中国国内の経済統計を見ると、PMIで示される景況感は50が判断の分かれ目ですが、この何ヶ月かで戻ってきていることがわかります。昨年後半から年初まで厳しかったものが少しずつ戻ってきている状況です。住宅価格は、中国全土70の都市の数字なのでモデレートに見えますが、綺麗に階段を上るかのような回復が見て取れます。全国の数字でこの状況であり、上海や深セン、北京はもっと価格上昇が起きています。また、自動車登録台数については、去年後半から減税をした効果で大きく増えています。もちろんこれだけ増えているので振れ幅も大きいですが、強い動きになってきています。このように、全体的に底打ち感、プラス、強さもあるというのが現在の中国経済の印象です。
主要経済指標の伸びを見ても、実質GDPの統計は出遅れていますが、これまで心配されていたのが輸入の数字です。中国で物を作ったり物を買ったりすれば輸入が増えるわけですが、前年比二桁の大きな落ち込みが続いてきました。しかし足元は-0.4%と、ほぼゼロまで下げ止まったような数字が出てきました。これがもし、今後数ヶ月にわたって前年比0程度におさまってくれば、大きく落ち込んだものが横ばいになってきたということが見えてきます。
実際、小売売上高なども10%を超えた強い数字が続いている他、生産の伸びも悪くない状態が示されています。消費者物価も2%、生産者物価はまだマイナスですが、その幅は小さくなってきています。今後を占う上ではやはり輸入が落ち着いてきて、前年比プラスとなれば、世界の資源価格などにもプラスの影響が出てくると期待されます。この辺りの数字をじっくり見ていくことが重要になります。
さらに、新築住宅販売価格を詳しく見ると、70都市を合わせた動きではモデレートでマイナスから徐々にプラスになった動きが見られましたが、大都市の数字は極端に伸びています。北京、上海はもちろん、深センに至ってはロケットの打ち上げのような急上昇を見せています。アーバナイゼーション、都市化の進む代表例ですが、凄まじい値上がりです。局所的にものすごい現象が起こっているのです。
上海の地元のホテル協会やゼネコン、商工会議所などの方たちに話を聞きましたが、日本の大使館関係者や経済界の人たちが会見で話す内容について、かなりバイアスがかかっているとの指摘が多く聞かれました。そうした報道では、中国は良いところもあるが、リスクがたくさんあるという、リスクを語る方向にバイアスがかかっていると言うのです。確かにリスクはありますが、世界経済の15%程度を占めている国で、もし発展途上国から内需国、いわゆる大国への歩みで、ギアがチェンジして成長の速度が変わるなら、それはそれで、今までのような二桁の成長は見られなくても、どちらかというと地に足のついた力強い成長が始まっているという可能性も少なからずあると言えるのです。
中国のデータは信じがたいという見方も多くありますが、規模の大きな国なので、輸入や生産者物価の数字などをフォローしながら、その動きを真剣に見ていく必要があると思います。今、6%経済までややスローダウンしていますが、5%に落ちていくのか、この辺りで踏みとどまって、むしろ6%から6.5%に向かうのかについては、これから半年、一年が正念場になるでしょう。この中国の動向はきっちりと見ていくべきだと思います。
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