社会負担2倍に耐える覚悟のある日本国民は、一体何人いるのか|株式・資産形成講座メルマガ

  2011/3/2(水)  
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社会負担2倍に耐える覚悟のある日本国民は、一体何人いるのか

日本国債がデフォルトするシナリオ

野田財務相は先月9日、国と地方を合わせた長期債務残高の対国内総生産(GDP)比が2011年度末に184%に達する日本の財政状況について「先進国の中で史上最悪」と指摘しました。また財務省は10日、国債や借入金などを合わせた「国の借金」総額が2010年末時点で919兆1511億円に達したと発表しています。



この問題への解決策として菅首相は「税と社会保障の一体改革」を提唱しています。ここには一般の予算の外側にある「特別会計」を含めて合算するという恐ろしい意図が隠されていますが、大多数の国民は気付いていないのではないでしょうか。

「日本国の運営費にはいくら必要か?」と問われたとき、いくらだと思うでしょうか。一般会計の予算が「92兆円」ですから、大体それと同等だと思う人が多いと思います。しかし、実際には全く違います。

一般会計には含まれない「特別会計」を合算し重複部分を排除したところ「日本国の運営費は約220兆円」という水準になりました。現在の日本の税収は約40兆円に過ぎませんから、全く足りません。単純に言えば、それゆえ国債を発行し無理矢理補っている、というのが現状です。

しかも日本の場合、国債の償還に関して「60年償還ルール」が適用されているため、毎年約1.6%(1/60)ずつしか返済されていません。これは、元々道路など耐用年数・効用発揮期間が長い「建設国債」にのみ認めていたルールを、1985年度から「赤字国債」にも適用したからです。

10年物の新規国債を発行した場合でも、10年後の償還時には「全体の1/6(1/60×10年間)分の金額」だけ返済し、不足する金額は「借換債」を発行して借り換えを行うのです。これを延々と繰り返し、国債の償還(借金の返済)を60年先送りしていくという仕組みです。

約900兆円の債務に対して毎年1.6%しか返済せず、利払いは続いていきます。この状況の中で約220兆円の日本国の運営費を捻出するためには、最低でも40兆円の税収を2倍にするくらいのことは必要でしょう。

あるいは、コストを半分にするという方法もあります。約220兆円のうち、最も大きなコスト負担になっているのは約35%を占める「国債の利払・償還」です。これを削るのが最も簡単な解決策ですが、それは「国債の利払いをしない、償還をしない」=「日本国債のデフォルト」を意味します。

もしそうなりたくないなら、社会保障を諦めるしかないと私は思っています。「社会保障を充実させて」などと言っている人がいますが、それならば「社会負担」を現在の2倍程度にして欧州並みにすることが大前提です。その覚悟が国民にはないでしょうし、何より致命的なのは政治家の中にさえ本気でその覚悟ができている人はいない、ということです。

私が今最も恐れているのは、今の議論が消費税の問題に発展し、国民から増税反対の意見が強くなり、政府がそれを先送りにしている間にマーケットに終止符を打たれる、つまり国債のレーティングが下がり、自ら何も決断しないまま国債デフォルトに追い込まれることであり、こうした事態は何としても避けて欲しいと思っています。


●膨らむ借金に加えて家計所得も伸び悩む国

さらに厳しい現実として、返済しきれない莫大な借金を抱えているだけでなく、日本は家計所得もずっと低迷しているということが挙げられます。これは中国のような新興国と比べてという話ではなく、他の先進国と比べても日本だけが低迷しているという状況です。

家計所得受取額の国際比較によると、米国・英国・フランスのいずれもこの20年間で増加していますが、日本だけが20年間でマイナスなのです。



90年代の半ば、このまま平成維新のような改革を行わなければ、日本はポルトガル・スペインの二の舞になって300年~400年間衰退するかもしれない、と私は警鐘を鳴らし続けました。今、それが現実になりつつあります。

更には、日本人で「日本だけが家計所得受取額が減っている」という事実を知っている人は非常に少ないと感じます。私も「景気はいつ頃良くなりますか?」という質問をよく受けますが、それはやはり「日本が長期衰退のカーブを下りはじめている」という認識がないからではないかと思います。私が「100年はダメだろう」と答えると、みな目を丸くします。

日本という国には「安全で安心して暮らせる」という良い側面ももちろんありますが、問題は「成長性がない」ことです。そして、借金だけが背後から迫ってきています。まだ「日本の現実」に対する認識が甘い人が多く、相変わらず成長期と同じパターンで考えている人が多いと感じます。せめて自分自身の生活くらいは未来指向で考えてほしいと私は思っています。


講師紹介
大前研一
ビジネス・ブレークスルー大学大学院 学長
大前研一

2月20日放送
「大前ライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。

 ※お詫びと訂正
  前号のメールマガジンにて、資産課税対象の総額を「約2000億円」と表記いたしましたが、
  「約2000兆円」の誤りでした。この場を借りまして、お詫びと訂正をいたします。


編集後記
 編集後記
事務局 一戸
グローバルマネー・ジャーナル第183号、いかがでしたでしょうか。

先日お電話で、「自分の子供と一緒に投資を勉強しようと思い、学習を検討しています」というご相談を受け、「学校であまり教わらない大切なことを、親と一緒に学ぶ機会を持てるお子さんは幸せだな」と感じました。

例えば小中学生でも、毎月のお小遣いや一度に大金の入るお年玉などを、先々のイベントを見越してどう振り分けるかは都度考えているでしょうし、それは規模やバリエーションこそ違えど、大人がライフプランを設計するのと同じこと。

子供のうちからしっかりとした金融リテラシーを!とまでは言いませんが、計画的なお金の使い方や管理など、お子さんのいらっしゃる方はぜひ身近なところから一緒に考えたり、コミュニケーションしたりしてみてはいかがでしょうか。

時には大人の自分にも、思わぬ気付きがあるかもしれませんよ。

来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!

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