中国の経済規模の大きさに気づき始めた日本
東京証券取引所の地位が低下しています。アジア・太平洋地域の株式市場の売買代金に占める東証のシェアは1~4月に25%まで落ち、約12年ぶりの低水準となりました。金融危機を受けた投資家の売買手控えがほかの市場より大きかったとのことです。
東京証券取引所の地位が低下したという見方もありますが、それよりも中国・上海市場が回復してきたというほうが適切でしょう。
売買代金のシェア比率を見ると、2007年~2008年は東京がアジアのトップシェアを獲得しつつ、シェアそのものも伸ばしていた一方、上海市場は2008年になって前年からシェアを下げている状態でした。
それが2009年になって、東京市場が縮んでいく中、上海市場が倍増に近い回復を見せ、トップシェアを獲得しています。これが、私が言うところの中国経済の規模感です。日本がGDPで中国に抜かれてしまうのは時間の問題だと私は何度も述べてきましたが、今回、株式市場の売買高でも中国に追い抜かれてしまったということです。
アジアの主要市場の売買代金シェアを見ると、上海と東京に続くのは、深セン、韓国、香港、台湾といった株式市場です。上海+深センを中国勢という括りで見れば、東京は圧倒的に負けています。さらに言うならば、香港市場、台湾市場も中国勢という見方もできるでしょう。そうなると、中国は4つの市場により巨大なアジア株式市場の50%以上を占めることになります。ここまでくると、もはや地位が低下したというレベルではなく、東京市場はアジアの中の1市場に過ぎないという感覚になってしまうでしょう。
このような中国経済の本当の規模感に、急に気づき始めて慌てているというのが、現在の日本の傾向だと私は見ています。
●国内株式市場はわずか3ヶ月で43%の上昇
そうした中、国内市場では回復の兆しが見え始めています。12日の東京株式市場で日経平均株価の終値は、前日比154円49銭高の1万135円82銭でした。これは、昨年10月以来約8カ月ぶりに終値で1万円台を回復したことになります。各国の経済指標にも改善の兆しが見られ、景気の底入れ期待が強まっているとの見方も出てきています。
本当に景気が回復していくかという点については、予断は許さない状況と見るべきだと思います。ただ、株式市場は景気に先行して動くということと、今の時点では行き場を失くした資金が取りあえず株式市場に戻ってきているということは事実です。
私は数ヶ月前から述べていますが、株式市場は3月の第1週が「底」になっていたと思います。その辺りから「買い」が戻ってきています。実際、3月第1週の時点から算定すると、現在までの間に株式市場は43%も値上がりしています。インデックス投資をしていた場合には、わずか3ヶ月で43%の値上がり収益を確保できたことになります。株式市場というのは上昇局面に入ると、このような短期間での急上昇というのも珍しくありません。
ただ今後の動向には注意が必要でしょう。ここまで株価が回復してきたという認識を多くの人が持ち始めると、反動が出てくるからです。また、現時点では株式市場に行き場を求めた投資資金が戻ってきていますが、本質的なことを言えば、日本企業の収益性は未だに回復していません。前年比で30%~40%ダウンという業界がまだまだ山のように溢れていて、顕在化していないだけです。
中国特需も取りあえず収まってしまいましたから、そういう意味でも今後も株式市場が一方的に上がっていくということはないだろうと私は思います。こうした大きな動向は抑えておくべきでしょう。
その上で考えれば、現在は投資家にとっては10年に1度くらいのチャンス局面とも言えます。ある局面で投資をして値上がりによって収益を確保し、値下がる前に売るというのは、投資の基本的な考え方です。今の状況は、株で儲けることが可能な非常に珍しい局面だといえるかも知れません。
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