中央三井トラストは、実績のある海外ファンドとも提携せよ
住友信託銀行と中央三井トラスト・ホールディングスが、2011年春に経営統合する方針を固めたという発表をしました。昨年秋のリーマンショック以降の不安定な状況に対応するため、規模の拡大で経営基盤を強化する考えです。
住友信託銀行は、これまで三井住友銀行からの提携の誘いを拒否し続けてきました。今回の中央三井トラストとの経営統合で正式に住友グループから外れるということになるでしょう。これまで住友グループ内で少し浮いた存在だったことを考えると「必然」と言えるかも知れません。
一方の中央三井トラストは、金融庁に提出している経営健全化計画を提出させられているほど、経営的にかなり大きなトラブルを抱えた企業です。
とはいえ、両社が統合すると、100兆円を超える信託業務を抱えることになり、信託部門で日本1位、銀行部門で5位の巨大金融会社が誕生します。
以前、私は中央三井トラストの戦略として、日本だけでなく、海外の優れた運用会社とも提携するべきだと述べたことがあります。なぜなら、それが日本の国民にとっても有益だからです。日本の銀行窓口に、優秀な成績で資産運用できる海外の会社が出てくるわけですから、そこから日本人も世界に開かれた投資ができるようになるのです。
●マネックスグループに期待するのは、世界標準の資産運用の啓発
インターネット専業証券のマネックスグループとオリックス証券も来年1月の経営統合を発表しています。株式市況の低迷でネット証券を取り巻く環境は厳しさを増しており、両者は規模の拡大で経営体力の強化を図る考えとのことですが、私は単なる規模の拡大戦略ではダメだと思います。
北尾氏が率いる業界トップのSBIが積極的な商戦を繰り広げている中、オリックス証券としてはネット証券の草分け的な存在でもあるマネックスグループの松本氏に経営を委ねたという形式です。
確かに両者が統合すると、SBIに次ぐ業界2位の規模になりますが、規模の戦いをするとSBIの北尾氏が一枚上手のような気がします。松本氏は、SBIの北尾氏に比べるとアグレッシブな商戦を展開するというよりは、もう少し慎重な行動を取るタイプだと思います。おそらく、北尾氏ほど派手なことは実行しないでしょう。
ですから北尾氏と張り合って、規模の勝負に打って出るのではなく、私としては別の道を模索してほしいと期待しています。それは「商品の多角化」です。世界のグローバルな商品を日本の市場に持ち込んで欲しいと思います。
例えば、金融危機のボトムから比べるとトルコの株式市場は大きな回復を見せています。もしこうしたボトムのようなタイミングで「トルコの株式市場」を商品として購入できる環境があれば、日本人としても投資の幅が大きく広がっていたと思います。
そしてこうしたことが実現していけば、日本でも「国債以外に買うものがある」ということが分かってくるでしょう。世界から見れば常識的なことですが、日本は資産運用に関してかなり未熟です。日本人の資産運用にグローバルな感性を植えつけるべく、啓発してくれるのであれば、今回の合併は非常に価値があるものになると私は思っています。
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