大前研一の株式・資産形成講座メールマガジン   2011/12/14(水)  
最新・最強・最高クオリティの
Message
第222回目発行!株式・資産形成講座メルマガです。

メルマガをご覧の皆様、こんにちは!
ビジネス・ブレークスルー 株式・資産形成講座事務局の加藤です。
このメルマガでは、皆さんの資産形成に役立つ情報を、大前研一ならびにプロとして活躍している 一流講師陣の視点から、毎週リアルタイムにお届けしていきます。

今回は金融リアルタイムライブより講義内容を抜粋してお届けいたします。資産形成を実現するためのとっておき情報を、最後までどうぞご覧ください。

2012年1月22日、前回満員御礼だった宮島秀直氏 公開収録セミナー開催決定!

2012年1月スタート受講生募集中!大前研一ライブ(12月分)1ヶ月分プレゼント!


本文タイトル
『金利が一本であったヨーロッパの根源的な課題とは?』

●欧州各国の長期債利回りから見る金利の課題

 今回のユーロ危機は、抱えていた歪みがここ10年でどんどん大きくなったことが本質的な原因とみています。それを示すのが、欧州各国の長期債の利回りのグラフです。欧州統合でユーロが発足したのが1999年ですが、それ以前はヨーロッパ主要国の金利は当然バラバラで、体質の良いドイツの金利は低く、体質の悪いイタリアの金利はドイツの2倍ほどでした。

 ところが、ユーロが発足するとヨーロッパ諸国の長期金利は全部同じになりました。体質の善し悪しに関わらず、途中で加わったギリシャを含め、全てが同じ金利となったのです。非常に奇妙なことですが、実際にヨーロッパでは完全に金利が1本という時代が10年近く続いたのです。


 ヨーロッパ中央銀行が決める政策金利は1本なので、短期金利は全て統一されるのは当然です。しかし、長期金利は中央銀行が決める金利ではなく、マーケットが決める金利です。マーケットが体質のいいところも悪いところも全部同じ金利をつけたわけで、今から考えるとこれは壮大なミスプライシングでした。ギリシャも、ドイツも、国の借金を返す力はそれぞれ全く異なるにもかかわらず、ユーロ圏に属している限り同じ体質の借り手なのだとマーケットはずっと錯覚していたのです。

 そこで問題が起きました。金利は同じでもファンダメンタルは違うので、金利がそれぞれの国に与える影響には大きな格差が出ます。実質金利は名目金利-物価上昇率ですから、物価上昇率が小さければ小さいほど、実質金利は高くなるのです。例えばドイツは、ヨーロッパの中で物価上昇率が一番低いので、金利が同じであれば実質金利は非常に高くなります。

 つまり、借り手が背負う本当の借金の重さはドイツでは非常に重くなります。一方ギリシャなどはインフレ率が高いので、実質金利は非常に低くなります。仮に、ユーロ圏の金利が4%だったとします。ドイツの物価は1%上昇していたとすると、ドイツ人が支払わなくてはいけない実質金利は3%です。ギリシャのインフレは4%だったとすると、ギリシャ人は利息0で借金ができるということになるのです。

 同じ金利ということは、人々が担う借金の負担に極端な差ができるということなのです。しかも誰が借金の負担を多く背負うかというと、体質の良い国の人々が負担を背負うのです。体質が悪いギリシャや南ヨーロッパの借金の負担はどんどん軽くなります。すると、ますます借金をして、赤字を増やしたり、バブルを作ったり、分不相応の生活をしたりします。体質の良いドイツは体質が良いのに借金の負担が重いので、ますます身を削りコストを抑え、節約をするようになります。こうしたことがこの10年間に起こったのです。


●金利が一本であるヨーロッパは自ずから崩壊するような仕組みであった

  この間に両者はのコスト競争力格差がどんどん離れていき、金利が一本に収斂することと全く逆に、それぞれの赤字、黒字が大きく拡大していきました。ドイツはどんどん黒字を増やし、ポルトガルギリシャスペインなど南の諸国は過剰な消費により赤字を膨らませました。この状況を作ったのが、長期金利のミスプライスだと言えるのです。

 長期金利が同じになったことによって、問題が隠されたとか先送りされたわけではなく、問題がどんどん膨らんできたということなのです。このままの状態が続くと、それぞれの黒字、赤字がどんどん膨らみ、いずれ爆発します。つまり、金利が一本であるヨーロッパは自ずから崩壊するような仕組みであったということなのです。


 さて、今回の危機で、1本だった金利が再びバラバラになりました。一本の金利により矛盾が起き、正しいお金の流れが阻害され、本来借金能力のない南にお金が行き、そこでバブルやインフレが起き、ヨーロッパ経済の均衡が大きく崩れていたわけですが、危機が起き金利差ができたことで、南にお金が行かなくなり、そのおかげで南の物価上昇率が低下し、借金ができなくなったのです。

 それにより、ドイツの黒字が減り、南ヨーロッパ諸国の赤字が減り、不均衡がやや修正されてきました。つまり、危機は悪い将来の入り口に起こることではなく、過去悪かったことを是正するために起こっているという要素があるのです。これが今ヨーロッパで起こっているのです。

 この金利差が続くと嫌がおうなく南は努力して体質が改善します。南の体質が良くなれば、財政的な支援をするドイツの負担が小さくなります。一方、これまで高い実質金利を強いられてきたドイツは、金利が下がりお金が集まってきているので、今後ブームが起こる可能性があるのです。ヨーロッパを牽引するドイツがさらに強くなるわけです。

 今の事態は決して手放しで楽観できませんが、しかし、経済を推し進める上で最も重要な力である市場が機能し始めているということは、この先に起こる変化は非常によい変化となると言えます。そう考えると、ヨーロッパの情勢は、もちろんいろいろな困難はあるにせよ、多くの人が考えるほど絶望的なものとは言えません。

 むしろ今のヨーロッパの危機は、将来よくなるための一つのステップとして起こっている可能性もあるという見方を認識しておく必要があります。そうした形でユーロが新しく再生していくと、今度は世界がより一体化していくためのモデルにもなっていくわけです。危機の裏には、常にチャンスがあるということなのです。


講師紹介
武者陵司
ビジネス・ブレークスルー大学 株式・資産形成講座 講師

武者リサーチ代表
ドイツ銀行グループアドバイザー
埼玉大学大学院客員教授

武者 陵司


12月7日撮影、金融リアルタイムライブより抜粋してご紹介しております。
編集後記
 編集後記

グローバルマネー・ジャーナル第222号、いかがでしたでしょうか。

経済情勢を踏まえ、資産運用・形成していくためにご活用ください。

年金問題、少子高齢化、世界経済の混乱の高まりなど、将来に向けて資産を防衛するためのファイナンシャルリテラシーの必要性は日に日に高まっています。ファイナンシャルリテラシーは生涯に亘り重要であり、これはご自身だけではなく、家族でも共有すべき考え方だと思っています。

世界マーケットが混乱する「今」こそ、生涯重要になるファイナンシャルリテラシーを高めておく時期ではないでしょうか?

⇒ 詳細、申込はこちらから!(株式・資産形成講座トップページ)

それでは、来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!    

株式・資産形成講座
加藤

| 配信先変更・配信停止 | お問い合わせ | 個人情報保護方針 |

copyright(C)BUSINESS BREAKTHROUGH Inc. All Rights Reserved.

資産形成について少しでも知識を高めたい方はまずは無料講義体験へ。

  • 無料講義体験
  • 講座申込み