業界ウォッチ 2026年7月21日

【データから読み解く】ニュース情報源となる媒体の国際比較

今回は「ニュース情報源となる媒体の国際比較」を取り上げます。

ニュースを「どこで知るか」が、いま大きく変わりつつあります。世界では選挙や災害のたびにソーシャルメディア発の情報が世論形成に影響を与え、日本でも偽情報や詐欺広告への対応としてSNS規制の議論が進んでいます。一方で、既存メディアに対しても偏向報道やスポンサーへの忖度といった批判が向けられ、「何を信じて意思決定するか」は生活者だけでなくビジネスパーソンにとっても切実な問題になりました。市場の変化を読み、顧客の情報行動を理解し、自社の発信チャネルを設計する――そのすべての前提が「人々のニュース接点」だからです。

では、世界と日本で、ニュースの情報源はどう違うのでしょうか。そして日本の「SNS比率の低さ」は、これからも続くのでしょうか。実際に数字を見ながら確認していきます。
International Comparison of Media as News Sources

今回は、英オックスフォード大学ロイター・ジャーナリズム研究所の「デジタルニュースリポート2026」のデータをもとに、ニュース情報源となる媒体を国際比較します。

まず世界全体(調査対象48カ国平均)の推移を見てみます。ニュースの情報源として利用した媒体の割合を見ると、2013年にはTVが77%、ニュースWebサイトが71%、印刷物が55%と、いずれも高い水準でした。ところが2026年にはTVが52%、ニュースWebサイトが51%、印刷物は16%まで低下しています。対照的にソーシャルメディアは2013年の25%から2016年に51%へ急伸し、2022年に57%のピークをつけた後も高水準を維持、2026年は54%となりました。この結果、2026年の世界では、ソーシャルメディア(54%)がTV(52%)とニュースWebサイト(51%)をわずかに上回り、事実上の首位に立ったと読み取れます。2013年にはTVとソーシャルメディアの間に52ポイントの差があったことを踏まえると、13年間での逆転は劇的な変化です。また、2025年に調査項目へ加わったAIチャットボットは7%から10%へと、わずか1年で伸びている点も見逃せません。ポッドキャストも世界では11%が利用しています。

次に日本です。2013年の日本はニュースWebサイトが82%と突出し、TVが69%、印刷物が63%でした。ヤフーなどポータルサイト経由のニュース閲覧が早くから定着していた構図がうかがえます。2026年にはニュースWebサイトが50%、TVが51%、印刷物が20%、ラジオが12%と、既存媒体の縮小は世界と同様に進んでいます。しかしソーシャルメディアは2013年の17%から2026年の25%へと、13年間で8ポイントの微増にとどまり、2017年の29%をピークに、その後はおおむね20%台で推移しています。世界の54%に対して日本は25%と、半分以下の水準です。一方、AIチャットボットは5%から9%へと前年比4ポイント上昇し、同期間に24%から25%へ1ポイント上昇したソーシャルメディアを、増加幅では上回りました。ただし、利用率の水準自体はまだ低い点に注意が必要です。なお、世界で11%のポッドキャストは日本では3%にとどまり、音声メディア全般の弱さも日本の特徴と言えそうです。

第三に、2026年のニュースに使用されたオンラインプラットフォームの比較です(注)。世界ではFacebookが43%、YouTubeが34%、InstagramとWhatsAppが各26%、TikTokが20%と、グローバルプラットフォームが上位を占めます。対して日本はYouTubeが30%、LINEが24%、Twitter/Xが20%と続き、Instagramは9%、TikTokは7%、Facebookに至っては5%にすぎません。世界平均では43%と最も高いFacebookが、日本のニュース利用では5%にとどまる一方、世界では3%のLINEが日本では2位という、独自の生態系が浮かび上がります。ただし共通点もあります。世界(48カ国・地域平均)と日本のいずれでもYouTubeが上位にあることから、動画・クリエイター型プラットフォームが、日本でも重要なニュース接点になっていると考えられます。

今回のグラフには掲載されていませんが、「デジタルニュースリポート2026」では、世界(48カ国・地域平均)では27%がニュースクリエイターから毎週ニュースを得ています。タイの47%、南アフリカの41%、メキシコの39%など利用率の高い市場がある一方、日本は14%にとどまります。クリエイターは分かりやすさや身近さで評価される一方、信頼性や公平性は低く見られ、速報・調査報道を代替するより補完する役割が中心となっています。

こうしてみると、日本のSNS利用率の低さには、高齢層の比率やSNSに対する信頼の低さなどが影響している可能性があります。ただし、今回のデータだけで因果関係を断定することはできません。世代交代に伴って利用率が上昇する余地はあるものの、日本では2017年以降20%台で推移しており、世界平均へ一方向に近づくとは限りません。また、この変化は単なるチャネルの置き換えではなく、人々が社会をどのように認識するかにも影響を及ぼす可能性があります。

今後、テレビや新聞など既存メディアのニュース流通における相対的な影響力が低下する一方、YouTubeやXで専門家、記者、実務家が解説するなど、個人によるニュース発信が広がる可能性があります。競争軸は「既存メディア対SNS」という二項対立ではなく、組織ブランドと個人ブランドをどう組み合わせ、ニュースが届く経路、編集基準、検証履歴を誰が設計するかへ移っていくと考えられます。

報道機関には権力監視に加え、第三者評価やオンブズマン制度、外部ファクトチェックなどを通じて、自らの報道も検証される仕組みが求められます。政府やプラットフォームには、違法・有害情報への対処と表現の自由を両立させる、透明で異議申し立て可能な手続きが必要です。生活者には、事実と意見を分け、発信者、根拠、日付を照合する情報リテラシーが不可欠です。

信頼は媒体の看板ではなく、検証可能なプロセスによって再構築されるということが分かります。

注:なお、ここで示す個別プラットフォームの数値は、前段の媒体区分とは設問・集計方法が異なるため、ソーシャルメディア25%の内訳として単純に比較することはできません。

資料:
ロイター・ジャーナリズム研究所(英オックスフォード大学)「Digital News Report 2026」
同インタラクティブデータ
NHK放送文化研究所「ロイター・デジタルニュースリポート2026」解説