金価格は調整局面に入っていると思われます。ひょっとするとこれから先900ドルを割り込むかもしれませんが、その後は再び上昇すると見ています。その理由はインフレ懸念とドル安、ユーロ安にあります。
ドル安とかユーロ安というと、日本の投資家はドル円やユーロ円を思い浮かべると思いますが、世界全体の通貨関係を見る必要があります。ドルは、このところ少し反発をしていますが、この数ヶ月、一様に対新興諸国通貨に対して安くなっています。しかしドル円だけは、最近はドル安円高であるものの、傾向としてはドル高円安になっており、他の世界の通貨とは正反対の動きになっています。
同様にユーロも新興諸国等の通貨に比べて安くなっています。というのは、ユーロ経済圏については、中東欧の囲い込みによって、安い労働力や新しい市場の開発で発展してきましたが、現状、それらが逆にお荷物になっているからです。つまり、サブプライム問題で傷んだ欧州の銀行が、これらの国に貸し渋っているからなのです。たとえば、ラトビアは、2009年第一四半期の経済成長率が▲11%であったため、格付けがBBBからBB+に格下げされました。そのため6月3日の短期債券入札の応募がゼロという事態に陥ったというわけです。IMFなどの緊急融資でデフォルトは免れていますが、ラトビアに貸し込んでいるスウェーデン等の銀行の信用が低下しています。
このような状態なので、投資家はドル資産も危なく、ユーロでも持てないことことから、新興諸国通貨や円等への投資に向かったのですが、米国の個人消費の回復が当面見通しが立たない中、米国向け輸出依存度の高いこれらの諸国の通貨も、それほど魅力的とはいえない状況です。
そこで投資の逃避先として金が見直されることになると私は考えています。
景気はいずれ回復すると思いますが、その時に巨額に発行された通貨の価値は下落して物価は上昇するでしょう。インフレ懸念はインフレヘッジとしての金買いを加速させます。ですから、このところの金価格の一時的下落は金の絶好の買い時だとも言えます。
なお、金を買うには3つの方法があります。ひとつは金塊や金のコインなどを買う現物投資、これには純金積立が含まれます。2つ目は金のETF、3つ目は金の先物投資で、それぞれに以下のような特徴があります。
現物の場合、持ち運びに便利ですが保管リスクがあります。純金積立は手軽であり、保管リスクは無いが、業者の倒産リスクがあります。信用のおける先を選ぶべきです。あとは両方とも現物投資の場合、売る時は買うときよりも72円(現行)安くなってしまうという手数料の問題があります。
金のETFは証券口座があれば簡単に売買できるのが取り柄ですが、年間約0.26%の信託手数料が売却時に差し引かれ、長年持つと大きな手数料となります。
最後に金の先物取引は、売買差はありませんが、将来の受け渡しを契約するので、将来になればなるほど高く価格が設定されています。証拠金取引なので、300万円近くの金地金1キロを15万円の頭金(証拠金)で取引できます。
|