業界ウォッチ 2019年1月14日

教員のちょっと気になる「MaaS市場」



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 講師)

今回は、「 MaaS市場 」を取り上げてご紹介いたします。

昨年2018年は自動車業界でも様々な変化が起こりました。その中でも今後も大きな潮流として見逃せない動きの一つとしてMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)が挙げられるのではないでしょうか。

PwCネットワークの戦略コンサルティングを担うStrategy&の公表した「デジタル自動車レポート2018」によると、MaaSの市場規模が2030年に米欧中3地域合計で1兆円を超える(1.36兆ドル、約150兆円)に達すと予測されています。

それでは、このMaaS市場がどのくらいの伸びなのか、自動車産業全体の中でどの位の割合を占めるのか、実際の数字で確認してみたいと思います。

まず米欧中のMaaS市場規模を見ると、2017年で米国470億ドル、欧州250億ドル、中国150億ドル、3地域合計で870億ドルとなっています。これが2030年には、米国2500億ドル、欧州4510憶ドル、中国6560憶ドル、合計1兆3570億ドルとなります。いずれも増加トレンドとなっており、特に中国市場の規模の大きさ、および伸び率の高さが注目に値します。

次に、世界の自動車産業全体を見渡して、その中でMaaSがどのくらいの割合を示すのか見てみます。売上の構成比で見ると、2017年では「新車販売」のウェイトが最も高く(48%)、次いで「アフターサービス」(14%)で、「MaaS」は約2%となっていますが、2030年には「新車販売」が38%、次いで「MaaS」(22%)、「アフターサービス」(11%)となっています。利益の構成比でみると、2017年は「新車販売」(41%)、「アフターサービス」(16%)の順で、「MaaS」は1%未満です。これが2030年には、「MaaS」が30%と最もウェイトが高く、次いで「新車販売」(26%)、「アフターサービス」(10%)となっています。

このように、自動車産業全体でみても、将来的に「MaaS」が非常に大きな割合を占めることが分かります。その一方で、これまでの自動車産業の中心であった「新車販売」、「アフターサービス」、「従来型サプライヤー」のウェイトが大きく落ち込んでいることが分かります。 こうした状況を見越して、自動車メーカーを中心とした業界は、ビジネスモデルを変えていかなければならないのでしょう。

逆に言うと、これまでの自動車業界でなかった他業界からの参入余地、事業機会が大きいとも考えられます。日本経済にとっても自動車産業は重要な産業なので、今後どのように変化していくのか、どのような事業機会があり得そうなのか、これからも注目していきたいですね。

執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)

ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。

<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)