株価は更に上昇するか?見極めのカギは企業の「信用力」にあり!|株式・資産形成講座メルマガ

  2009/8/26(水)  
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本文タイトル
株価は更に上昇するか?見極めのカギは企業の「信用力」にあり!

今年1~3月にかけ、米国株式市場が大きく下落したその理由は...?


今年の年初から3月にかけては、株価は大変に大きな下落となりました。 昨年11月から12月にかけては上昇しており、金融改善の動きも見えていました。しかし今年1月にシティグループが27兆円もの不良債権を出し、「これを米国当局が保証する。シティグループと同様の不良債権を抱える金融機関があれば、これも同じようなスキームで救済する可能性がある」との発表が出ました。

もちろんこれはシティグループと同様の救済劇となるわけですから、ポジティブに捉えてよいはずでした。しかし投資家はそうは捉えず、『シティグループ以外にも、米国を代表する金融機関が破綻の危機に瀕しているのだ』と非常にネガティブに捉えてしまったのです。 そのため1月をピークに、9000ドル近辺から6600ドル近辺までズルズル下落。去秋の再来かと思わせるほどの下落でした。しかし今年3月11日(米国現地時間では3月10日)、シティグループCEOの黒字発言をきっかけに株価が年初のレベルまで回復したというわけです。

このエピソードから、考えなければいけないのは...。
「米国の株価は、今年6月から7月にかけて一度下落し、それから再び上昇している局面にあるが、さらにこのまま上昇し続けるのか否か?」ということです。


■米国株式を見なければ、日本株は判らない。米国株を分析すれば、日本株は判る!

このメルマガ読者の皆さんにとって、今一番興味があるのは、もちろん日本の株価だと思います。それなのに何故、米国の株価について学ばなければいけないのでしょうか? それは、「米国株式市場を見なければ、日本株は判らない」からです。


それが事実であることを示す一例として、年初からの米国NYダウとEWJ(ドル建ての日経平均株価)は、ほとんど同じ動きをしています。残念ながら日本ではなく、米国の動きが主導しているとすれば、私たちがいま考えなくてはいけないこと。それは、

1)米国株は、上昇するのか否か
2)もし上昇するのならば、どんな理由により株価が上がるのか
3)そしてそれは、ほぼイコールで日本にも影響を及ぼす
という3つです。

いま米国の状況を見る際には、"米国の金融機関が改善している"ことが大前提であるかのようにアナウンスされています。それが本当か否かを知る上では、「LQD」(米国ドル建ての投資適格社債)をご覧いただくと判りやすいと思います。


LQDは、米国の投資信託ETF(上場投信)ですが、社債や債券は"金融機関の信用力"を測る上で私が着目している基準の一つです。 企業は、投資家に対して社債を発行し、それにより資金を調達しています。投資家側から見れば、信用力がある会社だからこそ社債を購入する、信用力のある会社から金利をもらうということです。考え方をシンプルにすれば、「つぶれてもらっては困る」わけです。社債価格というのは、あくまでも「信頼を売買している」ものだと考えると判りやすいでしょう。


■信用崩壊時には、債券市場に着目! 金融機関の業績改善報道でLQDが100ドルを回復!

そのLQDが100ドルまで回復しているという点が、非常にポジティブです。リスクがどんどん減ってきていると言えるでしょう。 実際に、株価がどんどん下落していた時には、社債価格も下がっていました。株価の下落については、つい業績悪化などと判断してしまいがちですが、いま私たちが置かれている環境は"信用の崩壊"だということです。

具体的に説明すると、私たちは当たり前のようにお金を使っていますが、もし何らかの理由で日本という国が消滅する時には、日本円はまったく機能しなくなります。あくまで国が、日本円に対して価値を保証しているからこそ、それを信用して投資をしているわけです。例えばアルゼンチンでは、年金が国の資産に没収されてしまったり、他の国でもお金の価値が劇的に落ちるというケースがありました。

それと同じことが企業にも起こっていたのです。 企業がつぶれてしまうのではないかという心配の中で、株価が大きく下落していったわけです。米国だけではなく、当然、米国で高い収益を上げてきた日本の企業も同様でした。 しかし金融が回復してくると、金融がつぶれないので、そうであれば、金融からお金を借りたとしても企業はつぶれないことになり、社債価格や企業も改善していくということです。

