バーナンキ発言、米経済の雇用なき回復は本当に「あり得る」のか|株式・資産形成講座メルマガ

  2009/7/29(水)  
最新・最強・最高クオリティの
Message
第109回目発行!株式・資産形成講座メルマガです。
メルマガをご覧の皆様、こんにちは!
ビジネス・ブレークスルー 株式・資産形成講座事務局の一戸です。
このメルマガでは、皆さんの資産形成に役立つ情報を、大前研一ならびにプロとして活躍している 一流講師陣の視点から、毎週リアルタイムにお届けしていきます。
あなたの理想とする資産運用、資産形成を実現するためのとっておき情報を、どうぞご覧ください。

本文タイトル
バーナンキ発言、米経済の雇用なき回復は本当に「あり得る」のか

景気底打ちというには、まだ早すぎる

27日の米株式市場でダウ工業株30種平均は11営業日続伸。米国景気底打ちへの期待感を背景に急上昇を見せたとのことです。

とはいえ、つい先月には3連続下落後、中1日の上昇を挟んで更に4連続下落したという事実もあり、急上昇したからといって短絡的に「景気底打ちへの期待感」などというのは、いい加減過ぎると思います。

結局こうした小さな動きというのは、景気や株式市場が本質的に変わったからではなく、人間の「心理」的な部分の影響を強く受けています。そういった意味では今回の急上昇を持って景気回復への兆しと考えるなど、信じるに値しないと私は見ています。



実際、08年年初以降のダウ工業株30種平均の推移を見てみると、いかにダウ工業株30種平均が短期的な騰落を繰り返しているか、よく理解できます。08年年初には13,000ドルだったダウ平均は、金融危機を受けて夏から急落し、一気に8,000円を割り込みました。その後、09年3月には7,000円も下回るという事態になりました。現在、その水準からは何とか脱したという状態になっています。

3月を基準にして現在の状況を回復傾向と見る人もいるようですが、まだまだ「もみ合い」状態だと私は見ています。ダウ平均の対前日比騰落幅を見ても、未だに1日で200ドル前後の値動きがあることも珍しくありません。昨年の秋、1日で800ドル前後上下したという「大地震」レベルの振れ幅はさすがに収まっていますが、それでも「震度5」レベルの強震が続いているような状況だと私は思っています。

また、本当の意味で金融危機が去ったと言うには、雇用情勢の側面から見ても甘いと言わざるを得ないと私は見ています。


●米国の歴史上、「雇用なき回復」はない

バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長は13日の米議員との会合で、米経済が「雇用なき回復に直面する可能性がある」との認識を示唆しました。議長と面会したシェルビー上院議員がCNBCテレビとのインタビューで、議長の認識を明らかにしています。シェルビー議員によると「雇用なき回復に陥る可能性があるか」との質問にバーナンキ議長が「それはあり得る」と答えたということです。

この時、バーナンキ議長の脳裏によぎったものは何だったのか、正直に言うと私には理解できません。というのは、「雇用なき回復」は一般論としては成立するものですが、過去数十年の歴史を見る限り、米国においては当てはまった試しがないからです。

まず一般的に「雇用なき回復」は次のようなロジックに従います。

企業業績が悪化

企業がレイオフを実施

企業業績の回復

株式市場の回復

英国などはこの一般的なロジックに準じた動きを見せることが多い、と言えるでしょう。場合によっては、企業の業績回復を織り込んで、株式市場が先に反応して上昇し始めるという状況もよく見受けられます。



ところが米国の場合には、この理屈とは反対の動きをしています。米国の失業率とダウ平均の推移を見ると、この数十年間、失業率が上昇すると株価が下落するというパターンを見せています。特に最近の10年間は顕著な例だと思います。

96年から00年にかけて大きく株価が上昇すると、反比例するように失業率は低下しています。00年から02年、02年から07年という期間でも同じような山と谷を繰り返しています。そして、07年・08年から現在にかけても、株価が急落すると同時に失業率が急騰するという見事に「反比例の動き」を見せているという状況です。

米国においてこのような動きを見せる要因は、国内消費が米国経済の7割を担っているからだと思います。そのため、失業者が増えるとなかなか景気が回復しないという状況に陥るのでしょう。さらに現在の状況は、金融危機によって銀行が傷ついていて、クレジットやローンを組みにくい状態ですから、なおさらだと思います。

