銀行破たんチェックテスト合格も、懸念される米国ハイパーインフレへの道|株式・資産形成講座メルマガ

  2009/4/22(水)  
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銀行破たんチェックテスト合格も、懸念される米国ハイパーインフレへの道

回復の兆しを見せつつある米経済だが、ハイパーインフレを警戒すべき

5日、ガイトナー米財務長官は経営陣の交代が必要なら実行すると述べ、公的資金を注入した金融機関に追加支援を行う場合、トップの更迭を含むリストラを条件とすると述べました。

具体的にはトップの年収上限を50万ドルに定めたり、公的資金を注入した金融機関の経営陣を更迭したり、要するに国が殺生与奪の権限を持つということです。これは、AIGやメリルリンチのトップが高給をとっていたこと、また破格のボーナスを支給していたことに対する米国民の怒りを鎮静化させる役割を狙っているのでしょう。

ただ今の米政府には、より大きな憂慮すべき問題があると私は思っています。4月6日号のBusinessWeek誌では、特に今年になってから米連銀が保有している資産額が急激に膨らんでいると報じています。確かにこの10年の推移では、01年から07年までの米連銀の保有資産額は100兆円にも満たない額でしたが、それが08年に約200兆円に達し、09年には400兆円に達する勢いを見せています。爆発的な伸びだと言えるでしょう。

私が懸念しているのは、これだけ莫大な額のお金が市場に出回ってしまうと、ハイパーインフレになる可能性があるという点です。現在のところ米政府の動きを見ていると、とにかく今は市場をお金でジャブジャブにして、日本が10年かかったことを一気に実行して今の状況を打開することしか考えていないように見えます。

市場にお金が溢れ、融資も活発化してくれば、米国民の気質から考えると非常に危険な状況になると私は思います。例えるなら、これから先は道路のあちこちに滑りやすいバナナが撒かれている中を進むような状態です。

景気が回復すること自体は良いことですが、実際に回復してきたときにどのような形で自分のスピードをコントロールできるのか、ということが問題になるでしょう。タイミングを見計らって市場から資金を引き上げなくてはいけませんが、そのタイミングは非常に難しいと思います。今、米政府は必死に病気を治すことだけに専念しているようですが、回復した後で別の問題が浮上してくる可能性について理解しておくべきだと思います。


●市場に好材料になった「ストレス・テスト」と「ウェルズ・ファーゴの好決算」

政府による必死の回復手術を断行中といった米経済ですが、株式市場の上昇を見ても、最悪期を脱し回復の兆しが見え始めていると言っても良いと思います。

市場が米経済に対する好感を示す1つの材料となったのが、政府が銀行に対して実施した「ストレス・テスト」です。これは、各銀行がこれから想定される事態に耐えられるかどうかについて、政府が1つ1つ確かめるという「テスト」です。

具体的には、「もし貸出先の半数くらいの債権が滞ったらどうなるのか?」といったことなどを次々と仮定して、それぞれに対応できるのかどうか銀行に圧力(ストレス)をかけてみて、破綻する要素がないかどうかをチェックしたということです。その結果、現存する殆どの銀行が今後生き残れると政府が判断したのです。

もう1つ市場にとって好材料だったのが、米金融大手ウェルズ・ファーゴの好決算の発表です。9日、ウェルズ・ファーゴは2009年1-3月期決算で四半期としては過去最高の30億ドル(約3,000億円)の純利益を計上する見通しを明らかにしています。

バンクオブアメリカがメリルリンチを買収した後で共倒れしてしまったように、ウェルズ・ファーゴがワコビアを買収したときには同じ轍を踏むのではないかと懸念してしまいましたが、問題はなく安心しました。



ウェルズ・ファーゴの純損益の推移を見ると、ワコビアを買収後の昨年の第3四半期にはワコビアが多額の損失を計上していますが、それ以降は目立って足を引っ張られている様子はありません。今期はワコビアの損失は殆どなく、ウェルズ・ファーゴの利益がそのまま純利益となって3,000億円の過去最高益となっています。

