通貨の実効相場の動きから、新たな相場の転換期を読む|株式・資産形成講座メルマガ

  2009/6/17(水)  
最新・最強・最高クオリティの
Message
第104回目発行!株式・資産形成講座メルマガです。
メルマガをご覧の皆様、こんにちは!
ビジネス・ブレークスルー 株式・資産形成講座事務局の一戸です。
このメルマガでは、皆さんの資産形成に役立つ情報を、大前研一ならびにプロとして活躍している 一流講師陣の視点から、毎週リアルタイムにお届けしていきます。
あなたの理想とする資産運用、資産形成を実現するためのとっておき情報を、どうぞご覧ください。

本文タイトル
通貨の実効相場の動きから、新たな相場の転換期を読む

実効相場の推移から、「底値を打ち、新たな相場が始まっている」のが判る!?

通貨に関しては、円相場で言えば、ドル円相場、ユーロ円相場、豪ドル円相場などさまざまなプライスが立っており、それを加重平均したものが「実効相場」です。 簡単に言うと、その通貨の総合的な価値と言ってもいいかもしれません。 ドル、円、ユーロ、豪ドル、スイスフランなどの各通貨を、2003年初頭を100として揃え、そこからどういう動きをしたかという「実効相場の推移」を見てみましょう。


いちばん判りやすいのは、豪ドル相場です。 100からスタートし、相当に買い上げられ、いわば"豪ドル高バブル"といえる状態になりました。そしてその後、昨年8月から10月にかけて"ストン!"と直線的に下降し、ちょうど100のところまで落ちています。それまでの相場を全部いっぺんに吐き出した後、今年3月までで底値を固め、そしてまた豪ドル高に動き始めているわけです。 落ち方も急だった分、再度の上昇も急激な動きです。 この動きが、もし新たな相場のスタートであり、その前提が「緩やかな景気持ち直し」だとすると、この上昇の動きは「少し急すぎる」「もう少し緩やかな上昇でもいいのではないか」という気がします。

とはいえ、金利の動きからすると、2003年を底とする一連の相場は、リーマンショックの混乱の中(今年3月まで)でひとまず終わり、現在はすでに新しい相場が始まっていると考えた方がいいのかもしれません。つまり、2003年以降、景気拡大、株価上昇などを背景に金融政策が引き締め方向に向かいました。そこがある意味では、「円安・ドル安、その他通貨上昇、の出発点であった」と考えられますが、現在はその相場の延長ではなく、別の、新たな相場が始まっているとみた方が良いと思うのです。

同様に100からスタートした円は、一貫して円安基調でしたが、サブプライム問題以後は円が反発して、最後にはかなり円高になっていきました。円高に至るピッチが相当に急であり、レベルとしても少し円高が行き過ぎたということだと思います。 その反動で円安方向に調整して、いまは少し落ち着いている状況にあるのだと思います。

そして同じく100からスタートして、格差がまだ広がったままに見えるのが、ドルとユーロですが、ユーロが依然として高止まりしていて、ドルが安いという状態です。 では、ここからまた、さらにドル安に行くのでしょうか? 金利の動きも重要ですが、金利差がこれだけ開いているのに、まだ調整が終わっていないとみるよりも、景気動向や景気格差が米国に有利に働いていく可能性も高いので、やはり「もう少し縮まる方向に動く」、つまり「ユーロ安ドル高に動く」と考える方が妥当なのではないでしょうか。


■10年国債利回りの金利差から、ドル円相場およびドルユーロ相場の今後を読み解く!


米国と日本それぞれの国債利回りを10年債ベースで金利差をとったデータの推移と、ドル円相場の推移を重ねてみると、きれいに相関しているのがわかります。 そうはいうものの、金融市場の混乱により、金利差だけではなかなか動かない状況になっており、ところどころブレもあります。特に最近はブレが大きくなっていますが、おおむね、きれいな相関関係を示す動きになってきているようです。

ドル円相場に関して言えば、10年債の利回りを考えてみた場合に、「米国の長期金利のほうが日本の長期金利よりは上昇するであろう」と想定されます。

したがって金利差は、例えば、仮に米国の利回りが3.5、日本1.5という形になれば2%になり、ドル円相場では、100~105円ということになってくるかもしれません。 少なくともアメリカの長期金利がどんどん低下し、金利差がどんどん縮小する、あるいは、(景気がこういう状況ですから、少し考えにくいですが)日本の長期金利がどんどん上昇するようなことがなければ、円高ドル安に向かうことは考えにくい。そうなると「むしろ緩やかにドル高、円安」になるのではないでしょうか。


