株価は本当に半年先を予測して動くのか? ソロスの言葉から市場を読む|株式・資産形成講座メルマガ

  2010/2/24(水)  
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株価は本当に半年先を予測して動くのか? ソロスの言葉から市場を読む

今後の株式市場を読み解く最重要キーワード「再帰性」


今年だけではなく、今後の株式投資を考える上では、常に重要なキーワードであり続けるのが「再帰性」だと私は考えています。この再帰性とは、米国の著名な投資家ジョージ・ソロスの著書『ソロスは警告する 超バブル崩壊=悪夢のシナリオ』(講談社)に出てくる言葉です。 ではここで、『ソロスは警告する』で語られている「再帰性」という言葉の意味を、私なりの解釈で簡単に説明しておきましょう。 まず人間が何らかの行動を起こすと、それが株価に反応し、そして株価が反応したことによってまた自分自身の行動が変わってきます。このように相互に作用しあっていくことを「再帰性」と言います。自分が何かをしたから物事の因果関係が生まれるのに対して、再帰性では、その因果が結びつかないということが特徴です。

再帰性は、非常に面白い考え方です。従来の株式投資では、「株価は6カ月先ないしは一年先を予測して動く」、つまり「株価は先見性がある」ことが常識とされてきました。私も昔からさまざまな書籍を読み、そう考えてきましたが、現実ではそれとは相容れないことが何度も起こります。しかし株価に先見性があるか否かではなく、再帰性というキーワードで「株価が下がったことにより、景気が悪化している」のだと読み解くとどうでしょう。 『このままではマズイのではないか』という投資家自身の気持ちで本当に景気が悪くなってしまうと考えられるわけです。これがまさにパニックの典型であり、私たちはこれから何度も同じような状況に遭遇すると私は考えています。


■株価の暴落や暴騰、バブル経済は、投資家たちの誤解や誤認から起きる!? 再帰性について、もう少し深く考えてみましょう。 私は今から1年くらい前に、機会を捉えては、「2009年は、再帰性を理由に株価が上昇する可能性が高い」と発言していました。再帰性により、「株価が下がると考えると実際に企業業績や景気が悪くなる、原因と結果が結びついていない」のであれば、その逆に「何かがよくなるという発想を多くの人が持てば、そこでも連鎖が起きて株価が暴騰する」のではないかと考えたからです。『ソロスは警告する』には、そこまでは書いてありませんでしたが、私はそのように解釈したのです。 再帰性において最重要視すべきキーワードが「バブル」であり、同書で非常に面白いのが「バブルが生じるには、何らかの形の信用とレバレッジ(借入金)と、何らかの誤解もしくは誤認が必要である」という仮説です。バブルが誤認であれば、バブル崩壊もまた誤解である可能性が高く、また何らかの因果がよくなれば誤解や誤認が生じてバブルが起きてもおかしくはないと考えられるからです。

まず最初に、「誤解や誤認が起こるとはどういうことか」を考えてみましょう。一言でいえば「よく判らない」ということになります。 私の経験を例に取れば、私が運用業務をスタートしたのは、ITバブルの最後ほとんど崩壊という2000年頃でした。その頃からずっとIT業界を担当していますが、当時は、IT企業は年率100%ずつ成長するのが当たり前、IT環境で言えばADSLも無く自宅でインターネットは電話回線を利用したISDNの時代でした。それが今はADSLもしくは光ファイバー全盛です。何がどう変わるかは、当時は誰にも判らなかったわけです。でも期待が期待を呼び、誤解に誤認が生じてITバブルが起こり、そして崩壊しました。最も重要なのは、その後に起きた「ITバブル崩壊の過程を通して、例えば楽天やYAHOO!、そこから付随してさまざまな企業が誕生し成長してきたこと」、「崩壊の過程でも本物はしっかり残り、株価がちゃんと上がっていく」ということです。

今回で言えば、誤解、誤認が生じた原因は、金融もしくは国家に対する「信頼の剥落」にあったと思います。株価が大きく下がった時にアイスランドが債務不履行を起こすなど、まずつぶれないであろう事業会社の中でも、限りなく高い信頼度だったはずの金融機関が破綻してしまったこと。それが投資家の信頼を壊してしまったのです。しかし信頼の剥落が「誤解」にすぎないのだとしたら、逆に信頼が戻ってくればバブルが生じる可能性もあるのではないでしょうか。重要なのは「利下げ」というキーワードであり、「異常な低金利は、リスクマネー膨張によりバブルを生み出す」からです。 それを具体的に示すために、ITバブル崩壊後の米国FF金利と株価それぞれのデータを連動させてみましょう。バブル崩壊で相当に金利が引き下げられたFF金利は、その後は低金利で維持し、再び景気が回復し始めた時に金利が引き上げられました。そして今回の巨大バブル崩壊でまた金利が引き下げられ、今ではゼロ金利という流れです。


2003年頃の日本の状況を例に挙げれば、りそなホールディングスの国有化という金融機関に対する誤解、誤認が起きましたが、その後、みずほや三井住友、三菱UFJは破綻していません。私は当時、UFJに在籍していましたが、みずほ銀行の友人と今度はどちらが先に破綻するかを真剣に語っていた記憶があります。それくらい、どの金融機関が破綻してもおかしくないと思われていましたが、でもそれは結果として「誤解」に終わりました。 この時に起きたのが、誤解が解ける前に株価が一回上がる、誤解が解けた後は利上げが起こり、本当に景気が回復しているから業績が上がるという流れです。まず金融株が、そして次に業績が上がるという二段階で上がっていきました。今回の米国不況でも同様に、2009年3月に発表された「シティグループ業績が1~2月に黒字化」というニュースで誤解が解けたことにより、株価が暴騰する可能性があるのではないでしょうか。

