株価はこのまま戻り続けるのか?未だ回復しない企業の収益性|株式・資産形成講座メルマガ

  2009/6/24(水)  
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株価はこのまま戻り続けるのか?未だ回復しない企業の収益性

中国の経済規模の大きさに気づき始めた日本

東京証券取引所の地位が低下しています。アジア・太平洋地域の株式市場の売買代金に占める東証のシェアは1~4月に25%まで落ち、約12年ぶりの低水準となりました。金融危機を受けた投資家の売買手控えがほかの市場より大きかったとのことです。

東京証券取引所の地位が低下したという見方もありますが、それよりも中国・上海市場が回復してきたというほうが適切でしょう。



売買代金のシェア比率を見ると、2007年~2008年は東京がアジアのトップシェアを獲得しつつ、シェアそのものも伸ばしていた一方、上海市場は2008年になって前年からシェアを下げている状態でした。

それが2009年になって、東京市場が縮んでいく中、上海市場が倍増に近い回復を見せ、トップシェアを獲得しています。これが、私が言うところの中国経済の規模感です。日本がGDPで中国に抜かれてしまうのは時間の問題だと私は何度も述べてきましたが、今回、株式市場の売買高でも中国に追い抜かれてしまったということです。

アジアの主要市場の売買代金シェアを見ると、上海と東京に続くのは、深セン、韓国、香港、台湾といった株式市場です。上海+深センを中国勢という括りで見れば、東京は圧倒的に負けています。さらに言うならば、香港市場、台湾市場も中国勢という見方もできるでしょう。そうなると、中国は4つの市場により巨大なアジア株式市場の50%以上を占めることになります。ここまでくると、もはや地位が低下したというレベルではなく、東京市場はアジアの中の1市場に過ぎないという感覚になってしまうでしょう。

このような中国経済の本当の規模感に、急に気づき始めて慌てているというのが、現在の日本の傾向だと私は見ています。


●国内株式市場はわずか3ヶ月で43%の上昇

そうした中、国内市場では回復の兆しが見え始めています。12日の東京株式市場で日経平均株価の終値は、前日比154円49銭高の1万135円82銭でした。これは、昨年10月以来約8カ月ぶりに終値で1万円台を回復したことになります。各国の経済指標にも改善の兆しが見られ、景気の底入れ期待が強まっているとの見方も出てきています。

本当に景気が回復していくかという点については、予断は許さない状況と見るべきだと思います。ただ、株式市場は景気に先行して動くということと、今の時点では行き場を失くした資金が取りあえず株式市場に戻ってきているということは事実です。

私は数ヶ月前から述べていますが、株式市場は3月の第1週が「底」になっていたと思います。その辺りから「買い」が戻ってきています。実際、3月第1週の時点から算定すると、現在までの間に株式市場は43%も値上がりしています。インデックス投資をしていた場合には、わずか3ヶ月で43%の値上がり収益を確保できたことになります。株式市場というのは上昇局面に入ると、このような短期間での急上昇というのも珍しくありません。



ただ今後の動向には注意が必要でしょう。ここまで株価が回復してきたという認識を多くの人が持ち始めると、反動が出てくるからです。また、現時点では株式市場に行き場を求めた投資資金が戻ってきていますが、本質的なことを言えば、日本企業の収益性は未だに回復していません。前年比で30%~40%ダウンという業界がまだまだ山のように溢れていて、顕在化していないだけです。

中国特需も取りあえず収まってしまいましたから、そういう意味でも今後も株式市場が一方的に上がっていくということはないだろうと私は思います。こうした大きな動向は抑えておくべきでしょう。

その上で考えれば、現在は投資家にとっては10年に1度くらいのチャンス局面とも言えます。ある局面で投資をして値上がりによって収益を確保し、値下がる前に売るというのは、投資の基本的な考え方です。今の状況は、株で儲けることが可能な非常に珍しい局面だといえるかも知れません。


講師紹介
大前研一
ビジネス・ブレークスルー大学院大学学長
大前研一

6月14日放送
「大前ライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。
大前研一学長語録
 ブレークスルー経済学
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。

第99回 『このままだと「ハイパー・インフレになる」は本当?!?!』

このところの不況により、各国とも財政支出を増やしていることから、おカネの量が多くなり、急速なインフレ、いわゆる「ハイパー・インフレ」になるのではないかという懸念が高まっています。特に、世界の基軸通貨である「米ドル」の発行量が、FRB(米連邦準備制度理事会)の「資産の増加」という形で報道されましたが、その増加スピードに加え、金額が巨額であることから、世界中が驚き、懸念がますます高まってきています。

実際、モノの値段はおカネによって表記されるので、おカネの量が増加すれば、相対的にモノの値段も高くなると考えるのは当然です。そういう意味で、現在、おカネの量が世界的に増加しているのは極めて重大な問題であり、今後、世界経済に悪い影響を与える可能性が高いといえます。

とはいえ、この事実だけでは(少なくとも先進国において)ハイパー・インフレになる可能性は低いと考えています。

「ハイパー・インフレ」というのは、一般に、おカネよりもモノを好む人が多い状態であり、その傾向が急速に高まる状態を言います。つまり、多くの人が飢餓状態に陥り、今すぐにモノが欲しいと思うものの、モノ自体が潤沢にないため、おカネがいくらあっても購入できない状態をいうと考えられます。このような状態になれば、おカネは交換手段として機能しないことから、おカネ自体の価値が急速に失われるため、深刻なインフレを招くわけです。

ここで問題になるのは、「人々が飢餓状態に陥っている」ということです。これは、すなわち「モノ不足」の状態を指すのであり、だから、おカネに比べて希少になったモノの価値が高まるわけです。このような状態は、モノが余剰になっている先進国では考えられないので、これを心配するのは杞憂に過ぎないと思います。

