上海市場は本当の意味で「世界へ解放」されるのか|株式・資産形成講座メルマガ

  2009/9/2(水)  
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上海市場は本当の意味で「世界へ解放」されるのか

IMFによるSDR配分は良い動きだ

13日、国際通貨基金(IMF)は、主要通貨と交換可能な約2845億ドル(約27兆1000億円)相当のSDR(特別引出権)を加盟186カ国に新たに配分することを正式に決めたと発表しました。配分を受けたSDRは金やドルのように各国の準備資産になるほか、加盟国間の合意やIMFの仲介により、準備資産の多い国の持つ主要通貨と交換できるもので、これにより金融危機の影響で対外債務の返済などに不安のある新興・途上国を支援する考えです。

SDRは国際準備資産の1つで、その価値は米ドル・日本円・英ポンド・ユーロに連動して決定されている、いわゆる通貨バスケットです。IMFへの出資割当額に比例して分配されます。現在のSDRの配分状況を見ると、米国が約300億SDRでトップです。次いで日本が約100億SDR、その後に、ドイツ、フランス、英国、中国と続いていきます。



こうした動きを見ても、国際通貨として米ドル一辺倒だったこれまでの状況から脱していく方向が感じられます。私はこの動向は非常に良いものだと思います。

また、世界の証券取引所の市場評価が大きく変わり始めています。株式を上場している主要取引所の自社株の時価総額をランキングしたところ、香港証券取引所が1兆9417億円とトップになったことが明らかになりました。BRICsに続いて中東や東南アジアなど比較的規模が小さい市場の株価も上昇基調を強めており、欧米の機関投資家や中東の資金が流入し始めている模様です。

今回発表されている数値は、株式市場そのものが株式会社として上場しており、そこで時価総額として算定されているものです。ですから、上海証券取引所や東京証券取引所など、非上場の証券取引所は対象外になっています。



世界の主な証券取引所の時価総額ランキングを見ると、1位:香港(1.94兆円)、2位:CMEグループ(1.77兆円)、3位:ドイツ(1.46兆円)、4位:サンパウロ(1.25兆円)、5位:NYSEユーロネクスト(0.67兆円)となっており、日本の大阪証取は10位(0.11兆円)です。

対08年末比で見ると、香港市場の2.1倍増を筆頭に、CMEグループ40%増、ドイツ15%増となっていて、トップ10ではナスダックOMX以外、全て増加傾向にあります。世界の株式市場が活発に動き始めていると見て良いと思います。ただし、それぞれの証券取引所では扱っているものが異なります。コモディティ、オプション、デリバティブなどを一式扱っているところもありますから、一概に日本の証券取引所と比較できない側面もあるでしょう。


●中国が市場を開放することが、本当にありえるのか?

上海市の屠光紹副市長はこのほど、上海証券取引所では来年から外資系企業の株式上場が認められるようになることを明らかにしました。2020年をめどに、上海証券取引所を国際金融センターに発展させる長期発展計画の一部とのことです。

先に見たような国際金融の流れにおいて、これは非常に重要な意味を持ってくると思います。現在のところ、上海市場には外資系企業は上場することができません。2020年までに国際金融化するとのことですが、現状から考えれば、まさに夢のような出来事だと言っても過言ではないでしょう。

上海市場に上場すれば、かなりの高い倍率が期待できますから、外資系企業はこぞって上海市場で上場したいと考えるはずです。しかしそのような事態になって世界の優良企業が上海市場に入ってくると、相対的に中国企業が「見劣り」することになるのは間違いありません。その結果、かなり大きな規模を誇っている中国の国営企業までが、相対的に相当の不利を被る可能性があると私は見ています。こうした事態への対処の目処はまだ立っていないのではないでしょうか。

ちょうど1年ほど前、中国政府は独占禁止法を施行しました。カルテルや市場シェアが高い企業の「支配的地位」の乱用を禁止し、海外企業を含めた企業の合併・買収を規制すると発表したのです。この時の中国の狙いは「外資企業による買収・シェア獲得の防止」だったと私は思います。外資の企業に対して独禁法を盾に中国が恣意的な行動に出る可能性も高いと踏んでいました。

国策として国有企業による独占を許可してきたという歴史を持つ中国ですから、今回の発表についても私としては手放しに喜ぶことはできず、さらに追加情報を待ちたいというところです。総論としては許可するけれど、各論で細かい「縛り」をかけてくる可能性もあるでしょう。今後の中国政府からの発表を注意深く見守っていきたいと思います。


