インド、ブラジルがインフレ懸念で金融引き締め
インド政府は先月30日、今年7~9月期の実質国内総生産(GDP)成長率が前年同期比で8.9%だったと発表しました。産業別では製造業・ホテル・輸送などが好調で、2007年10~12月期(9.7%)以来の高成長となったとのことです。
今インドには世界中から資金が集まりすぎて、インフレになるのではないかと心配されています。名目GDPの将来推計によると、2020年の時点では日本が約6兆ドル、インドが約3兆ドルとなっており、まだ日本が上回っている見込みのようです。
ただし、この計算の根拠としているのは「現時点でのドルとの交換レート」ですから、将来ルピーの値段が跳ね上がった場合には2020年の時点で日本のGDPを上回っている可能性もあるでしょう。私としては2025年くらいではないかと見込んでいます。
また、ブラジルにもインドと同様、国内に資金が入り込み過ぎており、インフレの懸念があります。過去にブラジルはインフレで苦労した経験があるだけに、いち早く対応し、すでに引き締めを行うことを決定しています。
ブラジル中央銀行では3日、預金準備率の引き上げを柱とする金融引き締め策を発表しました。旺盛な個人消費を背景に、銀行融資やクレジットカード利用額などが拡大傾向にあることから「バブル発生のリスクを減らす」狙いで、預金準備率の引き上げだけで610億レアル(約3兆円)の資金を市場から吸収する方針とのことです。
●中国はハードランディングの可能性アリ
今年、日本をGDPで追い抜いた中国ですが、今後日本との差をますます広げていくでしょう。中国が2006年から15年までの平均成長率で成長すると仮定した場合、2020年の中国のGDPは約15兆ドル~16兆ドルと予想されています。おおよそ日本の2.5倍くらいです。このまま一本調子で中国のGDPが拡大し続けられるのかは分かりませんが、上手く行けば2050年には日本のGDPの10倍に成長するだろうと私は予想しています。
そんな中国にも金融引き締めの動きが見られます。中国共産党は3日、2011年の金融政策について約2年ぶりに緩和路線を転換し、引き締め方向に軸足を置くことを決めました。インフレや不動産バブルの懸念を抑えるのが狙いとのことです。
リーマン・ショック後のG20で米国から「国内需要でけん引して欲しい」と要望を受けてから中国は一気に内需転換を図りました。結果として大胆な金融緩和を行いましたが、さすがに「緩み過ぎ」の印象があります。インドやブラジルと同様、国内に資金が溢れかえりインフレ傾向が見え始めたため、それを抑えようという動きが活発化しています。
そして中国でインフレをヘッジ出来るのは「金」だというのが共通認識になっています。国内の不動産が危ういとなった場合、海外不動産に移すという手も考えられますが、これは出来る人が限られてしまいます。ゆえに、取り敢えずは「金」を買っておく人たちが増加しています。今の時点で前年比5倍以上、200トン以上の「金」が買われています。
中国のCPI上昇率(物価指数)を見るとまだ4%~5%という水準ですが、実経済に対する「体感」としては違うようです。先日、私が中国の経済学者から聞いたところでは「実感値としては30%くらいある。統計は当てにならない」と言っていました。
世界全体の動きとして、「先進国は緩和」「新興国は引き締め」という動きを見せていますが、中でも中国の引き締めは「ハードランディング」につながる可能性があると私は見ています。これまでの緩和路線が強かっただけに、少し引き締めただけで中国は欧米や日本が体験した「バブル崩壊」と同じパターンに陥ってしまうかも知れません。
ブラジルなどはまだ安全だと思いますが、中国が「冷えすぎ」に陥ってしまうのかどうか注意して見ていきたいと思います。
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