足元の金融市場では、為替市場で非常に大きな動きがありました。8月は思ったより動かないマーケットでしたが、9月に入ってまた動き出したという印象です。
現在の状況を四点にまとめると、まず、株価は意外と強い動きで、特に新興国を中心に、続伸となっています。日本ではテレビ、新聞などで毎日報道されている、いわゆる北朝鮮問題、あるいは先般あったようなヨーロッパのテロの問題などがあるにも関わらず、株価は世界的に意外に強いというのが一点です。
二点目は、トランプ政権が誕生して、特に米国金利、あるいは米国金利に影響を受けやすい国の金利、そして為替が、ともにドル高、ドル金利高という現象を起こしたわけですが、日が経つにつれて徐々に元の水準に戻り、2017年9月、トランプ大統領が政権を実際に取るということがわかってから10ヵ月強経ったところで、それ以前の水準にもどってきたということです。マーケット用語で言う、いってこいの形になってきたというのが今の特徴です。
そして、三点目は、原油価格が2016年の非常に厳しい状況から一転、底打ちをして戻ってきたものが一服となりました。しかし9月に入り、テキサス、ヒューストンで、アメリカでは1000年に一度の確率とも言われる大洪水が起き、これによりシェールガスの産出量がかなり危機的な状況になるという見方が出始め、原油価格もさらにまた上昇してきているという状況で、この点も風雲急を告げています。
四点目は、ヨーロッパの動きです。ヨーロッパは2016年のBrexit、イギリスがEUを離脱するということを決めてから、2017年はいよいよ本番、欧州大陸の大統領選などがあり、反EUの動きが大きなムーブメントになるという見方が台頭していました。
もっとも大きなイベントだったのがフランス総選挙で、ルペン氏が勝つのではと言われていましたが、ご存知のようにマクロン氏が、オランド氏の政権下にあったものが一旦離脱して、新しい党という形で出て勝利し、結果的には反EUの動きに歯止めをかけた形となりました。フランスとドイツの株価も徐々に戻ってきていたわけですが、これも8月終わりからややもたつき始め、リカバリーの動きが止まっているというのが現状です。
こうした動きを数字で見ると、株価は年初来で世界全体の平均でも13.6%プラスと非常に高い水準となっています。その内、エマージングが22.7%、BRICsが22.8%と、それぞれ2割以上の上昇となっていて、ここが完全に世界平均を引っ張り上げていることがわかります。
国で見ると、アジアが13%程度と高く、先進国ではアメリカが11%と抜きん出て良いパフォーマンスで、中国ももたもたしていたところから足元は年初から8.5%まで回復しているという現状です。9月1日現在の足元1ヵ月の数字を見ると、日本は厳しい展開になっていますが、いずれにしてもエマージング、BRICsといったところが高くなっているということが今年の特徴であると言えます。
続いて金利について見てみます。トランプ政権が生まれる前の去年10月末と、年末の時点を比較した数字を見ると、アメリカは10年国債で62ベーシスポイントも上昇しています。それに引きずられるような形で、実はトルコやメキシコの金利も1%以上上昇しました。ところが、今年5月から9月の変化を見ると、金利は軒並み低下しています。
特にブラジルはまた政治スキャンダルがあり、金利が上昇、株は売られ、通貨も売られるというトリプル安となりました。しかしこれも意外と早く復活し、足元では金利は大幅に低下しているのがわかります。極端に言うと、中国は、おそらく元安をストップさせようと誘導しているのだと思われますが、まだ金利は高いままで、ドイツが小高いほかは、軒並み下がっているというのが金利面から見たこのところの特徴と言えます。
為替も、トランプ政権が出てきてからドル高でしたが、これもすっかり落ちてきて、9月の水準を5月と比べると、すべてドル安となっています。トランプ政権ができて、一旦ドル高に振れたものが、かなり剥落してしまったということです。むしろ、この間、ユーロが強くなっていることが印象的です。このように、金利も為替も、ともにいってこいの形になっているのです。
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