私と同じように、当初は市場もウェルズ・ファーゴの破綻を警戒していたのでしょうから、今回の好決算は市場を引き上げる大きな要因になったと思います。

このように回復の兆しを見せつつある米経済は、日本とは違った特徴を見せ始めています。4月6日号のBusinessWeek誌によると、銀行の中にはさっそく4.9%もの預金金利を提示して顧客獲得に乗り出しているところもあるようです。無条件ではなく、デビットカードで最初の1ヶ月、10品以上のショッピングをした上で、数百万円以上の預金をしてくれた場合といった条件はあるようですが、全てオンラインで完結するサイバー店舗だから出来ることを上手に活用していると思います。自由競争の国・米国らしい方法です。

今の米国の状況、今後の展開を総括すれば、最悪期を脱して回復の兆しを見せつつありますが、まだ数ヶ月は落ち込む可能性が高いと私は見ています。ただ投資家にとっては今が投資のチャンスでしょうから、実態経済は落ちつつあっても、もっと早いタイミングで市場の買いが回ってくると思います。

政府による銀行のストレス・テストが正当なものであれば、米国という国家が破綻するという最悪の事態になることは避けられそうです。ここで米政府の想定を覆されてしまうと本当に取り返しのつかない事態を招いてしまいますから、そのような事態に陥らないことを祈るばかりです。


講師紹介
大前研一
ビジネス・ブレークスルー大学院大学学長
大前研一

4月12日放送
「大前ライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。
大前研一学長語録
 ブレークスルー経済学
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。

第91回 『「長期運用する」といっても市場全体が下がれば・・・』

最近の株式市場は、たまに大きく乱高下することはありますが、少し前に比べれば、かなりおとなしい感じになってきています。このまま小動きを続け、徐々に上昇してくれれば良いのですが、まだまだ、そう簡単ではないようにも思います。

とはいえ、個人投資家の場合、基本的には「株を買って保有している」という人が多いので、上昇方向に対しては利益が出るものの、下落方向には弱い体質になっています。したがって、「上がってほしい」と祈ることになりますが、相場ですから、常に上昇とはいきません。

そこで「ヘッジ」という方法があります。

最近は金融規制の緩和により、先物やオプションがかなり手軽にできるようになっているので「ヘッジ」がしやすくなっています。といっても、やったことがない人にとっては大変ですよね。ここでは紙面の都合もあるので、完全マスターとまではいきませんが、このような時期だけに、基本的な考え方だけはお話ししたいと思います。

先ほどの記述どおり、通常は「上げ」に対しては問題ないと思いますから、「下げ方向に対するヘッジ」についてお話します。

銘柄によっても違いがあり、当てはまらない時もありますが、通常、普通の銘柄であれば、日経平均やTOPIXが下がった日には持ち株の時価総額も減っている場合が多いと思います。ここでは、一応、連動性があるとして話を進めます。

例えば、自分の保有している「金融資産」が3,000万円あったとします。しかし、この資産の全てが日経平均等の指数に連動するような資産(つまり、株式や株式投資信託など)ということはないですよね。債券や預金などというものも金融資産であり、これらは日経平均が変動したからといって時価総額が変わるということは、あまり考えられません。そうすると、このような債券や預金はヘッジをする必要がないということになります。

ただ、外貨資産については、為替変動によって時価総額が変動するので、その場合、本来はヘッジをする必要があるかもしれません。ヘッジの方法としてはFX(外国為替証拠金取引)などによって行うことが可能なのですが、といって、いろいろなヘッジの方法を一緒にお話するとよくわからないことになるでしょうから、ここでは「日経平均等の指数に連動する資産(以下、「株価連動性資産」)のみについてのヘッジを考えます。

ということで、金融資産の内、株価連動性資産の時価総額を、まずは、自分で把握するようにしてください。株式であれば「今の株価×株数」ですし、投資信託であれば「現在の基準価額×口数」により、現金化した時の金額がわかるはずです。これが自分の現在保有する株価連動性資産の時価総額になります。

その金額が、例えば、2,000万円だったとします。

このような計算を毎日、または、定期的に計算をするようにしてください。そして、その計算をする日(毎日であれば毎日、週末の金曜日であれば当該金曜日)の日経平均やTOPIXを記録しておいてください。

ここである程度の期間、上記のような行動をしてデータを集めてみると、日経平均が10%下がった時に、自分の保有する株価連動性資産が1,900万円になり、日経平均が10%上がると2,100万円になるというような結果になっていたとします。

