今年1~3月にかけ、米国株式市場が大きく下落したその理由は...?
今年の年初から3月にかけては、株価は大変に大きな下落となりました。
昨年11月から12月にかけては上昇しており、金融改善の動きも見えていました。しかし今年1月にシティグループが27兆円もの不良債権を出し、「これを米国当局が保証する。シティグループと同様の不良債権を抱える金融機関があれば、これも同じようなスキームで救済する可能性がある」との発表が出ました。
もちろんこれはシティグループと同様の救済劇となるわけですから、ポジティブに捉えてよいはずでした。しかし投資家はそうは捉えず、『シティグループ以外にも、米国を代表する金融機関が破綻の危機に瀕しているのだ』と非常にネガティブに捉えてしまったのです。
そのため1月をピークに、9000ドル近辺から6600ドル近辺までズルズル下落。去秋の再来かと思わせるほどの下落でした。しかし今年3月11日(米国現地時間では3月10日)、シティグループCEOの黒字発言をきっかけに株価が年初のレベルまで回復したというわけです。
このエピソードから、考えなければいけないのは...。
「米国の株価は、今年6月から7月にかけて一度下落し、それから再び上昇している局面にあるが、さらにこのまま上昇し続けるのか否か?」ということです。
■米国株式を見なければ、日本株は判らない。米国株を分析すれば、日本株は判る!
このメルマガ読者の皆さんにとって、今一番興味があるのは、もちろん日本の株価だと思います。それなのに何故、米国の株価について学ばなければいけないのでしょうか?
それは、「米国株式市場を見なければ、日本株は判らない」からです。
それが事実であることを示す一例として、年初からの米国NYダウとEWJ(ドル建ての日経平均株価)は、ほとんど同じ動きをしています。残念ながら日本ではなく、米国の動きが主導しているとすれば、私たちがいま考えなくてはいけないこと。それは、
1)米国株は、上昇するのか否か
2)もし上昇するのならば、どんな理由により株価が上がるのか
3)そしてそれは、ほぼイコールで日本にも影響を及ぼす
という3つです。
いま米国の状況を見る際には、"米国の金融機関が改善している"ことが大前提であるかのようにアナウンスされています。それが本当か否かを知る上では、「LQD」(米国ドル建ての投資適格社債)をご覧いただくと判りやすいと思います。
LQDは、米国の投資信託ETF(上場投信)ですが、社債や債券は"金融機関の信用力"を測る上で私が着目している基準の一つです。
企業は、投資家に対して社債を発行し、それにより資金を調達しています。投資家側から見れば、信用力がある会社だからこそ社債を購入する、信用力のある会社から金利をもらうということです。考え方をシンプルにすれば、「つぶれてもらっては困る」わけです。社債価格というのは、あくまでも「信頼を売買している」ものだと考えると判りやすいでしょう。
■信用崩壊時には、債券市場に着目! 金融機関の業績改善報道でLQDが100ドルを回復!
そのLQDが100ドルまで回復しているという点が、非常にポジティブです。リスクがどんどん減ってきていると言えるでしょう。
実際に、株価がどんどん下落していた時には、社債価格も下がっていました。株価の下落については、つい業績悪化などと判断してしまいがちですが、いま私たちが置かれている環境は"信用の崩壊"だということです。
具体的に説明すると、私たちは当たり前のようにお金を使っていますが、もし何らかの理由で日本という国が消滅する時には、日本円はまったく機能しなくなります。あくまで国が、日本円に対して価値を保証しているからこそ、それを信用して投資をしているわけです。例えばアルゼンチンでは、年金が国の資産に没収されてしまったり、他の国でもお金の価値が劇的に落ちるというケースがありました。
それと同じことが企業にも起こっていたのです。
企業がつぶれてしまうのではないかという心配の中で、株価が大きく下落していったわけです。米国だけではなく、当然、米国で高い収益を上げてきた日本の企業も同様でした。
しかし金融が回復してくると、金融がつぶれないので、そうであれば、金融からお金を借りたとしても企業はつぶれないことになり、社債価格や企業も改善していくということです。
実はこのLQD、中身はというと28%がバンク、9.5%がファイナンシャルサービスなど「全体の約4割が金融関連」です。つまり社債価格の下落は、金融機関の信用力が落ちたことを意味し、逆に社債価格の上昇は金融機関の信用力改善を意味します。
更に具体的な金融機関名を調べれば、アメリカン・エキスプレス(アメックス)、ウェルズ・ファーゴ、ゴールドマン・サックスなど、上位には私たちもよく知る大手金融機関が名を連ねています。実はこれらの大手金融機関ですら倒産するのではないかという心配が、年初にはあったわけです。
何故ならば、シティグループと同等のレベルというと、こういった金融機関しか当てはまらないからです。その位の規模の金融機関ですら倒産してしまうのではないかというリスクが解消に向かったきっかけが、前述したシティグループの黒字化発言だったわけです。そして結果として、金融機関が多く含まれているLQDが100ドルを回復したという事実は、すなわち「株式市場にも多くのポジティブな影響が与えられた」と考えられます。
マスコミ報道では、まだまだ金融の問題というのは大きな問題であり、心配するべきことだとアナウンスされています。しかしLQDの回復は、もう社債市場では不良債権や金融の問題などは過去のものである、と示しているのではないでしょうか。私たち投資家は、これを前提として考えていかないと、もちろん今までの上昇もそうですが、これからの上昇も期待値として取ることはできにくいのではないだろうか。私はそう考えています。
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