ドルとユーロの力関係にも、同じようなことが言えると思います。 ドイツと米国の10年国債利回りを比べた場合、まだドイツのほうが若干高いので、なかなか金利差が逆転して「ドル金利が高い状態(つまり、金利差においてゼロより下)にいってくれない」というのが現状です。 金利差を示す線がゼロより下に行けば、米国の長期金利が欧州の長期金利を上回る状態ということですから、そうなればおそらく、ユーロドル相場がユーロ安ドル高方向に行くということになると思うのです。しかし、そこがまだなかなか見えていないのが現状です。

米国の景気が明確に持ち直していくとすると、量的金融緩和やゼロ金利など現在行っているFRB(米連邦準備制度理事会)の政策も、少し変化し始めるのではないでしょうか。 それが見え始める段階では、長期金利も上昇しますから、それによって欧州と米国の長期金利差がより明確に逆転することになるでしょう。そうすると、ユーロドル相場がドル高方向に行く可能性も考えられます。


講師紹介
大前研一
ドイツ銀行グループ ドイツ証券
シニア為替ストラテジスト
深谷 幸司

5月22日放送
「金融リアルタイムライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。
大前研一学長語録
 ブレークスルー経済学
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。

第98回 『「長期運用は株式が最も有利」って本当?!?!』

いろいろなところで「株式はインフレに強いから、長期資産形成にとって必要不可欠」という意味の話が聞かれます。とはいえ、一方で「株価はインフレに弱いから物価水準には注意が必要」という話もあります。この2つの話って"矛盾"していますよね。

一体、株式って、インフレに「強い」の「弱い」の???

この答えとしては「株式は、他の金融商品に比べてインフレに強く、長期運用に適している」と考えるのが正しいと言えるでしょう。また、「株価はインフレに弱いから物価水準には注意が必要」という話が同時に言われる理由としては「長期と短期の考え方に違いがあるから」といえます。つまり、長期で考えれば、株式は資産運用において物価上昇に強い有利な金融商品と考えることができますが、短期的には「物価が上がりそうだ」という局面において、一時的に株価が下落すると考えられるので、「物価上昇には注意が必要な金融商品ですよ」ということだと思います。

ここで問題になるのが、「長期」と「短期」ですが、これは特定の「長さ」や「期間」を言っているのではなく、ざっくりと遠い未来を「長期」と考え、比較的目先の状況を「短期」というというくらいの意味です。経済学ではこの「長期」「短期」が大きな意味を持つことも多いのですが、実務的には、それほど神経質になる必要はありません。

それでは、まず、「短期の場合」を考えてみましょう。例えば、来年、物価が上昇するという噂が広がったとします。このような時、もし、以前から目をつけていた車があったとすると、どうしますか?

今すぐ買いますよね。これは一例ですが、物価が上昇しそうだという噂が広がれば、多くの人がいろいろな商品について同じ感情を抱くことになるので、「来年」ではなく、現時点で早くも値段(物価)が上がってしまうことがよくあります。ここで「噂」では「来年3%上がる」ということだったとしても、上記の通り、現実にはその値上がりは先取りされて「現時点」で3%以上上昇してしまうということがよくあります。

ところが、物価と言うものは一旦上がり出すと、たとえ「すでに3%上昇した」としても、人々は「まだまだ上昇しそうだ」と思い込むので、物価上昇は止まらないことの方が多いのです。そうなると政府等が政策を打ち出しても上手くいかず、ドンドンと物価だけが上がってしまうことになります。これを止められるのは金利を上昇させる以外にないのです。金利が引き上げられると、例えば先程の例で、定期預金の金利が4%になるように金融引締政策を実施すれば、車が来年3%値上がりしても、定期預金に預けておいた方が得になります。なので、急いで車を買おうと思う人が少なくなることから、物価上昇が収束することになります。このように物価が上昇しそうな状況においては、金融引締政策が行われることにより、金利が上昇する可能性が高くなります。

ところで「株価」ですが、これは当該企業が将来「稼ぐ」であろう利益総額の"現在価値"と考えられています。ここで"現在価値"という場合、将来の利益を現在の価値として評価することになるのですが、計算上、金利が高いほど(割引率が大きくなるので)値が小さくなってしまいます。そのため、金利が高ければ高いほど、株価は安く評価されることになります。つまり、インフレ懸念があり、金利が上がる局面では「(計算上)株価は下がる」ことになるのです。

したがって、短期においてはインフレに注意をする必要があるということになります。まぁ、インフレというよりも、「金利上昇」が懸念されるということですね。とはいえ、物価上昇を引き起こすような景気状態と言うのは、一般に「好景気」ですから、一時的に株価は下げることがあっても、それは一過性であり、「ずっと保有する」と言う場合に支障になるほどの問題があるとは思えません(短期売買をするなら、事態は深刻ですが)。

