エルドアン大統領にとっては非常に残念な結果です。今回の選挙で伸びたのは右派と中道左派、さらに大きく伸びたのが、クルド系の国民民主主義党です。獲得数が10%ないと議席にならないのですが、今回は各地で10%を超えたので急に議席が増えたのです。従って、イスラム公正発展党が大幅に過半数割れとなり、憲法を改正して大統領権限を強くしようと思ってもどこかの党と連立を組まないといけないのですが、これが非常に難しいということなのです。
エルドアン大統領はもともと首相を二期やり、その後大統領となりました。自身が首相だった頃は、当時の大統領ギュル氏の権限を制限していながら、自分が大統領になったらその権限を圧倒的に強くしようとしていて、ロシアのプーチン氏とやり方が似ています。エルドアン大統領は中東の名士と呼ばれ、ずいぶん期待もありましたが、やはりイスラム系です。トルコが曲がりなりにもヨーロッパから支持されてきた理由は、初代大統領のアタテュルクという人が、世俗主義を主張したことでした。大多数はイスラムでもクルドなど他の民族もいるので、政治からは宗教を除くとしてきたことが、世界がトルコを信頼してきた大きな理由でした。
ところがエルドアン大統領はこの世俗主義をやめて、イスラム中心でやっていくとしたため、イスラム以外のヨーロッパなどが警戒し始めたのです。クルド人ももちろん反発しています。シリア国境の対応もうまくやらなかったこともあり、結果的にエルドアン大統領に任せていてはこの国はおかしくなってしまうとする動きがでてきたということなのです。依然として最大政党であり、与党はキープするとは思いますが、彼の思う方向には行かないでしょう。
私はやはり世俗主義に戻るべきだと思いますが、この動きを見ている限りは、エルドアン大統領を説得する人はほとんどいないようなので、難しいかもしれません。ただせっかくトルコは発展し、1億人の人口を持ち、人口ボーナスもあり、場合によってはEUにも入れる可能性があるのに、ここで失敗すると、中東の大混乱の元になりかねません。クルド人は全部で3000万人という世界最大の国を持たない人種です。彼らがトルコには1000万人以上いるので、その一部が独立運動をしているということもあり警戒されています。対日親和性のあるトルコが大好きな私としては、世俗主義に戻ってもう少し寛容な政策にしてもらいたいと思います。
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