実はこのLQD、中身はというと28%がバンク、9.5%がファイナンシャルサービスなど「全体の約4割が金融関連」です。つまり社債価格の下落は、金融機関の信用力が落ちたことを意味し、逆に社債価格の上昇は金融機関の信用力改善を意味します。 更に具体的な金融機関名を調べれば、アメリカン・エキスプレス(アメックス)、ウェルズ・ファーゴ、ゴールドマン・サックスなど、上位には私たちもよく知る大手金融機関が名を連ねています。実はこれらの大手金融機関ですら倒産するのではないかという心配が、年初にはあったわけです。

何故ならば、シティグループと同等のレベルというと、こういった金融機関しか当てはまらないからです。その位の規模の金融機関ですら倒産してしまうのではないかというリスクが解消に向かったきっかけが、前述したシティグループの黒字化発言だったわけです。そして結果として、金融機関が多く含まれているLQDが100ドルを回復したという事実は、すなわち「株式市場にも多くのポジティブな影響が与えられた」と考えられます。

マスコミ報道では、まだまだ金融の問題というのは大きな問題であり、心配するべきことだとアナウンスされています。しかしLQDの回復は、もう社債市場では不良債権や金融の問題などは過去のものである、と示しているのではないでしょうか。私たち投資家は、これを前提として考えていかないと、もちろん今までの上昇もそうですが、これからの上昇も期待値として取ることはできにくいのではないだろうか。私はそう考えています。

講師紹介
大前研一
株式会社きのしたてるのぶ事務所
代表取締役
木下 晃伸

新刊著書:「巨大バブルがやって来る!~金融危機終息後の「モラトリアム相場」の読み方~」 小学館 (2009/7/30)

8月13日放送
「金融リアルタイムライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。
大前研一学長語録
 ブレークスルー経済学
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。

第106回 『選挙を「情報の経済学」で考えてみました!』

新しい経済学の領域で「情報の経済学」というものがあります。これは「契約」についての経済学であり、最近ではいろいろな場面で使われています。TVや新聞でお馴染みの「モラルハザード」という言葉も、この「情報の経済学」で使われる用語です。

まず、この「情報の経済学」について少し解説をしたいのですが、抽象的に話すとチンンプンカンプンになりやすいので、具体的な例示によりお話しします。例示としては「レモン市場」と呼ばれる「中古車市場」がよく引き合いに出されます。

ここで「レモン」とは、見た目は綺麗なのだけど実際には中身は「スッパイ」という意味で「不良中古車」を指します。その反対は「ピーチ」と呼ばれ、これは「良質中古車」を指します(見た目も綺麗で、中身も甘い)。

中古車を買いたいお客さんは、なるべく安く、良いもの(ピーチ)を買いたいわけです。他方、販売店も、敢えてレモンを売りたいわけではないのですが、お客さんの「なるべく安く」を実現するにはレモンを混ぜるしかありません。なぜなら、仕入値段はレモンの方がはるかに安いわけですから、ピーチばかりで「高い店」という印象をもたれるよりも、「安い」というイメージを消費者に印象付けたいからです。

お客さんの方としても「高い店」は敬遠するので、中古車市場ではかなりの数量、レモンが蔓延することになります。

このような現象を「逆選択」と言います。

お客さんはレモンの蔓延した中古車市場を好んでいるわけではないのに、お客さんの「なるべく安い方が良い」という表面的な選択によって、市場そのものがお客さんにとって不利な状態になってくるわけです。これは「業者が悪い」というよりも、お客さん側の選択(安い店を好む)がそうさせているのであり、業者側から変化することは期待できないのです。

同様のことが国政選挙でも行われています。

国民は国政選挙によって「自分たちにとって良い政策をしてくれる候補者」を選ぼうとします。ここでのポイントは「自分たちにとって良い政策」という部分になります。決して「国全体として良い政策」というのではないのです。そのため、多くの候補者は、国民が心地よくなることばかりを言うことになります。

しかし本当は、現下の財政状態を考えれば、増税が具体的に政策の中に組み込まれないと、絶対に将来の経済が立ち行かなくなるというところまできています。たとえ、ほんの一時期、「特別会計」と呼ばれる一種の「政府貯蓄」を流用することができたとしても、それはずっとあるものではないので、そう遠くない将来には、大幅な増税を強いられることは火を見るよりも明らかです。

それにもかかわらず、財源論は後回しにして「心地よい話」をする政党は本当に良い政党なのでしょうか。また、他方では「景気が良くなってから増税を考えます」ということで、さも「財源を示している」と思い込んでいる政党もあります。「財源を示さない」のは困ったものですが、「景気が良くなってから増税」というのも、財源を示しているのではなく、単に"取らぬ狸の皮算用"なのであり、何も示していないのと同じです。

とはいえ、「私たちが政権を握れば、必ず、増税をし、財政の健全化を図ります」という政党があったとして、みなさん、一票入れますか?