講師紹介
大前研一
ビジネス・ブレークスルー大学院大学学長
大前研一

8月16日放送
「大前ライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。
大前研一学長語録
 ブレークスルー経済学
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。

第107回 『「民主党の戦い」は、ここからが本番!?!?』

民主党が圧勝しました。武力というような物騒な方法ではなく、正々堂々と政権を奪取したわけですから、「国民の想い」をしっかりと受け止め、これまでの自民党の政策、特に「市場原理主義」的な政策には「必ず終止符を打つ」など、マニフェストに沿って、実効ある政策を推し進めてほしいものです。

また、選挙戦でも盛んにアピールしていた「脱官僚」についても本腰を入れて実行し、国民目線による予算の適正な執行を目指していただきたいと思っています。

個々の官僚が「悪い」という意味ではないのですが、現状の予算配分のメカニズムを考えれば、非効率な使われ方になってしまうのも当然だと思います。それを変えていくためには、予算配分メカニズムに、政治(国民)が「どのように絡んでいくか」ということがポイントになると私は考えています。

ここで「現在の予算配分メカニズムでは非効率な使われ方になってしまうのは当然」と書きましたが、この点について、まず、簡単に解説します。

本来、予算配分は「必要額を積み上げていって、その総額を要求する」というのが筋であり、当局からすれば「そうなっている」と話すはずです。が、各省の予算が、毎年、ほぼ同じ額なっていることからみて、実際には別のメカニズムが働いていると考えられます。つまり予算は、各省がある程度慣例に従って大枠を決め、完全に終了してしまったプロジェクトを別のものに置き換える時にも、その金額を代替前のプロジェクトの金額と同じになるように調整している可能性があると思われます。

「いやいや、そのようなことはなく、必要額を積み上げたら、たまたま同じ額の請求になっているだけだ」と反論されるかもしれませんが、「たまたま同じ額」というのは「如何なものでしょうか」と思ってしまいます。しかもその「必要額」が、国民の目からみれば「無駄」である場合も多いのであり、「今まで行っていたから」「先例に従い」という部分があるのであれば、それは「精査していない」のと同じであり、単に大枠だけを決めて「そこに適当に政策を付けただけではないか」と言われても仕方ないのではないでしょうか。

このようにならないためには、予算を作る場合、毎年、"ゼロベース"で見直しをする必要があるとともに、個々の政策の必要性を国民サイドで精査することが大切になってきます。実際、民主党は「マニフェストに従い、国民にとって重要度の高いものからやっていく」と言っているので、今までのやり方を根本的に変えて、官僚が無駄遣いできないようなシステムに、是非、作り変えてもらいたいと思っています。

とはいえ、"ゼロベースで見直す"場合、「どのくらいの金額が妥当なのか」「費用対効果はどうなのか」「そもそも必要な政策なのか」など、いろいろと考えなくてはいけないことが沢山あり、しかも、それぞれ高度な専門性が求められます。そのような専門性をすべての国会議員が持っているということはないので、その点においては専門家である官僚が関与することになってきます(このような能力は、官僚の方が遥かに高い能力を持っています)。となると、予算策定メカニズムの中に官僚がある程度イニシアチブを持って参加することは避けられないことになります。

したがって、国会議員が音頭を取るとしても、実際に予算を作ってくるのは官僚なので、やはり、そこでは官僚の思惑が働き、国民にとって有益な予算にならない可能性も否めません。

以下、新しい経済学の分野であるゲーム理論の「囚人のジレンマ」という有名な考え方を使った簡単なモデルにより、官僚が出してくる予算案が、どうしても非効率なものになるということを説明します(これは単にモデルであり、現実とは異なる部分もあります)。

話を簡単にするため、官僚が2人(X省の官僚AとY省の官僚B)いて、それぞれ各省の予算案を策定するものとします。ここでX省およびY省は、全く違った役目を担っているが、予算規模は歴史的にほぼ同じくらいとします。また、官僚Aも官僚Bも「一国民」なので、予算が非効率に使われることを「快」とはしないのですが、サラリーマンでもあるので、所属する省の「省益」というものは大切に考えているとします(ここでの「省益」とは、他の省との関係において、予算規模に比較優位があることとします)。

