2012/09/12(水)「深刻な中国経済の停滞(武者陵司)」資産形成力養成講座

表示されない方はこちらから
大前研一学長総監修 資産形成力養成講座 グローバル・マネー・ジャーナル 「最新・最強・最高」クオリティの金融情報とデータ!

第259回目発行!資産形成力養成講座メルマガです。

メルマガをご覧の皆様、こんにちは!
ビジネス・ブレークスルー 資産形成力養成講座 事務局の加藤です。
このメルマガでは、皆さんの資産形成に役立つ情報を、大前研一ならびにプロとして活躍している 一流講師陣の視点から、毎週リアルタイムにお届けしていきます。今回は金融リアルタイムライブよりコンテンツを一部抜粋してお届けいたします。資産形成を実現するためのとっておき情報を、最後までどうぞご覧ください。

大前研一
 

【10月開講生募集中! スキルアップ応援キャンペーン実施中!】

世界経済が不安定な中、購買力を落とさない運用方法を身に付ける資産形成力養成講座!
9月25日まで限定でキャンペーン実施中!詳細はHPをご覧ください!

詳しくはこちら

 

深刻な中国経済の停滞(武者陵司)

欧米経済の現状とは

 

  世界的な株価の動きは、リーマンショック後の高値を超えつつあり堅調です。しかし、日本株はずっと低迷しているのがグラフからも分かります。このトレンドが解消するどころか、むしろ定着してしまっているところに大きな問題があります。日本が世界経済の緩やかな拡大基調に合流できていない背景には、やはり、円高デフレという大きな問題があると思います。

120912_1.jpg

 世界的には景気回復、株価上昇のトレンドが続いていますが、それを支えるアメリカでは、ここに来てこれまでアメリカ経済の阻害要因であった住宅がかなり改善を見せています。今後はさらに世界経済のリード役として浮上する可能性が高まってきたと言えます。ただし、雇用はまだまだ本格的な回復軌道には入っていませんし、依然として病み上がりの経済であることは確かです。

 人々の心理も慎重で、引き続き超緩和的な金融政策が続いているということで、それが現在足元ではドルを弱くしていますが、半年、一年も経てば底堅さもはっきり見えてくるでしょう。そうなれば、アメリカが再び世界経済の中心として登場する日もそう遠くないのではないかと思われます。

 一方ヨーロッパは、基本的にはスペインやイタリアの金利もかなり顕著に低下し、金融のメルトダウンや金融機関の連鎖破綻、リーマンショック並みの大惨事を起こすという事態はおそらく回避できるでしょう。したがってヨーロッパ情勢も最悪は脱したと考えます。

 少なくとも1年前を振り返って比較すると、大きく変化した3つの要素があります。まず、一年前には南ヨーロッパ側も北ヨーロッパ側も、ユーロの一体化を維持するよりは自国のエゴを追求した方がいいと思っていた人が多かったはずです。ドイツもギリシャを助けるよりユーロを壊してしまう方がよいという風潮がありました。スペインやイタリアも、いろいろ言われるよりもユーロを飛び出し、自由に財政問題に対処する方がよいという考えも聞かれました。ところがここ一年の間に、ドイツはユーロ一体化のためにどのような犠牲も払うべきだということが、国論として多数となりメルケル政権のスタンスも明確になってきました。

 もう一つは欧州中央銀行がかなり大胆な金融政策をして、事実上金融面から南の困難を補填したことです。またESMというヨーロッパ経済を安定化させる仕組みも発足しセーフティネットが出来上がりました。

 さらにもう一つはマーケットが機能したことです。株価急落や金利急上昇によって市場が警戒信号を発し、その都度当局が反応を迫られるという流れができたわけです。世論がユーロ存続で一致し始め、セーフティーネットもでき、それを推し進める市場がしっかりと機能しているという3要素によって、ヨーロッパはパニックではなく、少しずつ前進する軌道に入ってきたと言えるのではないでしょうか。


注意すべき深刻な中国経済の停滞

 

