MBAダイジェスト 2020年6月11日

Steps to Leading Globally(2)リーダーシップの定義 その(2) ~戦略的にスタイルを選択

『MBAダイジェス』シリーズでは、国内初・最大級のオンラインMBAである「BBT大学院」、ならびに2つの国際認証を持つ「BOND-BBT MBAプログラム」の修了生が、両校で学ぶMBA科目のエッセンスをまとめ、わかりやすく紹介していきます。将来的にMBAの取得を検討している方や、MBAの基礎知識をインプットしたい方はご活用ください。



執筆:岸原直人(BBT大学院MBA本科修了、パナソニック株式会社 デジタルマーケティング推進室 課長、アプライアンス社事業開発センター ゲームチェンジャーカタパルト Versatile Player)
対象科目:Steps to Leading Globally(Eric Francis 教授)

前回は「リーダーシップの定義」のその(1)として、リーダーシップを具現化し、組織に浸透させ、共通の目的に向かって理解し行動できるようにするために必要なものである 「ミッション・ビジョン・バリュー」について説明しました。今回はその(2)として、リーダーシップそのものについて深堀りしていきます。

リーダーシップの目的

そもそもリーダーシップは何のために必要なのでしょうか?その答えとして1970年代に紹介されて以来、世界中の何百万人というビジネスパーソン、企業にて活用され、成果を生み続けているKen Blanchard氏の考え方をご紹介します。

“Leadership is an influence process of working with and through people to accomplish their goals and the goals of the organization.”

というものです。
言い換えると、リーダーシップとは「十人十色」である組織構成員の個別のニーズを満たし、最終的に組織目標を達成するもの、と言えます。

リーダーシップのスタイル

Ken Blanchard氏とPaul Hersey氏は、個々の組織構成員のニーズに対応するため、リーダーシップは画一的なものでは不十分であり、状況に応じて変化すべきと提唱しました。これを Situational Leadership=状況対応型リーダーシップ=と言います。

組織構成員と接する際には、その構成員の状況に応じて、Directive Behavior(指示的行動)とSupportive Behavior(援助的行動)の高低を組み合わせた以下の4つStyleのリーダーシップを適切に使い分けることが必要です。



[Style1] Directing=指示型(指示的行動「高」 x 援助的行動「低」)
経験の少ない組織構成員に、リーダーは具体的な指示命令を与えきめ細かく指導していくリーダーシップ

[Style2] Coaching=コーチング型(指示的行動「高」 x 援助的行動「高」)
自立しつつある組織構成員に、具体的な指示命令を出すとともに、自ら推進することを加速するよう動機付けを行うリーダーシップ

[Style3] Supportive=支援型(指示的行動「低」 x 援助的行動「高」)
知識、経験を積んだ組織構成員が自ら推進・決断するよう、構成員の考えを傾聴し、それに対してのアドバイスを行うリーダーシップ

[Style4] Delegating=委任型(指示的行動「低」x援助的行動「低」)
知識、経験を積んだ組織構成員に対して、自らゴール設定し、推進決断するよう任せるリーダーシップ

この4つのStyleのリーダーシップを戦略的に使い分けることが、リーダーには求められます。

リーダーシップの選択

ではこの個々のニーズを把握し、状況対応型リーダーシップを適切に選択するには、どのようにすれば良いのでしょう。

そのためには、あなたの組織構成員がどのようなキャリア・スキル開発過程にいるかを確実に把握することが必要です。この開発過程を構成する2つのキーワードが仕事に対しての能力・スキルを意味するCompetenceと信頼・モチベーションを意味するCommitmentです。Commitmentは「達成意欲」と考えても良いでしょう。この2つのキーワードの高低の組み合わせに応じて、組織員の状況を正しく把握できます。では以下に整理していきましょう。



[Level1](Competence「低」x Commitment 「高」)
 -熱心な初心者:スキルは低いが、達成意欲は高い

[Level2](Competence「低」x Commitment 「低」)
 -幻滅している学習者:スキル、達成意欲ともに低い

[Level3](Competence「高」x Commitment 「低」)
 -能力有り、用心深いパフォーマー:スキルは高いが、達成意欲は低い

[Level4](Competence「高」x Commitment 「高」)
 -自立した達成者: スキル、達成意欲ともに高い

こうして組織構成員を4つセグメントにわけ、その特性を明らかにし、個別に対応していきます。

実務経験・スキルに劣る[Level1]には、積極的に具体的指導を行う [Style1] Directing=指示型リーダーシップが適切です。
壁にぶつかっている状態にある[Level2]には、タスクへの動機付けを強化するべく [Style2] Coaching=コーチング型が適切でしょう。

一定以上スキルはあるものの、用心深く周囲に答えを求める[Level3]にはその悩みや、課題解決をアドバイスする [Style3] Supportive=支援型が良いでしょう。最後に自ら課題抽出、解決に取り組める人材である[Level4] の場合は、全面的に権限委譲し当人たちのやる気を導き出す [Style4] Delegating=委任型が最適です。

リーダーのゴールは、組織構成員、組織をあるべき方向に導くことです。その場合、自身の画一的な考え方を押し付けるだけでは正しい方向に導くことはできません。個々人のニーズやレベルに応じてあなた自身のリーダーシップを使い分けることが、組織構成員の成長、組織の目標達成につながるのです。

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岸原直人

BBT大学院本科 修了生
パナソニック株式会社
デジタルマーケティング推進室 課長
アプライアンス社事業開発センター ゲームチェンジャーカタパルト VersatilePlayer

1971年埼玉県所沢市生まれ
早稲田大学卒業後、松下電器産業株式会社(現:パナソニック株式会社)に入社。国内外営業・マーケティング、海外広報を経て、2012年から2015年まで米国地域統括会社でブランドマーケティングに従事。帰国後は本社経営企画での勤務後、2017年より新設されたデジタルマーケティング推進室で、グループ全体のデジタルマーケティング化を推進中。また2018年からは、「社内複業制度」を活用し、家電部門の新規事業創出組織であるゲームチェンジャーカタパルトに参画。

大学時代始めたアメリカンフットボールに今も夢中。米国勤務時代は、全世界最大規模のスポーツイベントと言われるスーパーボウルを、『一生の一度のチャンス』と捉え、1席数十万円のチケットを購入して観戦。また、現在も40歳以上のメンバーで構成される『シニアアメリカンフットボール』のチームに所属し、プレーを継続。アメフト以外でも、トレイルランニングに熱中。毎年複数の大会に参加している。また「トレーニングで街創り」というビジョンを掲げる『Daddy Pak Training』に所属し、日本初の都市型障害物レースイベントを行う等、社会起業にも活動の幅を拡大。大前学長の「やりたいことは全部やれ!」という教えをまさに実践している。

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