しかし、現状の「おカネの増発」は、以前起こった「原油の高騰」のように、とんでもない問題を"頻繁に"引き起こすことになるため、今後は常に警戒をしておく必要があると考えています。

というのは、おカネには「使うおカネ」の他に「貯めるおカネ」があるのですが、このうち「貯めるおカネ」が多くなりすぎていて、世界全体で、そのおカネを吸収することが、もはや、不可能になっているからです。

ここで「その多すぎるおカネが、一斉にモノを買い始めたら、やはり、ハイパー・インフレになるのでは?」と思うかもしれません。

それは確かにその通りです。今、市場にある「貯めるおカネ」が一斉に全てモノに流れれば、ハイパー・インフレになるでしょう。

けれども、この「貯めるおカネ」とは、結局のところ、銀行の預金や投資信託(ファンド)のような金融商品になっているのであり、銀行やファンドはその資金を使って「利」を獲得しなければなりません。ここで「利を獲得する」ということは、商品を消費するために購入するのではなく、転売によって利を得る必要があるということを意味します。ですから、余剰になっている商品を購入することはありません。なぜなら、銀行やファンドがモノを購入する場合には、購入した時よりも高く売れるという見込みがあるモノしか買わないことになるからです。

ということから、実業において「儲かる」という商品であれば、すでにそれなりに上昇した価格になっているはずなので、付加的に価格が上がる要因がない状態であれば、そこに銀行やファンドのおカネが流入することで価格が上昇しても、上昇後の価格は、誰も「妥当だ」とは思わない(つまり、「高すぎる」)ことになります。このように、買っても「高値で売り抜けられない」と思われる場合には、銀行やファンドはともに購入しないわけですから、「貯めるおカネ」が多すぎるからといっても、それが一斉にモノを購入し、ハイパー・インフレを引き起こすという可能性はないと考えられるのです。

というか、そもそも「貯めるおカネがある」ということは、おカネでモノを買うために使っていない訳ですから、ハイパー・インフレなっていないことを意味します。

では、「貯めるおカネ」のうち、モノの購入も投資もしていないおカネは、どうなっているのでしょうか?

現状、リーマンショックを受けて、おとなしくしていますが、実は利を求めて、虎視眈々と待機していると考えた方がいいでしょう(以前、サブプライム問題を引き起こしたのは、まさに、このような資金です)。つまり、利がないところに無理やり投資をして「投資先が利を上げるのを待っている」というのではなく、常に臨戦態勢を保ちながら、「利がある」と思えば、すぐに出動できるように、おカネのままで待機していると思います。そして、そのようなおカネが、世界中にあり、また、その金額も相当大きなものあるとみられます。

このような資金が、いわゆる「ホームレス・マネー」と言われるものです。

したがって「ここが儲かる」となれば、このホームレス・マネーは、どこからともなく出現し、一時期に、しかも、一斉に買いまくるので、そのターゲットになったコモディティや為替レート、エマージングマーケットなどが想像を絶するような動きになったりするのです。

その例が、昨年起こった原油高騰だったわけです。

そして現状、世界で行われている財政政策により、このホームレス・マネーは増加傾向を強めているので、今後も、あの原油高のような急激な上昇が、どのコモディティ、どの為替レート、どのエマージングマーケットでも、起こり得ることになるのです。

このように、現状の経済において、特に先進国サイドで「ハイパー・インフレになる」という事態は考えられないのですが、集中豪雨的な何らかの価格上昇という可能性は非常に高く、しかも、その時期やターゲットが「どの時点で」「何になるのか」を予想することは不可能なのです。

ただ、このようなホームレス・マネーは上述のように「投機」という形で出現するとは限りません。というか、通常、「投機」という形ではなく、純粋な投資として現れ、初期においては経済理論や経済ファンダメンタルズを重視した「紳士的な投資」としての行動を取る場合が多いものです。つまり、まずは裏付けとなる利があり、その利を求めて参入するのです。しかしそのうち、「買うから上がる」「上がるから買う」というバブルを生じさせ、投機化する場合が多いのです。

したがって、これらのホームレス・マネーも「市場の厚み」という意味では貢献しているのであり、その意味では忌み嫌う必要はないのです。とはいえ、その金額が多額なので、それらが市場に入り込むことによって、非常に値動きの激しい(ボラタイルな)相場になるわけであり、その点については注意する必要があると思います。

特に、ホームレス・マネーが増加している現在においては、今後、ますます上下動の激しい相場展開になることが予想されるので、投資家としては、このようなホームレス・マネーの存在を常に頭に入れながら、市場動向をしっかりと観察することが大切になると考えています。


講師紹介
前田拓生
前田拓生(Takuo Maeda)

ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
著書:「銀行システムの仕組みと理論」大学教育出版
編集後記
 編集後記
事務局 一戸
グローバルマネー・ジャーナル第105号、いかがでしたでしょうか。

ここ数日関東は雨続きですが、雨が降っても涼しくならない(むしろ蒸し暑い)ことが、夏の近づきを感じさせます。

夏と言えばシーズンストック(季節銘柄)の時期ですね。

私はエアコンやビール、アイスクリームメーカーなどの株価を一通りハシゴしますが、最近は青田買いよろしく、夏の株価上昇を予測して早めに買いが入ることもしばしばです。

加えて今年は株価大暴落の翌年ということもあり、戻り方にも勢いがついている気配。

趣味と実益を兼ねて、物色していきたいと思います。


来週はまぐまぐの配信システムリニューアルのためお休みします。

また再来週のグローバルマネー・ジャーナルでお会いしましょう!    

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