ということは、日経平均が20%下落すると予想される場合には、自分の株価連動性資産は200万円くらい損をするであろうことが予想できます。この場合、個別銘柄を売って対応するとなると「どの銘柄をどの程度売却するのか」「投資信託をどうするのか」など難しい選択をしなくてはいけないことになります。

であれば、現有の自分の資産はそのままにしておいて、日経平均が20%下落した時に200万円利益が出るように仕組むことができれば、個別銘柄や投資信託を売る必要がなくなります。

そこで、例えば「日経225のプット・オプションの買い」であれば、当然、理論通りにはなりませんが、日経平均が下がれば逆に利益を発生させることができます。また、オプション1枚は日経平均の1,000倍に該当するので、プット・オプション1枚購入すれば、現在日経平均が9,000円くらいですから、日経平均が20%下落した場合、理論的には180万円の利益を生むことができます。

但し、オプションの場合、行使価格等の関係で完全には理論通りにはなりませんし、また、「プレミアム」というオプションの権利料に当たる部分が多額であれば、その分、利益が減少することになります。

その他、実際にオプションを使ってヘッジを行う場合には、注意すべき点(時間的価値の減少や市場のボラティリティが高い場合にはプレミアムが高くなるなど)が多々ありますが、その点を考慮すれば、保有資産そのものを云々することなく、市場の下落による損失を、ある程度、カバーできることになります。

上記は、「例えば」ということで、保有している株価連動性資産が日経平均に連動しているものとして記述しましたが、日経平均では規則性はないものの、TOPIX、または、ジャスダック指数などに連動する場合もあります。そうであれば、自分の資産に連動する指数を原資産とするオプションなどを使用する必要があります。また、この例のように、株価指数にきっちりと規則的に上下することは稀ですし、また、期間によっても連動率が異なることありますから、そこは臨機応変に調整をする必要があります。

とはいえ、このようなヘッジを行えば、保有資産の動きと株価指数の動きとの関係を常に確認しておくことにより、後は株価指数の先行きを考えるだけで済みます。個別銘柄の場合にはそれぞれ独自の動きをする上に、マイナーな銘柄の場合には、アナリストコメントなどもないので、自分ひとりで予測する必要があることから、予想するのは極めて困難な作業になります。しかし、日経平均のような株価指数の場合、予想しているエコノミストやアナリストも多いので、個別銘柄ほど先行きを予想するのは難しくないといえます。また、保有銘柄の予測となると、複数銘柄をそれぞれ考慮する必要がありますが、株価指数でヘッジをするのであれば、たった一つの指標(日経平均やTOPIXなど)だけを観測・予測するだけでOKということになります。

ここではオプションを取り上げましたが、その他に先物もありますし、ETFの空売りでもヘッジは可能です(少額の場合には、日経225minなどもあります)。

現状の相場展開は、乱高下が激しい状態も予想されますが、優良と思わる銘柄が近年になく安く、しかも、多数存在しています。そういうことから資産形成という意味で、これらを今のうちに購入し、長期で保有というのであれば、非常に良い時期だと思います。それだけに、ヘッジの方法をしっかりと身につけるべきだと思いますので、是非、研究していただきたいと思います。


講師紹介
前田拓生
前田拓生(Takuo Maeda)

ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
著書:「銀行システムの仕組みと理論」大学教育出版
編集後記
 編集後記
事務局 一戸
グローバルマネー・ジャーナル第97号、いかがでしたでしょうか。

今年は私の地元横浜で開港150周年記念博が開かれます。

どの出展企業も趣向を凝らしたパビリオンを準備しているようでしたが、私の見た広告では横浜創業の企業として日産が大きく取り上げられていました。

経済危機により大きな影響を受けている自動車業界ですが、エコカーに力を入れる同社パビリオンの目玉もやはりエコカー。

ピボ2というその車は、運転手が数秒間目を閉じると内蔵ロボットが話しかけてくれたり、車輪部分を残して360度回転が出来たりと、遊び心と実用性が詰まっている様子。

車庫入れの苦手なドライバーもこれなら安心といった感じでしょうか。

来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!    

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