私が記憶する限りでは、数ヶ月という短期的なスパンで見ると、米国でも「雇用なき回復」という状態になったことがあります。しかし、長期的なスパンではその例はありません。経済学者でもあるバーナンキ議長が、「何を根拠にして今回のような発言をしたのか」について、私としては「きちんとした証拠を提出して欲しい」と言いたいところです。

おそらく、余りにも失業率が高くなってしまった焦りから、「失業率が上がっても景気は回復する」と言ってしまったというのが真実ではないかと思います。あるいは、金融的な対策に追われていて失業問題についてはギブアップ気味になっているという可能性もあるかも知れません。いずれにせよ、今回のバーナンキ議長の発言を真に受ける必要は全くないと私は思っています。


講師紹介
大前研一
ビジネス・ブレークスルー大学院大学学長
大前研一

7月19日放送
「大前ライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。
大前研一学長語録
 ブレークスルー経済学
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。

第103回 『民主党の「地域主権」って、どうよ!?!?』

漸く選挙ですねぇ~。みんなで選挙に行きましょう!!

でも、選挙戦が40日に及ぶというのはちょっと長いような気もしますが・・・。とはいうものの、「与党が交代するかも」という大事な選挙ですから、そこは「じっくりと選ぶ期間がある」と考えた方がいいということなのでしょう。

通常、このような政権交代を前提とした選挙のある国の株価は低迷するものなのですが、今回は様子が違うようです。まぁ、参議院はすでに民主党を中心とする"野党"が多数ですから、逆に、この選挙で民主党が勝てば「正常化する」という思惑もあるということなので、日本人的には株高も頷けます。

しかし・・・

本当に「民主党で大丈夫なのか」という不安は「民主党政策集INDEX2009」をみても感じます。この政策集には、民主党が、今、やろうとしている政策がズラッと並んでいるのですが、「で、財源は」というとあまり明確になっていないように思います。幹部の発言についても「税金の無駄使いをなくせば大丈夫」というものの、結局のところ、「現時点では野党のため、詳細がわからないので、政権を取ってから具体的に詰める」というような感じですから、なおさら、不安ですよね・・・(汗)

また、政策そのものも「表題」と「中身」にギャップがあるように感じます。例えば、私自身の興味で恐縮ですが、「地域主権」などについても、かなりイメージが違います。

まぁ、民主党が政権を取ったからといって「ガラガラポン」とすぐに変えられるようなものではないので、順次やっていくということのようですが、それにしても、何となく「国から地方への財源移譲」ばかりが前面になっている感が否めません。そもそも「地域に財源を移した」というだけで、地域の産業が発展したり、地域経済が飛躍的に向上することはありませんし、「地域主権」という概念においては、本来、財源は自分の地域で稼ぎ出すのが基本であり、国から財源を云々することばかりを問題にするのは「如何なものか」と思ってしまいます。

私が思い浮かべる「地域主権」というのは、中央が「これで行く」と決めて行うシステムではなく、地域コミュニティの状態に即して、それぞれの地域コミュニティが独自に必要だと思う対策を行っていくというものです。

そのような中で地域コミュニティがそれぞれ単独で生き抜くためには、地域コミュニティ自身が"域外"交易を積極化させる必要がありますし、そうすることが地域のそれぞれに埋没している資源の有効活用につながるのだと思います。また、その「域外」という場所が「日本国内」である必要はなく、海外でも良いわけであり、地域ブランドを持って「グローバルに戦っていく」ということでも良いのです。

このようにグローバル経済においても対等に戦えるだけのブランド力を持った地域を育てるには、現在の日本の中央集権体制を潰すことが何よりも必要になってきます。なぜなら、中央集権的な体制の下では、そこで制定される政策のほとんどが、国民全体の最大公約数的なものになるため、それぞれの地域で本当に必要とされる法律や税制にならないからであり、一方で、不必要な制約が課せられるといった問題が起こってしまうからです。

「その地」で必要な法律等は、「その地」だけで適用すればいいのであり、財政的な手当てにおいても「その地」で工夫すればいいのです。このような絶対的な権限を「道」「州」といった地域に持たせ、それぞれ独自に運営をしていってこそ「地域主権」になるわけです。

