米住宅価格過去最大下落が示す、見えない個人消費回復|株式・資産形成講座メルマガ

  2008/11/19(水)  
最新・最強・最高クオリティの
Message
第76回目発行!株式・資産形成講座メルマガです。
メルマガをご覧の皆様、こんにちは!
ビジネス・ブレークスルー 株式・資産形成講座事務局の一戸です。
このメルマガでは、皆さんの資産形成に役立つ情報を、大前研一ならびにプロとして活躍している 一流講師陣の視点から、毎週リアルタイムにお届けしていきます。
あなたの理想とする資産運用、資産形成を実現するためのとっておき情報を、どうぞご覧ください。

本文タイトル
米住宅価格過去最大下落が示す、見えない個人消費回復

政府も個人も「借りすぎていた」・・・米国の実態

7―9月期にマイナス成長に転落した米景気は金融危機に伴う信用収縮と実体経済の悪化が同時に進むリスクにさらされています。また、米調査会社大手スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が10月28日発表した8月のS&P/ケース・シラー住宅価格指数は、全米主要10都市圏において前年同月比17.7%の下落となり、調査開始以来最大の値下がりとなりました。

金融機関に対しては、米国政府が無限の保証を行うという「空約束」を公言しているおかげで、今のところは何とか小康状態を保っているという状態です。しかし、政府の空約束が及ばない「実体経済」は容赦なく厳しい状況に陥っており、米国の実体経済の悪化に関する指標や実例は枚挙に暇がないほどです。

例えば、S&P/ケース・シラー住宅価格指数の推移を見ると、20ヶ月連続の下落を記録していることが分かります。この水準が回復しない限りは、米国の個人消費も回復する見込みは非常に薄いと思います。


2008年11月10日号Newsweek誌の記事では、米国は政府も個人も将来のお金を前借して無駄遣いし過ぎたということが指摘されています。個人は米国のクレジット社会で収入を前借りすることでお金を使いすぎてしまい、政府は必要とされる以上に福祉や医療といった分野にお金をつぎ込んでいたというのです。

今後はこうした無駄遣いの習慣を改めることが必須となるでしょう。これまでクレジットを上手に活用していた米国人が、今後は自分の手に入ってくるお金の中だけで生活をすることを余儀なくされます。この調整は想像以上に大変だと思いますが、すでに米国では実体経済の悪化に伴い、国民の消費活動が大きく変わる兆しが見え始めています。


●あらゆる面で、実体経済が急速に悪化した影響が見え始めた

2008年11月3日号のTIME誌には、「Life Without Credit(クレジットが使えなくなった)」というタイトルと共に、ほとんど客のいないお店の写真が大きく掲載されていました。米国のGDPを上回る約1300兆円という莫大なクレジットのせいで、完全に個人消費が落ち込み、お店は閑古鳥が鳴いている状態だということです。

ショッピング業界だけに限らず、映画などのエンターテイメント業界、レストランなどの外食業界、旅行業界といったあらゆる業界で「実体経済が著しく悪化している」ということがわかる指標が示されています。貯蓄一辺倒の日本人などに比べて、米国人は上手にクレジットを活用し、「人生を楽しむのがうまい」と言われてきました。しかし、情けないことですが、その実態としては「借りすぎていたことにも気づかなかっただけではないか」と批判されても致し方ない状況だと思います。

こうした米国の実体経済の悪化を受けて、2008年11月10日Business Week誌には、金庫の中で膝を抱えて丸まっている人を漫画で描き、これからは個人の財布の紐が固くなるという記事がありました。その記事によると、今後はこの人たちに「如何に出費させるか」を工夫することが大切であり、今までのように単に良いモノやサービスをCMで告知すれば売れたという時代ではなく、現実的に価値があり、かつ必要性や耐久性も備えたモノでなければ売れないということが指摘されていました。

もっともな指摘のように見えますが、主張していることは至極当然のことばかりです。私に言わせれば、マーケティングの基礎的な事項を指摘しているだけに過ぎません。逆にこれまでは一体どんなものを買っていたのか?と問いただしたい気持ちになります。

