保険運用、年金運用に見る日本の資産運用状況
金融庁は生命保険会社と損害保険会社の資産運用制限を緩和する方針を明らかにしました。国内株式や外貨建て資産での運用をそれぞれ総資産の3割以内に抑えるといった規制を撤廃し、海外を含めた柔軟な運用を認める方針に転換するもので、国内の保険市場が頭打ちとなる中で、各社が運用や事業のグローバル化を迫られていることに対応する考えです。
正直に言って私は驚きました。これまでの資産運用制限を緩和するというのは、「国債離れ」を意味するからです。もっとも、私から見れば、国債ばかりで資産運用する方が「悪」であり、このような方針転換は「当たり前」だと思いますが。
しかし、財務省にとっては「金融庁は罪を犯した」というくらい大きなことだと感じているでしょう。何が何でも国債を買うのではなく、海外を含めて自由に資産運用できるようにするというのは、そのくらい衝撃的です。
これによって、少なくとも生損保の資産運用ははより自由になります。逆に言うと、「そうせざるを得ない」状況なのだと言えるでしょう。「国債のリスク」を鑑みて、保険は国債リスクから離れるべきという判断なのだと思います。
一方、公的年金運用については、「09年度の運用利回りが7.91%、運用益は9兆1850億円と市場運用を本格的に始めた01年度以降、過去最大だった」と紙面ではポジティブな見解が目立ちました。
しかし私に言わせれば、何を脳天気なことを言っているのかと思います。確かに09年度は7.91%だったかも知れませんが、過去9年間で見ると平均運用利回りはたった「1.55%」に過ぎません。05年から運用利回りは下落し、06年途中から08年まではマイナスに転じていて、09年になってようやく回復しただけです。
日本の場合、予定運用利率が3.2%を上回らないと期待する年金を受け取れませんから、明らかに合格ラインに達していません。シンガポール、ノルウェー、カナダの年金運用利回りは、平均で7~8%くらいです。シンガポールなど、リーマンショック以前には一時10%ほどの運用利回りになっていました。
グローバルに運用していれば、このくらいの数値を出すのが当たり前ですし、それを目指すべきです。それに比べれば2%にも満たない日本の年金運用利回りを誇れるはずもありません。「09年度は約8%になりました、素晴らしい」ではなく、こういう点をきちんと報道してもらいたいところです。09年度だけ年金運用をしている人などいないのですから。
●コロンビアは、VISTA各国に負けない有望株だ
コロンビアのベルムデス外相は先月、日本との間で進めている投資保護協定については近くまとまるとの見通しを示しました。コロンビアのインフラに加え、石油や天然ガス開発を有望分野とし、外資を活用した開発を加速させる意向を示しています。
コロンビアは非常に将来有望だと私は感じています。2期続いたウリベ大統領から、サントス大統領に引き継がれ、ゲリラの掃討作戦など国内の体制整備も着々と進んでいます。一昔前なら、メデジンという都市名を聞くと「麻薬」を想起した人もいるでしょうが、今では治安も落ち着く傾向にあり、別荘地としても有望です。今後、インフラ整備を早急に進めて欲しいと思います。
BRICsに続く経済グループとして「VISTA」(ベトナム・インドネシア・南アフリカ・トルコ・アルゼンチン)への期待が高まっていますが、私はこの中にコロンビアを加えるべきだと思います。
コロンビアの主なマクロ経済指標をVISTA各国と比較して見ても、全く見劣りしません。人口は「約4500万人」でアルゼンチン(約4000万人)を上回っていますし、1人当たりGDPも約5000ドルでインドネシア(約2300ドル)の2倍近い数値です。十分に合格ラインに達していると見るべきでしょう。
そしてコロンビアは非常に良い人材に恵まれています。これまでは国内で仕事がなかったために海外に出ていた人材が、国内に戻ってくると大きなインパクトを生み出せると思います。これはインドと同じ図式です。
特にホテルなどのサービス業に従事していた人が多いようですから、これから観光業を伸ばしていこうとするなら、うってつけの人材だと言えるでしょう。またサービス業以外にも、スペイン語のコールセンターなどのBPO業務や農業なども期待できる分野になっています。
治安も改善しつつありますから、良い政府が続けばコロンビアは躍進してくるだろうと私は見ています。新しいサントス大統領が活躍してくれることに期待しています。
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