なので、「道」「州」といった地域は、現在ある「都道府県をまとめた連合体」というようなイメージではなく、ある一定の面積と人口を持ち、地域性を活かせる行政単位にすることが何よりも重要になってきます。

つまり、「道州制にする」ということは、現状の「金太郎飴的な制度(どの地域でも同じ制度)」ではなく、「道」「州」が独自の制度を、その地域に合わせて作り上げるということなのです。ですから、「日本」という国は「金融制度」「安全保障」「外交」などと言ったものに注力するだけでよく、金融政策を除く経済政策についての多くの部分を「道」「州」が独自に行うようになるということなのです。そういう意味で「道」「州」は、完全に自主独立でなければならず、当該地域の発展は、「道」「州」がそれぞれ責任を持って担っていくことになるのです。

ここで「道」「州」を中心とする制度の方が、中央集権よりも優れているのは、制度そのものの制定を実行主体である「道」「州」といった地域に委ねているからといえます。自分たちの必要に応じて、いろいろな施策を行えるわけですから、速効性もあり、効率も高いわけです。

そうはいっても、自主独立となるとそれだけ厳しいわけであり、地域そのものがグローバル社会のプレイヤーとして戦っていかなければならないことになります。それにもかかわらず、「助走段階だから」といって国からの財源移譲に頼っていては、いつまで経っても自立などできるわけがありません。この点の方向性が、現時点の民主党の政策案を見ていてもよくわからないのです。目指しているのは「地域国家」ということであり、「ゆくゆくは道州制を導入したい」ということになっています。しかし、「地域国家」「道州制」になった後の日本の"風景"を示さないままに、言葉だけで「地域主権」を掲げているようにしか、私はみえません。

ある意味では「地域国家」「道州制」の方が、箸の上げ下ろしまで中央で決めている現行制度よりも厳しいともいえるわけですから、地域経済の発展という部分についての考え方をしっかり示してほしいと思います。以上のように、「地域主権」は国からの財源移譲などといったものではなく、統治システム全体の大改革なのですから、「やれるところからやる」ということではなく、しっかりした方向性を決めて実行しなければならないのではないでしょうか。

ここでは「地域主権」に絞ってみてきましたが・・・

脱官僚においても、福祉政策においても、年金においても、「どうなのだろうなぁ~」と感じる部分が多いように思います。これは私だけではないでしょうから、これから8月末までの選挙戦を通じて、できるだけ具体的に示していただきたいと願っています。。。


講師紹介
前田拓生
前田拓生(Takuo Maeda)

ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
著書:「銀行システムの仕組みと理論」大学教育出版
編集後記
 編集後記
事務局 一戸
グローバルマネー・ジャーナル第109号、いかがでしたでしょうか。

先週の編集後記で「保険をかけ過ぎてはいませんか?」というお話をしたところ、読者の方から、「かけ過ぎだけでなく、保障の仕組みをよく理解していないことによる未請求にも注意が必要ですね」とのコメントをいただきました。

国や市から通知があるにせよ無いにせよ、基本的に金銭受け取りに関する事柄は「申し出制、届け出制」が原則ですし、確かに私も小額であったがゆえに、医療保険の申告を忘れかけた経験があります。

また、よく言われる「健康保険は最強の医療保険」という言葉の意味も、意外と知らない人が多い気がします。

例えば一般的なサラリーマンが病気で会社を休職した場合、一年半にわたって収入の2/3を保障してくれる「疾病手当金」や、入院費用を月額8万円までしか負担しなくて済む「高額療養費制度」などは、一般の生命保険では考えられない、健保ならではの手厚い保障といえます。

いざ病気になった時だけではなく、これらの制度をよく知ることで、本当に必要な量の保険のみを補完的に契約し、残りは貯蓄や運用にまわすことができるわけです。

来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!    

株式・資産形成講座
一戸

| 配信停止 | お問い合わせ | 個人情報保護方針 |

copyright(C)BUSINESS BREAKTHROUGH Inc. All Rights Reserved.

資産形成について少しでも知識を高めたい方はまずは無料講義体験へ。

  • 無料講義体験
  • 講座申込み