ゼロ金利・量的緩和で不安視される、将来の「出口戦略」|株式・資産形成講座メルマガ

  2010/12/15(水)  
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ゼロ金利・量的緩和で不安視される、将来の「出口戦略」

FRBの量的緩和政策が狙うのは、「リスク資産の価格上昇」と「株価上昇」か

これまでの政策金利動向を振り返れば、まず第一に、「ほぼゼロ金利まで利下げをして、金利面では緩和が限界に至った」、そして第二に、「にもかかわらず景気が再度減速局面を迎え、今度は追加的な量的緩和を実施せざるをえなくなった」という形で動いています。ドル・キャリートレードは、ゼロ金利と量的緩和を背景に「ドルを売って、相対的に金利が高い他の通貨を買う」ということですが、先進国の金利には大差はなく、基本的にはどの通貨を売っても大差無いでしょう。


皆さんが一番知りたいのは「では何故ドルなのか?」だと思いますが、それは「量的緩和の規模が、他の国とは違う」ことが心理的に大きく作用していると思います。結局はバランスシートを中央銀行がどれだけ膨らませるかということになりますが、中央銀行のバランスシートの推移を見るとFRBはQE2(量的緩和第二弾)で6000億ドル買うということなので、ここから更に大きくひと伸びすることが予想されます。


ただしそれについては是非もあり、一部では将来のインフレの火種となるなどマイナス効果があるなどの懸念もあります。また、FRBが米国債を買えば、もちろんある程度のインフレ期待に作用することはできるでしょうが、すぐに一般物価に影響を与えることができ、デフレを回避できるのかと言えば、それほど単純な話でもありません。つまり、効果があいまいなわりにリスクが大きいとの批判が散見されます。 では、そもそも何を期待して今回のQE2に踏み切ったかというと...。量的緩和により、資産インフレを狙っていると解釈したほうがいいかもしれません。より具体的には、特に以下の2つの効果が期待されていると考えられます。

1.リスク資産の価値が上がる
まず一つ目が、FRBの米国債購入により、米国債に回っていたお金がある意味で押し出されて「他のリスクのある資産にお金が回る」ことを期待していること。それは株価かもしれませんし、不動産かもしれませんが、いわゆる量的緩和により資産価格の上昇が期待されているということです。

2.その結果、家計のバランスシート調整が促進される
マクロでみれば家計のバランスシートの中に占める株式の割合は相応に大きく、株価が上昇すれば資産サイドの増価が期待されます。家計は主として住宅価格の下落によるバランスシート調整の最中ですが、調整する期間が短縮される可能性があります。また、いわゆる資産効果で消費が刺激される部分も出てくるかもしれません。

そのためには、債券利回り(=長期金利)が低下ないし低位安定することが必要で、それを通じて株価や不動産価格が上昇することが一番望まれていたわけです。しかしこの点に関しては、足元ではそうはうまくはいってないように見えます。基本的な狙いは、「資産インフレ経由でデフレ脱却、バランスシート調整の進捗」という作戦ですが、10年債など期間の長い金利は、長期的なインフレ期待の高まりによって上昇しています。大量の資金を供給して資産価格を押し上げる行為は「劇薬」とも言えるわけで、最近の経済指標が比較的良好なだけに、市場がその点についてセンシティブになっていることの表れといえるかもしれません。


●資産インフレ経由でデフレ脱出作戦の問題は、「出口戦略」と「通貨価値低下をどう防ぐか」!

今はそれほどの悪影響はないと思いますが、長い目で見た場合、一番難しいのは「手仕舞う時」でしょう。まずはそのタイミングを見失わないようにすることが大切だと思います。そうしなければ、実際にインフレのリスクが増します。また、出口戦略に着手し、大量に供給されている資金を引き揚げる際には、相応のインパクトが生じる可能性があります。すなわち、資産価格に悪影響が及ぶ可能性もあります。将来のある時点において、迅速さと慎重さ、ふたつの矛盾する課題に取り組まなければいけない、という困難に直面することになりそうです。

現状、FRBのみならず日銀、あるいは他の一部先進国中央銀行も、ゼロ金利政策ないし量的緩和(大量の資金供給)に踏み切っています。その結果、「通貨全般の価値に疑問符がつく」のは理解できます。すなわち、通貨の「価値保蔵機能」に疑問符がつくということです。そこで、資産価値を維持する手段として「金」が着目されているわけです。金利がゼロであるため、金を保有することによる機会費用が低下しており、また通貨価値の下落リスク(長期的なインフレリスク)に備える目的から金は人気を集め、特に2009年から金相場は加速して上昇してきました。


ただ、金の価格自体も少々「行き過ぎ」かもしれません。金は適正価格がないのでなかなか判断が難しいのですが、もし量的緩和が止まり、またゼロ金利政策が解除され、さらに利上げという話にでもなれば、1400ドル/オンスまで上がっている金相場が悪影響を受ける可能性はあるでしょう。いま金価格がここまで勢いよく上がっていますが、(当然まだ時間はかかるものの)将来その先で通貨に金利が付き始めた瞬間に、金は下落リスクに直面する可能性があります。いまの上昇が行き過ぎとすると、反動が思いのほか大きくなるかもしれません。


講師紹介
大前研一
クレディ・スイス証券
債券本部 外国為替調査部長
チーフ通貨ストラテジスト
深谷 幸司

11月25日放送
「金融リアルタイムライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。
編集後記
 編集後記
事務局 一戸 グローバルマネー・ジャーナル第174号、いかがでしたでしょうか。

5年間お世話になっていたパソコンが壊れてしまったので、OSやメーラーなどを一新することになりました。

新しいOSへの慣れやソフトウェアのインストールし直しなど、前と同じように使うにはまだ少し時間がかかりそうですが、そんな中、メールソフトの便利機能などは「進化しているな~」と感心させられます。

有料・無料を問わず似たような製品が次々にリリースされる昨今。

どんな商品も、またそれを作る企業も、やはりこうした「かゆい所に手が届く視点」が、顧客から長く支持され続けるポイントでしょうか。

来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!

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