日本の最大のお客さんは、中国ではなく未だに米国だ
財務省が先月27日発表した2009年の貿易統計速報によると、輸出額は前年比33.1%減の54兆1827億円となりました。比較可能な1979年以降で、過去最大の減少幅を記録したとのことです。
日本の輸出入額の推移を見ると、2008年以降急激に輸出が落ち込む一方、輸入も同時に激減しているため、幸い「貿易収支」という意味ではそれほど悪化していません。また主要国への輸出額の推移では、初めて中国に対する輸出が米国に対するそれを上回りました。
しかしこの統計数値から、日本にとっての最大のお客さんが米国から中国に変わったと考えるのは間違いです。というのは、中国経由で最終的には米国へ流れているからです。ですから米国内での日本製品のシェアが大きく減っているわけではありません。
「中国が最大のお客さんになった」との報道もあるようですが、単に新聞記者の人が中国の「パス・スルー経済」という概念を理解していないための誤解でしょう。今でも米国が日本にとって最大のお客さんであることに変わりありません。
中国への輸出額の中には、中国現地の子会社に輸出し、そこから米国へ輸出されているものがカウントされています。最終的にどこに行き着くのか?という点を見据えた統計数値にしないと、このような誤解は今後も起こってしまうと思います。
●国が資金調達する手段が、いよいよ限られてきた
世界的な金融危機を受けて、政府による国有財産の売却額がこれまでになく落ち込んでいます。2008年度は売却額が約1200億円に落ち込んでいましたが、2009年度は1000億円前後となり、ピーク時の4分の1ほどに縮む見通しです。
この問題に関して言えば、もはや日本国内には価値のある国有財産はほとんど残っていないということをまず認識するべきだと思います。特に、田舎で使用価値の低いところにはほとんど価値のある財産が残っていません。国有林や民有林を見ても、それほど高い価値は認めらないのが現状です。
今後はこれまでの発想には出てこなかった「国が保有している財産」まで売る必要があると私は思っています。
それは、例えば東京大学などの国立大学です。東大は独立法人化しましたが、未だに都心の一等地に巨大な土地を有しています。東大なら3兆円の資産を持つハーバード大学への売却が成立するかも知れません。
あるいは、霞ヶ関・永田町を移転して、その土地を有効活用するというのもアリかも知れません。遠くに遷都してしまうと不便になりますから、多摩地区もしくは湾岸などの都内に移転するのが良いと私は思います。
こういうことまでやらなければ、日本の国有財産をお金に変えることは難しい時代になってきたのだと感じます。
また、2009年度の個人向け国債の販売額が前年度比4割減の約1兆3000億円に落ち込んでいます。03年度に本格的に国債の個人向け販売が始まって以来、最低となっています。個人向け国債は一時期売れた頃もありましたが、完全にその魅力が失われてしまったという状況でしょう。
こうなってくると国が資金を調達する手段としては、「郵貯」「簡保」「(金融機関が購入する)国債」くらいしかありません。いよいよ「詰んできている」状況に追い詰められつつあると私は感じています。
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