住宅ローン基準金利はどんどんと下がり、8月現在で1.1%まで低下しました。もちろん過去最低水準です。ここまで下がると、金利コスト自体も減税対象になるので事実上ゼロコストで住宅ローンを借りることができます。ただ、これは借り換え需要がほとんどで、新規の需要にはあまりつながっていないのが実態です。
マイナス金利政策が効くかどうかは、間に挟まる銀行が貸出を伸ばせるかどうかに全てかかっています。確かに、不動産向けの貸し出しは非常に伸びていますが、全体の貸し出しの残高はあまり伸びておらず、減速しているように見えます。
また、日銀の主張としては、中立的な経済の均衡金利はほぼゼロですが、自分たちの金融政策のおかげで、実際の実質金利(市場の名目金利-インフレ率)は過去最低水準まで落ち、このギャップが過去最大まで広がったと言っています。ここまで実質金利を下げているので、経済の刺激効果がないわけがないというのが日銀の主張なのです。
マイナス金利は確かに多少は効果はあると思います。ただその効果とコスト、金融機関に対する負担を比較すると、やはりそろそろ負担のことも真面目に議論しながら進める必要があるだろうと思います。
マイナス金利政策が続くことによって、いくつかの問題が発生します。深刻になってくると目に着くのが、例えば、予定利率や割引率がどんどん低下してしまうという問題です。
生命保険会社や年金基金などは、支払い期間が非常に長い負債を持っています。生命保険会社の場合には、保険支払いの準備金を負債としてたくさん持っており、一方、その負債に見合う資産を運用することで約束している予定利率がどんどん下がってしまいます。市場金利の低下で負債の評価額が一方的に膨らむと、今までであれば超長期国債などを中心に国債を買い入れて資産の時価を膨らますことができました。
しかし、超長期の金利そのものが0ないしはマイナスになってしまったことで、資産と負債のデュレーション・ギャップは広がり、さらに将来的にマイナス金利の国債を持ち切ってしまう投資家にとっては国債の償還の際に大きな損になります。
生命保険会社や年金基金といった、持ち切り前提で多くの国債を投資する投資家にとっては、こうした金利の大幅な低下とマイナス化は非常に深刻な問題なのです。金利が下がり投資が刺激されるという単純な問題ではなく、生命保険や年金など将来の国民の所得につながる分野にまでマイナス金利の影響が及んでしまうという自体は避けるべきではないかと思います。
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