」という疑問も残ります。

「景気浮上」も「健全財政」も「改革」も「必要ないのか」というと、そうではなく、当然、全てをやらないといけないのですが、優先順位と具体的な方法、それぞれの関連をしっかりと議論し、説明した上で、最終的には「国民のために」という観点で政策を実施してほしいと思います。

今、日本には1500兆円を超える家計金融資産があります。そして、大半が「預金」として保有しています。つまり、「おカネ」のままで保有しているのです。おカネのままなので いつでも消費に回るはずであり、その一部でも消費に回るような施策があれば、景気は大きく浮上するはずです。

消費に回らないもっとも大きな理由は、おそらく「将来不安」だと思います。これは小泉改革の歪(不安を増幅させた社会保障改革など)という面があるのと同時に、いつまで経っても明るさの見えない景気停滞があるのだと考えています。

このような中、財政によって「呼び水」を出すことが必要という議論から、財政拡大政策を主張している向きもありますが、この「呼び水」の部分さえ、(財政健全化の観点で)将来不安を"呼んで"しまいます。

したがって、国民に「消費させるメカニズム」を考える必要があるのであり、その部分の議論を真剣にしてほしいと思います。

家計消費はGDPにおいてもっとも大きな部分を占めている上に、波及効果も高いので、この部分を拡大させる施策は政策効果が高いといえます。

国民に消費させるためには、「安心」「安全」な生活が必要なのであり、これらをキーワードにして議論をしていただきたいと思います。

講師紹介
前田拓生
前田拓生(Takuo Maeda)

ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
著書:「銀行システムの仕組みと理論」大学教育出版
編集後記
 編集後記
事務局 一戸 グローバルマネー・ジャーナル第66号、いかがでしたでしょうか。

「今や投資信託は上場企業数よりも多い」とは耳慣れた言葉ですが、その中で何を買うのかが決まらず、結局投資が始められていないと言う方をたまに見かけます。

友人に誘われてたまたま行った投資セミナーで数十年前から数年前までのリターンを聞かされ(直近は成績悪いので向こうも言わない)、小額から始められるからと気軽に申し込んだものの思うようなリターンも得られず、また購入前に十分その投資信託の特徴を知りもせず買ったので今が我慢のし時なのか分からず結局損をしてしまうような方も少なくありません。

投資初心者が色々な投資観点から商品を吟味することは難しいと思いますが、だからと言って誰かに勧められるがままに購入するのは避けていただきたいところです。

例えばある投資信託を検討するときに、同じようなリスクリターンを持つ他の投資信託が今年どの程度のパフォーマンスを出しているのかをモーニングスターのサイトを使って比較するなど、初心者は初心者なりに目利きになろうとすることが必要だと思っています。

仮に損をしようと悔いの無い損を心がけることが次の投資をプラスにする鍵ではないでしょうか。    

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