また、米国の実体経済が急激なスローダウンをして個人の消費が落ち込んでいることを証明するように、米小売大手のウォルマートが一人勝ちの様相を見せています。ウォルマートが5%というプラス成長を示す一方で、競合のTargetは-0.4%、KMARTは-5.6%といずれもマイナス成長へと転落しています。

Business Week誌では10月末にも不況に強い会社として「COSTCO(コストコ)」という会社を取り上げていましたが、ウォルマートの事例を見るとさらにこの風潮が強くなっているのだと感じます。「Everyday Low Price(毎日安売り)」というスローガンからも分かるとおり、ウォルマートはまさに不況に強い企業の代表格と言えるでしょう。

個人消費の側面を見ても、企業の業績の側面を見ても、現在の米国実体経済が急激に落ち込んでいることは疑う余地はありません。今後も、次々と実体経済の悪化を示す指標や事例が出てくると思います。

米国は非常に厳しい状況を迎えることになります。まず、政府も個人も無駄遣いに歯止めをかけるということが第一歩でしょう。これまで世界の経済を牽引してきた米国経済ですが、その時代が終焉を迎える可能性もあると私は見ています。オバマ新大統領が誕生し、今後どのような動きを見せるのか、米国の経済政策にはさらに注目していきたいと思います。


講師紹介
大前研一
ビジネス・ブレークスルー大学院大学学長
大前研一

11月9日放送
「大前ライブ」より抜粋し、一部再構成したものです。
<お詫び>
先週のグローバルマネー・ジャーナル第75号において、木下講師の記事引用部分に誤りがありました。正しい引用元は「メールマガジン 投資脳の作り方」では無く、「ヤフーニュース 経済記事」になります。

第75号修正版は下記リンクよりご覧ください。
このたびは内容に誤りがありましたことを、心よりお詫び申し上げます。

第75号修正版
http://www.ohmae.ac.jp/ex/asset/column/20081112_155652.html

大前研一学長語録
 ブレークスルー経済学
「経済学」というと敬遠する人が多いのですが、実際には「論理的に物事を考える」際には、非常に便利な道具(ツール)です。ここでは、毎回、金融・投資環境に関する事柄を経済学的に解説していきます。是非この機会に、使い方も含めて、習得していただけたらと思います。

第70回 『金融市場に「必要」なのは「規律?」or「自由?」』

11/15に緊急金融サミットが行われました。結局は「これ」といった成果があったとは思えませんが、G7またはG8という先進国だけではなく、新興国を含めて20カ国が一堂に会して議論したという意味では成果があったといえます(後世に「語られる」とすれば、この点くらいでしょうね・・・)。

しかし、問題として持ち上がったのは、欧州勢が「金融市場の規律をしっかりとすべき」というのに対して、米国は「金融市場は自由な取引を行える環境が大切である」といっている点にあると思います。

金融市場にとって必要なのは、「規律」それとも「自由」、どちらなのでしょうか。

現状からいえば、当然、「規律」でしょうね。しかし、「規律」ということで、全ての取引についてルールをつくることは事実上不可能です。また、金融市場において行われている取引は技術革新が非常に激しい分野なので、ルールブックを作っても「すぐに陳腐化してしまう」という危険性もあります。

ルールブックが「陳腐化」した場合、その都度、「修正すればよい」ともいえますが、「ルール」が「コロコロ変わる」というのも問題です。また、「法律を改正する」ということになれば、それなりに時間もかかりますし、審議している間に別の問題が起こってくる可能性も否めません。

そういう意味で「市場に任す」という考え方が出てくるわけです。つまり、ある程度、包括的なルールを「規律」として作成し、その後は市場が「(神の)見えざる手」によって自然に規律ができるという考えが、「市場に任せる」というものです。