ここで予算規模を見直すように言われ、やることを"ゼロベース"で積み上げるように指示されたとします。とはいえ、「見直し」なのだから、暗黙の条件として、現状の予算規模がシーリング(天井)になっているのは、両人とも理解しているとします。

この場合、官僚Aは「(1)内容を見直し、減額要求の予算を策定する(以下、「減額要求」)」「(2)内容を見直したが、結局は当初と同じ規模の予算を策定する(以下、「現状維持」)」のどちらかを選ぶことになります。国民の期待は(1)の「減額要求」であり、官僚Aもそれを期待されていることはわかっているはずです。これは官僚Bも同じです。

そこで官僚Aが(1)の「減額要求」を選んだとします。その時、官僚Bは(1)を選ぶでしょうか、(2)を選ぶでしょうか?

官僚BとしてはAが(1)を選んでいる以上、総予算規模(Aの予算案、プラス、Bの予算案)で考えれば、目標は達成されているのだから、自分(B)が(1)を選ぶ必要はなく、(2)の「現状維持」を選ぶことの方が合理的になります。

他方、官僚Aが(2)の「現状維持」を選んだとします。その時、官僚Bは(1)を選ぶでしょうか、(2)を選ぶでしょうか?

官僚BとしてはAが(2)を選んでいる以上、ここで自分(B)が(1)を選ぶと、Y省の予算規模が減少するので「省益が保てない」と考えるはずです。それはサラリーマンとしては許せないわけですから、Bは(2)の「現状維持」を選ぶことの方が合理的となるわけです。

ここまでは官僚Aに対する官僚Bの反応を見てきましたが、順番が逆でも結果は同じになります。つまり、官僚Aも官僚Bも、国民の意に反して「現状維持」を選んでしまうのです。これは「ナッシュ均衡」と呼ばれる状態なのですが、この均衡はお互い(官僚A、および、官僚B)にとって、非常に安定した状態であるため、官僚自身に任せていたのでは改善させることはないのです。

このモデルはかなりざっくりとしたものなので、現実はこれほど簡単ではありませんが、「何故、お互いが減額要求にならないのか」といえば、「省益」を考える官僚が予算の策定に関わっているからであると考えられます。

そのため「予算を政治主導で作る」には、予算策定のかなり早い段階から政治が関与することが必要であるということがわかります。そこで民主党では「100人を超える国会議員を霞が関に送り込む」といっているわけです。実際の「数」がこれで足りるのかは不明ですが、方針としては間違っていないように思います。ただ「ミイラ取りがミイラになる」という言葉もあるように「第二の族議員を作っただけ」という可能性もありますから、各省に送り込まれた国会議員は、あくまでも「国民の代表である」という意識を忘れないようにしてほしいと思います。つまり、当然のことですが、送り込まれた国会議員は「省益よりも国益」ということを念頭に頑張っていただきたいと思います。

他方、国民サイドでも民主党を軸とした政権がなったということで、日本版"Yes , we can!"が実現したわけですから、とりあえず、しばらくは「期待を持って見守る」という姿勢が大切だと思います。革命に近い状態なのですから、早急に判断せず、温かい目で支えてあげることも必要なのではないでしょうか。


講師紹介
前田拓生
前田拓生(Takuo Maeda)

ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
著書:「銀行システムの仕組みと理論」大学教育出版
編集後記
 編集後記
事務局 一戸
グローバルマネー・ジャーナル第113号、いかがでしたでしょうか。

「今回は自民党いましめ選挙だ」

こんな声を、投票への行きすがら、何度か耳にしました。

実際夜8時から始まった選挙速報番組では、民主党が圧勝と言える数字を叩き出していたまさにその瞬間、一般投票者の声として「民主党の掲げる具体的将来像が見えない」という内容のテロップが出たり、小選挙区投票では通常考えられない番狂わせがいくつもあったりと、「民主党を選んだというより、有権者は一旦自民党から離れた」という感じ。

その意味では、一回でここまでのシェア移動が起こる選挙を体験できたことはとても貴重だったのかもしれませんが、民主党にはとにかくこれからの4年間、国民の期待に沿う成果を着実にあげて欲しいと思います。

なお、私個人としては民主の大勝が翌日の日経平均にどう影響するか非常に楽しみでしたが、そこは既に織り込み済(もしくはとりあえず静観!?)だったようです。

来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!    

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