   世界情勢の中で一番注意すべき問題は中国だと思われます。中国が深刻な経済の停滞に陥っていることは明らかです。今年前半から現在にかけて、中国の経済活動は基本的に下降の一途です。GDPは第二四半期7.4%と、リーマンショック時以外では過去10年で最低の水準となりました。粗鋼生産や電気の発電量が時にはマイナスとなる等、実際の生産においては成長が止まったようなシグナルが出ています。加えてヨーロッパ向けの輸出がかなりスローダウンし、伸び率はほとんどゼロとなっています。こうしたことから中国経済にはかなり深刻な急ブレーキがかかっていることが分かります。

 今年は新しく習近平体制が発足する年なので、経済のアクセルをふかし、新政権のスタートを盤石にしなくてはいけないはずで、年初来金融緩和をし、凍結していた公共投資、鉄道新幹線投資や高炉建設なども認可され、急速に投資が起ころうとしています。金融緩和の影響を受けて一時的に下落していた不動産価格が再び値上がりを始めるなど、経済はやや前向きに動いています。おそらく中国経済は、半年から一年はやや浮揚して行く可能性が高いと思います。目先はあまり心配する必要はないでしょう。

 しかしその先に懸念が出てきていることが中国経済の問題なのです。それは、中国経済のこれまでの成長には、過剰投資経済というかなり病的な要素があったことが原因です。

 中国の直近の固定資本形成のGDPに対する割合は46%にも上っています。設備投資、公共投資などの投資がGDP総支出に対してどのくらいのウエイトかというもので、過去数十年の各国との比較で見てもこれほどまでに上昇したのは中国だけです。中国は投資をどんどん増やすことによって成長してきたのです。日本で一番これが高かったのは1970年代の約37%、韓国では1990年代半ばに35%程度でした。中国はそれよりさらに10%も高く、とんでもなく投資を増やして成長したということが分かります。

120912_2.jpg

 投資というのは、成長することを考えれば非常に便利な手段です。投資をすれば直ちに需要が増し、経済の規模は増えます。しかも投資は、支出をしながらそのコストは先送りしていいというものです。問題は先送りしたコストがきちんと回収できるかどうかなのです。これは投資した物の中身がしっかりしていなければ不安です。例えば買い手がつかないものを作るための設備を、膨大な資金を投じて作ったとします。作る間は需要が増えてよいですが、設備が動き始めたら実は買い手がいないとなると、設備は不良設備となります。投資をどんどん増やした後、作った設備が動いてお金を回収してくれるかどうかは後の話なのです。

 おそらく日本や韓国も経験したことですが、高度成長のときに投資をしても、かなりの部分は経済が成長して行くことで回収できるはずです。ところが転換点においては、成長が続くと思って投資をしたものの成長がなく、作った設備が過剰となることが起こりうるのです。日本では1990年に転換点が起きました。過剰設備が一気に表面化しましたが、当時でも固定資本形成の割合は30%でした。

 中国の経済成長を牽引する項目別のグラフを見ると、過去10年あまりの経済成長要因として、中国の本当の意味での需要である消費はGDP10%の半分もありません。圧倒的に多いのが投資と純輸出です。投資は作る時には需要になります。しかしその設備が動き出した時にどうなるか分からないということは先行きに不安を抱えた成長が続いてきたわけです。リーマンショック後の世界不況の時に、中国は4兆元という膨大な投資をして経済を押し上げました。このことで世界経済は一時的に救われましたが、中国は相当無理をして過剰投資をした可能性があります。

 投資による成長がずっと続けば良いのですが、設備過剰が表面化してきています。特に、鉄鋼、エチレン、セメントなどの基幹産業です。世界の粗鋼生産を見ると、10年前には10億トンもなかったうちの中国のシェアは1割でした。それが今は、5割となっています。とんでもないスピードの粗鋼生産の成長があったことが分かります。日本の5倍以上の新幹線網をわずか5年ほどの間に作ってしまったように、非常に速いスピードで建設をするので、鉄の需要も高まりました。しかしここに来て規模もシェアも頭打ちとなっています。今後はこれまでほどの規模の投資は必要ではなく、中国は年間6億~7億トンの粗鋼生産設備を持っていますが、もう設備を増やす必要はないのです。