では次に「長期」について考えてみたいと思います。

ここで確認しておく必要があることは、株式以外の金融商品、例えば、普通預金や定期預金、債券、生命保険などは「現段階で、将来の(元金を含めた)リターンを、予め決めてしまう"契約"である」という事実です。つまり、将来のことはわからないけれど、将来の経済状態(金利や物価)がどのようであっても、"今"時点で決めた契約を守るというものです。他方、株式は「将来の経済状況はわからないけれど、利益が出れば、それを配分します」という契約になっています。この「契約の違い」は、特に"長期"において、非常に大きいものとなります。

以下では、この契約の違いにおいて「どのような事態が想定されるのか」をわかりやすくするため、ちょっと極端な事例でお話しします。

現時点で車が100万円で買えるとします。この時点で10年国債を100万円分購入するのと、株式を100万円分投資するのでは、どちらが有利かを考えます(とりあえず「仮定」として、現時点の金利水準と10年後の金利水準は、たまたま同じだったとします)。ここで「極端な話」というのは、10年経ってみると、物価が上昇していて、同様の車が「1000万円になっていた」としましょう。そうすると国債を購入した人はどうなるでしょうか?

例えば、購入した時点で、すでに非常に利率が高くて7%であったとしても、国債の元利金を全て合わせて、(利子はすべて複利で運用したとしても)せいぜい倍になっている程度、つまり、200万円にしかなっていません。これでは1000万円の車の頭金くらいにしかなりませんよね・・・汗

では、株式はどうでしょうか?

株価が100万円であった時、毎年の1株利益が7万円であったとしましょう。この「利益」とは、簡単に言えば(1株換算で)売上から費用を引いたものですから、例えば、売上が10万円で費用が3万円と見込めるので、利益が7万円という感じになります。

ここで10年後、(車が100万円から1000万円というように)物価が現在の10倍になったということですから、当該企業の費用は10倍になっているはずです。ということは、費用は30万円になるでしょう。他方、売上も商品の値段が10倍になるわけですから、100万円になると考えられます。したがって、利益は70万円ですから、そこから算出される株価もほぼ10倍の1000万円になっているものと予想されます(当然のことですが、その時の経済状態、当該企業の収益見込み等により、計算通りにならないことがあります)。

これだと(あくまでも計算上ですが)1000万円の車を買えちゃいますね・・・笑

以上から、長期で物価が上昇する場合には、「株式投資」による資産形成が正しいと考えてもいいでしょう。

しかし、この結果は10年債が10年間に及ぶ長期契約であるため、その間に更新がされないということによって導かれる結論です。例えば、「普通預金」の場合だと、毎月ベースで実勢の普通金利が付くので、急激な物価上昇局面では非常に高い金利が付くことになり、複利で元利金が増加することになります。つまり、インフレの激しい状況においては同じ契約をするにしても「短い方が得になる」ことから、高い金利につられて、拘束期間の長い「債券」や「保険」を購入するよりも、むしろ「普通預金」の方が有利といえます。このことから、インフレを警戒するなら「普通預金が有利」という結論も正しいわけです。

しかし、普通預金は市場金利に比べて非常に低いため、複利による元利金の増加ペースが他の金融商品に比べて「かなり劣る」ということは、予め、知っておく必要はあります。したがって一般的には、インフレが警戒されるような状況において長期運用を考えるのであれば、"株式による運用"が最も推奨される資産形成の方法と言うことになるのです。


講師紹介
前田拓生
前田拓生(Takuo Maeda)

ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
著書:「銀行システムの仕組みと理論」大学教育出版
編集後記
 編集後記
事務局 一戸 グローバルマネー・ジャーナル第104号、いかがでしたでしょうか。

先週の土曜日、友人が住んでいる湘南に行ってきました。

私は海は若者ばかりと勝手に思い込んでいたのですが、行ってみるとアクティブシニアの皆さんにもたくさん出会いました。

NPOの組織を作られている方や地域の緑化運動に貢献する団体、福祉支援のグループなど、その取り組みは様々で、むしろリタイアされた方々と話していて逆に元気を貰ったと感じるほどでした。

年齢に関係なく、やりたいことがあるというのは素晴らしいことですね。

時間とやりたいことはあってもそのためのお金が無い!なんてことにならないよう、私も今からせっせと資産運用しようと思います。

来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!    

株式・資産形成講座
一戸

| 配信停止 | お問い合わせ | 個人情報保護方針 |

copyright(C)BUSINESS BREAKTHROUGH Inc. All Rights Reserved.

資産形成について少しでも知識を高めたい方はまずは無料講義体験へ。

  • 無料講義体験
  • 講座申込み