実効相場の推移から、「底値を打ち、新たな相場が始まっている」のが判る!?
通貨に関しては、円相場で言えば、ドル円相場、ユーロ円相場、豪ドル円相場などさまざまなプライスが立っており、それを加重平均したものが「実効相場」です。
簡単に言うと、その通貨の総合的な価値と言ってもいいかもしれません。
ドル、円、ユーロ、豪ドル、スイスフランなどの各通貨を、2003年初頭を100として揃え、そこからどういう動きをしたかという「実効相場の推移」を見てみましょう。
いちばん判りやすいのは、豪ドル相場です。
100からスタートし、相当に買い上げられ、いわば"豪ドル高バブル"といえる状態になりました。そしてその後、昨年8月から10月にかけて"ストン!"と直線的に下降し、ちょうど100のところまで落ちています。それまでの相場を全部いっぺんに吐き出した後、今年3月までで底値を固め、そしてまた豪ドル高に動き始めているわけです。
落ち方も急だった分、再度の上昇も急激な動きです。
この動きが、もし新たな相場のスタートであり、その前提が「緩やかな景気持ち直し」だとすると、この上昇の動きは「少し急すぎる」「もう少し緩やかな上昇でもいいのではないか」という気がします。
とはいえ、金利の動きからすると、2003年を底とする一連の相場は、リーマンショックの混乱の中(今年3月まで)でひとまず終わり、現在はすでに新しい相場が始まっていると考えた方がいいのかもしれません。つまり、2003年以降、景気拡大、株価上昇などを背景に金融政策が引き締め方向に向かいました。そこがある意味では、「円安・ドル安、その他通貨上昇、の出発点であった」と考えられますが、現在はその相場の延長ではなく、別の、新たな相場が始まっているとみた方が良いと思うのです。
同様に100からスタートした円は、一貫して円安基調でしたが、サブプライム問題以後は円が反発して、最後にはかなり円高になっていきました。円高に至るピッチが相当に急であり、レベルとしても少し円高が行き過ぎたということだと思います。
その反動で円安方向に調整して、いまは少し落ち着いている状況にあるのだと思います。
そして同じく100からスタートして、格差がまだ広がったままに見えるのが、ドルとユーロですが、ユーロが依然として高止まりしていて、ドルが安いという状態です。
では、ここからまた、さらにドル安に行くのでしょうか?
金利の動きも重要ですが、金利差がこれだけ開いているのに、まだ調整が終わっていないとみるよりも、景気動向や景気格差が米国に有利に働いていく可能性も高いので、やはり「もう少し縮まる方向に動く」、つまり「ユーロ安ドル高に動く」と考える方が妥当なのではないでしょうか。
■10年国債利回りの金利差から、ドル円相場およびドルユーロ相場の今後を読み解く!
米国と日本それぞれの国債利回りを10年債ベースで金利差をとったデータの推移と、ドル円相場の推移を重ねてみると、きれいに相関しているのがわかります。
そうはいうものの、金融市場の混乱により、金利差だけではなかなか動かない状況になっており、ところどころブレもあります。特に最近はブレが大きくなっていますが、おおむね、きれいな相関関係を示す動きになってきているようです。
ドル円相場に関して言えば、10年債の利回りを考えてみた場合に、「米国の長期金利のほうが日本の長期金利よりは上昇するであろう」と想定されます。
したがって金利差は、例えば、仮に米国の利回りが3.5、日本1.5という形になれば2%になり、ドル円相場では、100~105円ということになってくるかもしれません。
少なくともアメリカの長期金利がどんどん低下し、金利差がどんどん縮小する、あるいは、(景気がこういう状況ですから、少し考えにくいですが)日本の長期金利がどんどん上昇するようなことがなければ、円高ドル安に向かうことは考えにくい。そうなると「むしろ緩やかにドル高、円安」になるのではないでしょうか。
ドルとユーロの力関係にも、同じようなことが言えると思います。
ドイツと米国の10年国債利回りを比べた場合、まだドイツのほうが若干高いので、なかなか金利差が逆転して「ドル金利が高い状態(つまり、金利差においてゼロより下)にいってくれない」というのが現状です。
金利差を示す線がゼロより下に行けば、米国の長期金利が欧州の長期金利を上回る状態ということですから、そうなればおそらく、ユーロドル相場がユーロ安ドル高方向に行くということになると思うのです。しかし、そこがまだなかなか見えていないのが現状です。
米国の景気が明確に持ち直していくとすると、量的金融緩和やゼロ金利など現在行っているFRB(米連邦準備制度理事会)の政策も、少し変化し始めるのではないでしょうか。
それが見え始める段階では、長期金利も上昇しますから、それによって欧州と米国の長期金利差がより明確に逆転することになるでしょう。そうすると、ユーロドル相場がドル高方向に行く可能性も考えられます。
|