世界のホームレスマネーの行き場
東南アジア株式相場は軒並み上昇し、インドネシアとフィリピンで史上最高値を更新しました。また、ソウル市場でもウォン相場が上昇。米国の金融緩和継続や先進国の景気に対する過度な悲観論が和らいだのを背景に、運用リスクをとりやすくなった海外マネーの流入が増えています。
この事実が物語っているのは、世界に漂う「ホームレスマネー」の行方です。今年のインドネシアは相当に調子が良いと思います。また、フィリピンは政権交代が安心材料として見られているのでしょう。ウォン相場がウォン高圏に上昇したことで、日本の競争力の回復にもつながるかも知れません。
東南アジア主要国・証券市場の株価指数を見ると、2008年9月頃にはインドネシア・タイ・マレーシア・シンガポールはほとんど横並びでした。そこからインドネシアがいち早く抜け出し、この半年でタイも急激な伸びを見せています。タイは政治的な混乱が続いていますが、それでも有望だと私は見ています。
2010年10月4日号のTIME誌によると、世界のホームレスマネーの行き場は次のようになっています。
・英国:約1.9兆ドル
・スイス:約2兆ドル
・ルクセンブルク:約0.8兆ドル
・カリブ海諸国:約0.9兆ドル
・香港、シンガポール:約0.7兆ドル
この内訳を見ると、結局、世界の資金というものは同じ経路を辿るのだと分かります。中東マネーだろうが、ノルウェーマネーだろうが、英国、チャンネルアイランド、スイス、そしてルクセンブルクを経由して、全世界へ分散投資されていきます。この流れは依然として変わっていないと言えるでしょう。
●揮発性が高いのは豪ドルの特徴の1つ
シドニー外国為替市場の豪ドル相場は堅調に推移し、2年ぶりに1豪ドル:1米ドルがおよそ1:1の水準にまでなりました。今年の対米ドルでの上昇率は7%となり、対日本円の10%に次ぐ水準となっています。
実はわずか1年半前には、1豪ドル=約0.6米ドルまで落ちたこともありましたが、そこから持ち直して、今豪ドルは急速な勢いで上昇しています。歴史的に見ると、豪ドルは揮発性の高い通貨だと言えます。過去には米ドルを抜いた時期もありましたし、それも珍しい事態ではなかったと思います。
これは、オーストラリア人自身が、豪ドルと米ドルのどちらを保有する方が有利なのかを判断し、保有通貨を変えることに起因しています。この辺りの感覚は日本人にはないもので、日本人が苦手とするところです。
資源株などの調子もよく、豪ドルは今のところ相当強くなっています。ただ日本円はそれ以上に強くなっていますから、日本円から見ると「豪ドルは安くはないが、日本円ほど高くはない」といったところでしょう。
●米ドルもユーロも頼りにならず、一際上昇する金価格
欧州の中央銀行が、10年以上続けていた金の大量処分に終止符を打ち、保有する金の売却をほぼ停止したことが明らかになりました。金融・財政危機を経験した欧州各行が金を再評価していると見られます。
今までスイスの銀行などは莫大な金のリザーブを売り飛ばし続けてきましたが、いざという時のためには「保有しておいたほうが良い」という風向きになってきたようです。
この10年間の金の保有量の推移を見ると、ドイツは約3,500トンで変わっていないのに対して、スイスは約2,500トンから約1,000トンまで下がっています。約1,500トンも売ってしまった今になって金の価格は史上最高値となり、スイスにとっては悪夢のような状況だと思います。ECBも2005年から少しずつ金を売っていましたが、この状況を見て、金の売りをストップさせました。
2000年には1トロイオンス約300ドルだった金価格は、最近さらに急激に上昇し、今では史上最高値を更新し、1400ドルに達する勢いを見せています。米ドルもユーロも頼りにならないのであれば、ヘッジ先として「金」に頼らざるを得ないという状況だと言えるでしょう。
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