全国消費者物価指数と小売業販売額を読み解くと不景気ではあるが、まだ不況ではない!?
よく「不景気の株高」と言われますが、みなさん誤解して使われる場合が多いようです。
「不景気の株高」は確かにありますが、「不況時の株高」というものはありません。不景気と不況は、違うものだからです。
不況は、それこそ職も含めて何も無いという時のこと。1929年、米国の恐慌当時も株が暴落したように(その後もちろん上がりましたが)、不況の時には株価が上がりません。
しかし不景気というのは、贅沢を言わなければまだ仕事もあるし、いろいろなセーフティーネットが機能していて、ルールも守られているという状況のことをいいます(不況になると、そういったものも機能しなくなります)。
繰り返しになりますが、不景気の株高はありますが、不況の株高はありません。
今はまだ不景気ですが、これがもっと悪くなり不況になった時には、株価も上がりようが無いので要注意でしょう。
しかし今はまだ、不況というような状態には至っていません。それを示す一つのポイントが、「全国消費者物価指数(除く生鮮食品)」です。
過去、全国消費者物価指数は100を越えるどころかマイナス、つまり、デフレ傾向であると言われていましたが、現状ではそれが100を越えています。物価は横ばいではありますが、「物が売れなくなる」「デフレ傾向に陥る」というところまでは、まだ行っていません。
ですから今は不景気ではあるが、不況とまでは言えない状況です。
ここから在庫がどんどん積み上がり生産調整がさらに続き、物価がどんどん下がっていくような状況になると少し危険だと思います。そんな時に株が上がると思って買ってしまうと、さらに下がるところを買ってしまうので要注意です。
まだ不況までは行っていないという、もう一つの裏付けが「小売業販売額」です。
コンビニエンスストアがtaspo効果で売り上げが伸びたと言われますが、(以前に比べると伸びてはいるものの)現在は伸びが鈍化しています。そして消費に関してはコンビニエンスストアの一人勝ち状況であり、百貨店は高額商品が売れない、スーパーマーケットも売上が落ちているという状況になっています。
みなさんも株式投資に関して、食品や医薬品など「ディフェンシブストック」という言葉を聞いたことがあると思います。
しかし今や医薬品業界は、海外進出により海外の売上比率が5割を超えており、例えばエーザイは6割超、武田薬品工業は5割超といった具合です(会社四季報調べ)。そうなると為替の影響を受けるので、もう医薬品はディフェンシブだとは言えなくなっています。
そして食品も同じです。
食料品を買うというと、スーパーマーケットで素材を買って自分で調理して食べるというイメージが一般的だと思います。しかし単身者の若い人などは、コンビニエンスストアの弁当や出来合いの惣菜で済ませてしまうことも多く、そのあたりの感覚が変わってきている可能性があります。ディフェンシブと言った時に、これまで言われていた通常の食品メーカーよりは、コンビニエンスストアにお弁当を卸している会社のほうが業績は伸びる可能性があるということですね。
内需関連株などにおいても「何がディフェンシブか?」という見方は変わってきています。そのあたりも少し世の中の流れに合わせて、過去の話を鵜呑みにせず、今の時代に合うような選び方を是非心がけていただきたいと思います。
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