これは入れにくいですよねぇ~。当該政党が政権を取ると、必ず、増税をするわけですから、庶民にとっては「イヤ!」ですよね。できれば、そのような政党が政権政党になって欲しくありません。

このように反応するだろうということは、国民に選ばれる側の政党もわかっています。したがって、表立って「今すぐ増税をします」とは言わないわけです。

となると、各党とも財政規律に関することは何も言わず、「財政規律」という意味からすると、むしろ、真逆の「バラマキ政策」を訴えることになります。しかも、そのバラマキ具合が大きいほど「国民受けが良い」となると、ますますエスカレートする政党も出てきます。一部では、『「民」が弱っている、今こそ、「公」が財政出動し、国家が雇用を造るべきだ』などという財政規律のカケラも見えない政党まで現れています。

このような中から選ばないといけないわけですから、本当は一番投票してはいけない候補者に、国民は投票してしまうという可能性も高いわけであり、「極めて危険」といわざるを得ない状態といえます。

これはレモン市場の「逆選択」と全く同じ構図です。

国民からすれば「覚せい剤」に近い存在である「バラマキ財政」を大いにやるという政党が、国民にとって最も「有益」と錯覚されてしまい、選んでしまうことによって、結果的に放漫財政を継続させ、国家破たんの危機を増幅させることになってしまうわけです(国家破たんしなくても、ハイパーインフレや深刻な通貨安を引き起こす可能性があります)。

「選択」というのは、本来、提示された条件の中で最善なものを選ぶことによって、より良い結果を得るための行為なのですが、国政選挙では「提示された条件」によって、"個人的"に最善のものを選ぶことになるので、国家レベルでは最悪な結果になる可能性があるのです。

そうならないためにどうすべきなのでしょうか?

レモン市場(中古車市場)の場合、「購入後、一定期間の保証期間を設ける」というのが、かなり有効に作用します。レモンを販売しても、保証期間中であれば、ピーチと取り換えられてしまうわけですから、販売会社はレモンを仕入れなくなってきます。これを選挙に例えると、実績として「悪い政策しかしてこなかった政党」には、その後、投票しないことが有効であることを意味します。したがって、今までの実績をしっかりと見据え、結果が悪かったのであれば、国民として「駄目」を突き付け、政党に是正を促すべきなのです。

もう一つは「選ぶ側」が大人になることです。

中古車市場でも「安いもの」ばかりに目が行く消費者が多いと、市場全体が「レモン」化してくるのであり、ピーチが減ってくるのです。消費者側が「質」を見る目を持てば、「安かろう、悪かろう」の市場から脱却し、品質の良い市場が生まれるものです。選挙も同じであり、財政規律を無視するようなことばかりを言う政党に"No"を示し、真に「国家のため」を重視すれば、自ずと「骨のある候補者」が増加すると思います。

とはいえ、すでに候補者も出そろっています。その中でどのように選ぶべきでしょうか?

現在国民は、定額給付においても"No"の意思表示をしたくらいに「大人」になっています。財政の健全化についても、かなり理解しているように感じます。ところが、各政党とも、その事実を理解していないようです。その意味から、小選挙区制で難しいとはいえ、政党のマニフェストや単に宣伝しているまやかしの言葉に乗るのではなく、個々の「人(候補者自身)」をしっかりと見極めた上で、「次の日本を託せる」と感じる"人"を中心に選ぶべきだと思います。人を中心に選ぶことにより、結果として、今後の日本のために良い人たちが「"新たな枠組み"を作ることになるのでは・・・」と私は考えています。



講師紹介
前田拓生
前田拓生(Takuo Maeda)

ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
著書:「銀行システムの仕組みと理論」大学教育出版
編集後記
 編集後記
事務局 一戸 グローバルマネー・ジャーナル第112号、いかがでしたでしょうか。

先週久しぶりに横浜の実家に帰ったので、一年振りに、慣れ親しんだ地元商店街に足を運んだところ、お店が軒並み閉店していてビックリ!

個人的には20年前に某コンビニエンスストアが出来た時(その時は周辺の3件程が閉店)以来の驚きでしたが、今回はその比ではなく、商店街そのものが消えているという感じでした。

残っていた美容院のご主人に話を聞いたところ、どうやら不景気と大手銀行の貸し渋り(実際には貸さないというより、融資条件を非現実的にきつくするということのようですが)が主たる原因のよう。。

政府の融資政策はやはり末端には行き渡りにくいものだと実感すると共に、今商売をされているような方が、来週どの政党に投票するのかに大変興味を持ちました。

来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!    

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