120912_3.jpg

 こうした事情があるにも関わらず景気が低迷したことから、新たに2つの大規模製鉄所の設備を認可しましたが、ますます供給過剰になるかもしれません。そこで中国は国内で余った鉄を海外に売り始めました。そのおかげで世界の鉄鋼市況が下落し、日本の鉄鋼メーカーも大きなダメージを受けています。つまり中国の設備過剰により、今まで物を買ってくれていた中国が世界に対してデフレを輸出し始めているということが起こっているのです。

 投資のかわりに消費をもっと増やすバランスの取れた成長を続ければこういうことはなかったのです。投資がこれ以上必要なくなり、伸び率がゼロになれば中国の経済成長率は今の半分の4%ほどに落ちてしまうので、今後必要なのは消費の成長スピードを高めることです。それには、消費をする人に消費をする力を与えることです。今後はもっと給料を増やし、消費が増えるという環境の下で成長を続けるように舵取りを切り替えないといけません。しかし、賃金の上昇はうまく行っておらず、中国経済の先行きは非常に厳しいと見ています。


講師紹介

武者 陵司

ビジネス・ブレークスルー大学 オープンカレッジ
資産形成力養成講座 講師

武者リサーチ代表
ドイツ銀行グループアドバイザー

武者 陵司

9月3日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。

詳しくはこちら

その他の記事を読む

ノルウェー政府系ファンドの積極運用(大前研一) ECB国債買い入れに動く(大前研一)
Global Money Journal Editor's Note 編集後記

資産形成力養成講座 加藤

 

9月25日(火)15時まで限定!キャンペーン実施中!

2012年4月よりフルリニューアルの資産形成力養成講座!
詳細はHPをご覧ください!


今週のグローバルマネー・ジャーナル、いかがでしたでしょうか。

資産形成力養成講座では、Facebookページでも金融にまつわる最新ニュースなどご紹介しております。ぜひこちらもチェックしてください。

2012年4月より『資産形成力養成講座』と改め、フルリニューアルされたコンテンツを提供しております。これまでの講座から更に魅力を増した『資産形成力養成講座』を資産形成・防衛していくためにご活用ください。

資産形成力養成講座では、ニーズに合わせ以下の講座をご用意しております。

資産形成力養成講座 基本コース(1年かけてじっくり学習)
エントリーコース(エッセンスを短期間で学習します)
不動産投資入門講座(不動産投資に特化した実践プログラム)
金融リアルタイムライブ(基本コース受講生限定、マーケットの今を解説)

世界経済が混迷を深める中、どのような経済下でも購買力を落とさないためにどのように対処すればよいか。如何に経済動向を把握し、起こりうる未来を想定し、取るべき選択肢を十分に煮詰めていくのか。『資産形成力養成講座』では、受講生自らが考え、実践していけるようになることを目的としています。

世界マーケットが混乱する「今」こそ、生涯重要になるファイナンシャルリテラシーを高めておく時期ではないでしょうか?

それでは、次回のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!

 

グローバル・マネー・ジャーナル 【深刻な中国経済の停滞(武者陵司)】の上部へ戻る

資産形成力養成講座 グローバル・マネー・ジャーナル 深刻な中国経済の停滞(武者陵司)

大前研一の株式・資産形成オンライン通信制講座の資産形成力養成講座とは

資産形成力養成講座とは。大前研一学長総監修。世界経済の混乱の中、資産運用・形成の方法を学ぶ。FX為替・株式・投資信託・不動産・REIT・商品先物・債券・年金・保険・分散投資・海外投資など体系的に資産運用が学べる講座。ビジネス・ブレークスルー大学の公開講座。

※ このメールは、HTML形式でお送りしています。インターネットに接続した状態でご覧ください。
発行人 : ビジネス・ブレークスルー大学 オープンカレッジ事務局
〒102-0084 東京都千代田区二番町3番地 麹町スクエア

配信先変更・配信停止 お問い合わせ 個人情報保護方針

Copyright (C) BUSINESS BREAKTHROUGH Inc. All Rights Reserved.

資産形成について少しでも知識を高めたい方はまずは無料講義体験へ。

  • 無料講義体験
  • 講座申込み