次の段階に進む時、必要なのが「低金利」と「株価」の2つです。リスクマネーが大きくて低金利であるならば、今まで例えばコストに1万円払わなければ借りられなかったお金が500円ですむということになります。もっと言えば、いま米国は金利ゼロで非常にコストが安く、そしてそれを何かに変えることが可能なのだからリスクマネーが膨張する、その膨張したものがまた株式に戻っていくという流れが起こりやすいタイミングにあります。 2003年の事例を参考に、私たちが今後考えなければいけないことは「利上げ」であり、「利上げに向かう局面において株価がどう反応するのか?」の2つということになります。日本はあまりよくないですが、米国においては、株価上昇→企業業績の回復→消費行動の回復の流れによりかなり回復したという再帰性がすでに起きています。


■"サプライズ、米国株との連動性、株式市場を肌で感じる"の3つで2010年を読み解く! これから本当に株価が上昇し、バブル相場に移行するためには必要となるのが「サプライズ」です。例えば、金融機関がつぶれてしまうかもしれないという誤解があったにも関わらず、でもつぶれなかったこと。3月の株価上昇や次に起きた7月の企業業績上昇。それまで内需ばかり見ていた日本政府が事業規模にして24兆円にのぼる第二次補正予算を通す、日銀が量的緩和を一年ぶりに回復させたことなど、誤解が解消していくことがサプライズです。ゴールドマンサックスが市場予想の6割を超える決算を発表したこと、同じようにインテルが市場予想よりも大きく上方修正したことなども全てサプライズが大きく関わっています。

日本の金融や企業業績の上昇を分析するためには、2つのことが重要となります。 まず最初が、「米国株との連動性を考慮すること」。日本と米国のどちらが主体なのかを考えた時に、残念ながら米国が主体である以上は、今の1回目の金融の上昇も米国の金融株がどうなっているのかを分析しなければいけないし、次の上昇の時も米国の企業業績がどうなのかを見なければ判らないこということになります。


次が、「株式市場の動きを肌で感じることの重要性」です。 株を買った時や株価の上昇局面では、ある種の興奮状態にありますが、しばらく経つとそこにある空気と同じになってしまい飽きてしまいます。

パニックになっている時には、それを回復しようとみんな一生懸命なので興奮状態で株価もワーっと上昇しますが、いったん落ち着いてみると、「あれ?これは偶然上がっているだけではないだろうか」「この前のボトムから見ると株価が倍になっているから、バブルではないのか」など、「今もうバブルではないのか」という議論が起こります。 ですから、前述したサプライズに対しても、「そこには"幻想"や"誤解"がまだあるのか否か」を充分に見極める必要があります。まだ大きな幻想や誤解があるのであれば、それが解消していく過程で、その誤解が生じている間に株価は大きく上がっていきます。そして前回の時に新興国や資源などがこれほど業績がよくなると予想できなかったのも、幻想や誤解が金融だけではなく企業業績などの部分にもあったからです。「同じことが今回もあてはまるのか?」 を議論していく必要があるでしょう。

そしてその次には「今までとは異なる人たちが参加する」、さらに次には「バブルは"信用"にレバレッジをかけてくる」という状況が起こります。 先ほど信用崩壊で株価が下がったと申し上げましたが、逆に何かに対する信用があればレバレッジが変わってきます。レバレッジを判りやすく言えば、「借金してでも株を買ったほうが得」だということです。例えば1980年代には、不動産は買えば上がる、上がれば売れるわけですから、借金してでも不動産を買ってそれを転売すればいいじゃないかという状況になりました。こうした猿でも判る状態が、つまりバブル経済ということなのです。

ここで私たち投資家が考えなければいけないのが、「新興国という国の"信用"がレバレッジの対象となるのではないか?」。これから業績がサプライズを起こす場は、もう中国、インド、ブラジルなどの新興国しか残されていないからです。 そういう企業もしくは国にフォーカスした場合に必要なのが、モラトリアムから誤解が生じて株価が上昇する、次に企業業績のサプライズが起こる局面で「バブルが起こるのか否か」まで考えておくこと。そしてもう一つ必要なことは、株価の転落を「一過性と見てバブルが来る」と見るのか、「このまま転換点になるのか」を見極める徹底的な議論です。

これ以上さらに上昇するためには、どうしても「バブル的な要素が求められる」のですが、「いやバブルは無理だろう」と思えば、今から投資するのはもう遅いということですし、「バブルが来る」と思うのであれば今からでも決して遅くはないということです。私個人は、これからバブルがやってくるのではないかという仮説を持っています。

講師紹介
大前研一
株式会社きのしたてるのぶ事務所
代表取締役
木下 晃伸

新刊著書:「巨大バブルがやって来る!~金融危機終息後の「モラトリアム相場」の読み方~」 小学館 (2009/7/30)

2月9日放送
「金融リアルタイムライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。
編集後記
 編集後記
事務局 一戸 グローバルマネー・ジャーナル第135号、いかがでしたでしょうか。

春節で賑わっていると聞き、横浜中華街に行きました。

感想を一言で言うと、やはり中国人は「超元気!」。

買う側も売る側も勢いがあり、私も気付くと甘栗を買わされていました。。


投資の世界でも、チャイナマネーをいかに呼び込むかという話が良く出ます。

先週観たガイアの夜明けでは、中国人投資家の集団が世界一高いドバイの「ブルジュ・ハリファ」が幾らで買えるかを真剣に尋ねていたくらいですし、中国のパワーには、これからますます驚かされそうです。

来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!

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