ところが、この考え方について、あのグリーンスパン前FRB議長が「私は誤っていました」と議会証言をしました(グリーンスパン氏はこの方法によって金融市場を操縦していたわけです)。「市場に任せておけば大丈夫」とグリーンスパンも思っていたのですが、実は投資家の多くが、「景気が良い」、または、「景気が悪くなるとは思っていない」という「バブル」の時期には、このような市場メカニズムが「働かない」、または、「働きづらい」ということがあるのです。

例えば、サブプライムローンのような「デフォルト確率が高い融資物件」を証券化したとすると、そこに「担保がある」とはいえ、市場としては「危険性がある」ということを(投資する者の「勘」により)感じて、飛びつく投資家はいなくなる"だろう"から、そのような証券は流通しないはずだと考えるのが"普通"なのです。しかし、実際には大掛かりに取引がなされました。

また、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)のような取引についても、基本的には「オプションの売り」なのだから、そのような危険な商品を「引き受ける」となると、(真っ当な)民間企業の場合、自己規律が働きく"だろう"から、ある程度の市場以上に拡大しないはずなのです。しかし実際には、AIGを筆頭に、多くのヘッジファンド等が大量に抱えているようです。

このように「自己規律」に任せたことが、今回の金融危機をもたらしたといえるので、この点については、やはり、ある程度細かな部分まで「金融当局がルールを作る」「監視をする」ということが必要になるのではないでしょうか。そういう意味では欧州勢の考えが正しいといえます。

しかし、とはいえ、流通市場については基本的に「自由な市場」であることが必要です。市場で流通するには「自由な市場」でないと適正な価格は生まれないからです。そういう意味では米国の言い分も正しいといえます。

ということで、両方が重要なのですが、市場流通の面で規制を入れるのではなく、市場に流通する証券の「質」について「ルール」および「監視」が必要になるということなのです。証券の「質」について規律がしっかりと守られていれば、金融危機は起こらないはずだからです。

つまり、「証券化にするための原資産についてのルール」や「証券化後の追跡可能性」「金融機関が取ることのできるレバレッジの割合」などを明文化し、規律をしっかりと守らせる体制(監視も含めて)があれば、流通市場そのものに規制をかける必要はないはずです(自由に市場で流通させればよいことになります)。

今回のサミットでは明確になりませんでしたが、今後は「質」について取り上げられてくると期待しています。そして、それが明文化されれば、現状の金融についての危機は脱することができると思います(実体経済についての危機は、これからではありますが・・・)。


講師紹介
前田拓生
前田拓生(Takuo Maeda)

ビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジ
株式・資産形成講座 講師
高崎商科大学大学院 高崎経済大学経済学部 他で
「金融論」関係の講義を担当。
著書:「銀行システムの仕組みと理論」大学教育出版
編集後記
 編集後記
事務局 一戸 グローバルマネー・ジャーナル第76号、いかがでしたでしょうか。

国家レベルでの緊急会合が相次いでいることからも読み取れるように、金融機関の存続危機に歯止めがかかりません。

金融大手citiグループはここ最近、半期~四半期毎に万単位でのリストラを発表し続けています。

経営改善策が急務とはいえ、それだけの数の高給な人々を受け入れる所も無く、アメリカの失業率がますます上がって行くことはもはや確実。

株価はもともと実体の無いものですし、それを動かすのは投資家の心理。 となると、市場の悲観論が強まり、更なる株安を招いてしまうことになりかねません。


しかし、「相場は悲観の中で生まれ、懐疑の中に育ち、楽観の中で成熟し、幸福感の中で消えてゆく」という格言のように、投資家にとっては今こそが、そしてこれからが投資のタイミングです。

応援したい企業をしっかりと目利きした上である程度長期的に買い支え、その企業と共に利益を享受する体験を、私自身も含め、一人でも多くの方にして欲しい、そう思います。

来週のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!    

株式・資産形成講座
一戸

| 配信停止 | お問い合わせ | 個人情報保護方針 |

copyright(C)BUSINESS BREAKTHROUGH Inc. All Rights Reserved.

資産形成について少しでも知識を高めたい方はまずは無料講義体験へ。

  • 無料講義体験
  • 講座申込み